毎年、さまざまな新車が華々しくデビューを飾るその影で、ひっそりと姿を消す車もある。
時代の先を行き過ぎた車、当初は好調だったものの、市場の変化でユーザーの支持を失った車など、消えゆく車の事情はさまざま。
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しかし、こうした生産終了車の果敢なチャレンジのうえに、現在の成功したモデルの数々があるといっても過言ではありません。
訳あって生産終了したモデルの数々を振り返る本企画、今回はホンダ インテグラ(1985-2007)をご紹介します。
文/伊達軍曹 写真/HONDA
[gallink]
■マイケル.J.フォックス 上皇陛下の愛車 エンジン 絶えず話題となったインテグラ
シビックとアコードの間を埋めるモデルとして、そしてスポーツカーではないが、スポーティで上質なクルマとして――つまり「スペシャルティカー」として、1985年に誕生。
以降、必要に応じたモデルチェンジを行いながら、スペシャルティカーとして一定の地位を確保し続けた。2代目は、当時の天皇陛下(現・上皇陛下)の愛車にもなった。
だがクーペあるいはスペシャルティカー人気の凋落とRVおよびミニバンブームの到来、さらには「5代目モデルの肥大化」という要因が重なったことで、生産終了を余儀なくされたモデル。
それが、ホンダ インテグラです。
1980年、当時のベルノ店系列で「ホンダ クイント」が発売されました。クイントはハッチバックとステーションワゴンの中間的な、今で言うクロスオーバー車で、シビックとアコードの間に位置する存在でした。
ホンダ クイント(1980年)
そのクイントのフルモデルチェンジ版として1985年に誕生したのが、初代インテグラです。当時の車名は「ホンダ クイント インテグラ」でした。
まずは3ドアハッチバックが登場し、のちに5ドアハッチバックと4ドアセダンがリリースされたクイント インテグラは、リトラクタブルヘッドライトを採用した低いボンネットと、ショートノーズ&ハイデッキのスタイリッシュなフォルムが魅力であると同時に、当時としては珍しい「全車に4バルブDOHCエンジンを搭載!」という点も大いに魅力的なシリーズでした。
言わばクイント インテグラは「第2期F1参戦で活躍したホンダの技術を、手頃な価格で手に入れられるコンパクトなスペシャルティカー」であり、そのことによって人気を博したのです。
3ドアハッチバック・5ドアハッチバック・4ドアセダンで展開されたホンダ クイント インテグラ(写真はハッチバック・1985年)
1989年のフルモデルチェンジで車名からクイントの冠が外れて「インテグラ」となり、ボディタイプは3ドアクーペと4ドアハードトップの2種類に。
また上級グレードが搭載するB16A型1.6L直4DOHCエンジンには、ホンダ独自の可変バルブタイミング・リフト機構「VTEC」が、世界で初めて採用されました。
ちなみに2代目インテグラは、冒頭で触れたとおり天皇陛下(現・上皇陛下)の皇居内での愛車であったことでも有名ですが、そのほか、俳優のマイケル・J・フォックスさんが日本語で「カッコインテグラ」「調子インテグラ」「気持ちインテグラ」と駄洒落を言っていたテレビCMをご記憶の方も多いでしょう。
1993年に登場した3代目は、独立した丸型4灯プロジェクターヘッドランプを採用する意欲的なデザインで登場。
北米ではこの顔つきがウケたようですが、日本では今ひとつ不評でした。そのため1995年のマイナーチェンジ時に、日本仕様は一般的な横長のヘッドランプに改められてしまいました。
ホンダ 3代目インテグラ
とはいえ3代目インテグラは、その歴史の中で唯一となるデュアルポンプ式の「リアルタイム4WD」が設定され、さらには「タイプR」がインテグラとしては初めて設定されるなど、何かとエポックメイキングなクルマではありました。
そして2001年には、結果として「最後のインテグラ」となった4代目が登場したわけですが、2001年をもって生産終了となったスペシャルティクーペ「プレリュード」と統合される形になった関係から、4代目はインテグラとしては初めて3ナンバーサイズの全幅(1725mm)を持つに至りました。
4ドアハードトップが廃止されて3ドアクーペのみとなった4代目インテグラが搭載したエンジンはK20A型2L直4DOHC VTECのみで、グレードも「iS」と、本稿では取り上げない「タイプR」のみでした。
