運営元:旧車王
著者 :柴太郎
「そうだ、オープンカーに乗ろう」。魅力をオーナー目線で考えてみた
寿司の世界には、握り、巻物、押し、炙り…といった種類(カテゴリー)があり、「まずは中トロの握りで!」と食べる順番すら楽しみであったりする。
冒頭から日本の食文化を語るつもりはないが(汗)、クルマ購入の際、まずはカテゴリーを念頭に置いておくことが第一歩といえ、そのカテゴリーを築いていったパイオニア(開拓者)にスポットを当てるシリーズ企画。
最終回となる3回目は、「コンパクト」カテゴリーを世間へ広く認知させていった、立役者にして開拓者の、ホンダ初代フィットの真の魅力に迫ってみたい。
今振り返っても、まさに「小さなスーパースター」である!
■今や月販1万台を超える超人気車もある「コンパクト」カテゴリー。現行4代目フィットの先祖が広く認知させていくトヨタならヤリスやルーミー、日産はノート、スズキはスイフト。そしてホンダはフィット(上写真。左はフィットクロスター)……など。
2023年現在、手軽に使える&乗れるクルマとして日本のユーザーに浸透したカテゴリーが「コンパクト」。
月販台数が1万台を超える超人気車もあり、ヤリスクロスやヴェゼルなど、コンパクトモデルのプラットフォームをベースに人気のSUVに仕上げたクルマもある。
この「巨大マーケット・カテゴリー」を築いた先駆者が、2001年に登場したホンダ初代フィットと言っていいだろう。
しかし、それ以前、小さなクルマが国産車になかったかといえばそうではない。
トヨタ スターレットや日産 チェリー、日産 マーチ、ホンダ シビック、ホンダ シティ、三菱 ミラージュなど、軽自動車とは一線を画す、登録車としての小さなクルマは人気が高かった。
思えばシビックはホンダのコンパクトカーの代名詞だった。
世代を重ねるたびに少しずつ巨大化し、現行モデルは全長4595mmもあるセダンクーペというカテゴリーに属している。
……立派な姿になりましたね。
■「MM思想」を体感できる室内。キャパでやってきたことは間違いではなかった…という証だ
前項で述べたように、少しずつ変化し、巨大化していくシビックに成り代わる、魅力的なコンパクトカーの開発が、ホンダには求められていた。
それを受け、1996年にはロゴ(上の写真)が誕生し、そのプラットフォームを流用したキャパが1998年に誕生。
……が、いずれも人気を得ることはできず、残念ながら数年期間の販売という短命に終わった。
キャパは「キャパシティ」(許容範囲)という英語から取った名前のとおり、コンパクトサイズなのに室内が広いという部分が自慢だったが、コンパクトカーのわりには値付けがやや高めというマイナス面が行き渡り、販売面は厳しかった……。
が、それら2台の「イマイチな空気感」を断ち切ったのが、2001年登場の初代フィットだ。
ロゴ後継車とされるが、21世紀に入ったばかりのなか、ブランニューモデルの輝きが実に新鮮だった。
なんといっても最大の特色は「室内の広さ」。
ホンダの4輪モデルの根底に流れる「MM思想」(MMとはマンマキシマム・メカニズムミニマムを意味する)がここにあり!というパッケージング。
それは、スペース効率に優れたグローバル・スモールプラットフォームを採用した功績が大きく、コンパクトカーとは思えない広さに専門家も、ユーザーも驚いたものだ。
初代フィットを横から見ると、エンジンルームをできるだけ狭くした分、室内を広くとっていることがわかる。
MM思想の典型といえよう。
当時、筆者も乗り込み、「レジェンドより広いんじゃないの!?」と思ったほど(いや、マジです)。
世間に室内の広さでインパクトを与えたこの事実は、キャパでやってきたことは間違いではなかったということだろう。
■日本カー・オブ・ザ・イヤーを受賞し、2002年は年間販売台数で登録車1位という快挙!もちろん、見た目のインパクトも絶大で、それまでのハッチバック・コンパクトカーとはベクトルが違う丸みがあり、どこか親しみが湧くデザイン。
女性ウケもよかった。
燃焼効率を高めた新開発の1.3Lエンジンで燃費もよく、シートアレンジも多彩。
普段の買い物はもちろん遠乗りでもストレスはなし。
「このクルマ、いいね!」
そう感じさせる出来映え。
さらに、筆者的には3連メーターが気に入っている。
デジタルメーター旺盛な今、改めて見ると、どこかスポーティな雰囲気にワクワクしますね!
初代フィット登場前にもトヨタ ヴィッツやマツダ デミオなどのコンパクトカーは多数あったが、フィット人気は絶大。
その2001年、日本カー・オブ・ザ・イヤー受賞という快挙も成し遂げた。
2002年以降、トヨタ ist (イスト)や日産 マーチの新型が発売されるなど、各メーカーはコンパクトカー・カテゴリーにも重きを置く戦略を敷く。
それでもフィットは売れまくり、2002年の年間国内販売台数は、なんと25万790台。
33年間トップを維持していたトヨタ カローラを抜き、登録車1位になった。
「新しい時代の国民車」といっていい存在となった瞬間である。
■初代の魅力をしっかり受け継いだ2代目と3代目。「コンパクトカーの顔」となっていくフィット室内パッケージングに革命をもたらし、年間販売台数1位を記録。
さらに日本カー・オブ・ザ・イヤー受賞と、数多くの勲章を得た初代フィット。
コンパクトカー・カテゴリーのベンチマーク的存在となり、その後、誕生する日本のコンパクトカーたちに多大なる影響を与えたクルマであったことは間違いない。
まさに「コンパクトカー・カテゴリーの開拓者」である。
そして、ホンダ フィットの2代目(2007年誕生・上写真)は初代のDNAを受け継ぎ、2世代続けて日本カー・オブ・ザ・イヤーを受賞し、ハイブリッドモデルも追加される。
3代目(2013年誕生・下写真)はグローバル市場でも最量販車となることを目標にしたモデルで、顔つきがシャープに変わったことが話題を呼んだ。
現行4代目(2020年誕生)は、クロスターという時代のニーズに合わせたクロスオーバーモデルも設定するなど、バリエーションの妙が実にユニーク。
目(ヘッドライト)が初代のように丸っこいものに戻ったのもエクステリアの特徴だ。
正直、売れゆきはいまひとつの現行4代目モデルだが、筆者は好きである。
「この室内の広さにはやっぱり驚く!」
初代が生み出した「賜物」は、4代目でもしっかりと体感できる。
[ライター・柴太郎 / 画像・photoAC、Dreamstime、Honda]
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