しかし「シャープ&ソリッド・スタイリング」「エキサイティング・パフォーマンス」「セイフティ&エコロジー」を柱として開発された4代目インテグラは、タイプRではなくても、FFスポーティクーペの理想に近い作りではあったかもしれません。
しかしその販売は振るわず、結果として2006年9月に生産終了。翌2007年2月には、販売のほうも終了となりました。
■消滅の引き金?? 「4代目」のデザイン・ボディサイズについての是非
1985年から2007年までの22年間、4世代にわたって愛されたホンダ インテグラが――中国市場および北米市場で復活するとはいえ、生産終了の憂き目にあった理由。
それは、インテグラそのもののせいではなく、「スペシャルティカーという市場がなくなったから」というのが根本的なところでしょう。
1985年から1989年まで販売された初代クイント インテグラのモデルライフは、まさに「バブル前夜からバブル最盛期の日本」とリンクしていたため、「高性能なDOHCエンジンを搭載するスタイリッシュなスペシャルティカー」が売れるのは、ある意味必然でした。
そして1989年から1993年にかけて、2代目のインテグラが販売されました。
正確には1989年12月29日の日経平均株価大暴落と、翌1990年3月に大蔵省(当時)が行った「総量規制」により、いわゆるバブル景気は崩壊していたわけですが、実際の世の中はまだまだ――1992年頃までは――好景気の余韻が続いていました。それゆえ、スペース効率うんぬんに重きを置かない「スペシャルティカー」も、まだまだよく売れていたのです。
しかし3代目のインテグラが発売された1993年以降はいよいよ不景気風が吹き始め、人々は「気持ちよく走れるけど、あまり役には立たないスペシャルティカー」ではなく、「同じカネを出すなら、気持ち良くは走れないとしても、モノや人がたくさん載せられるクルマのほうがいい」というメンタリティになっていきます。
そのようにしてスペシャルティカーの市場は縮小し、ミニバンに代表される箱型の車が需要の中心となっていくわけですが、3代目インテグラは、そんなトレンドのなかでも「タイプRの存在による求心力」と「比較的小ぶりでスタイリッシュなクーペを求める人も、まだ絶滅はしていなかった」という理由により、その歴史を次につなげることができました。
しかし4代目インテグラが登場した2001年になると、さすがにクーペを求める層の数はきわめて少なくなっていました。
それに加えて、4代目は――ハードウェアとしての良し悪しは別として――スタイリッシュでも小ぶりでもなかったゆえに、ごく少数ながら残っていた「車を買うならクーペに限る」と考えていた人の心をつかむことができませんでした。
こうしてホンダ インテグラの命脈は一度途絶えたわけですが、だからといって「4代目」のデザインやボディサイズを責めるのは、やや筋違いであるような気がします。
なぜならば、仮に4代目、DC5型インテグラがきわめてスタイリッシュなデザインを持つ5ナンバーサイズのFFクーペだったとしても、「時代という大きな波」にあらがうことはできなかったはずだからです。
時代という巨大なサムシングに対して、たった1車種の車や1人の人間ができることことなど、たかが知れています。そういった意味では、インテグラの消滅は「必然だった」としか言いようがありません。
しかし同時に、時代というのは「巡るもの」でもあります。
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それゆえ今後の時代の流れ次第では、北米アキュラブランドの新型インテグラが日本市場にも導入され、それがまずまずの人気を博す――なんていう世界線が、絶対に存在しないわけではないのです。
……どうなるかはもちろんわかりません。しかし、期待はしたいと思います。
■ホンダ インテグラ(3代目) 主要諸元
・全長×全幅×全高:4380mm×1695mm×1335mm
・ホイールベース:2570mm
・車重:1100kg
・エンジン:直列4気筒DOHC、1797cc
・最高出力:180ps/7600rpm
・最大トルク:17.8kgm/6200rpm
・燃費:13.8km/L(10・15モード)
・価格:177万8000円(1995年式 SiR II)
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みんなのコメント
アタマ悪そうだなぁ
自動車専門雑誌記者と言われたいなら、良く内容を吟味した上で読者に伝わるように書くことを薦めるよ。