電子制御をメインに、全方位的にアップグレード
道を選ばず快適なロングライドを楽しめる、アドベンチャーツアラーというジャンルが世界的に躍進しています。特に国境を越えてバイクで長旅をするスタイルが定着している欧州での人気は高く、ブランドでも欧州勢を中心にバチバチに火花を散らしているのが現状です。
【画像】ドゥカティ新型「Multistrada V4 S」(2025年モデル)の画像を見る(23枚)
ツーリングでの快適性や卓越したオフロード性能など、アピールポイントは各車様々ですが、とりわけラグジュアリー感と万能性を誇示したモデルが、ドゥカティの「Multistrada V4 S(ムルティストラーダ・ブイフォー・エス)」と言えるでしょう。
イタリア語で「全ての道」を意味する「ムルティストラーダ」は、長距離ツアラーと街乗りバイク、スポーツバイクとオフロードバイクという4つのカテゴリーの長所を併せ持つ万能マシンです。
2021年には従来のV2エンジンからV4エンジンを搭載した完全新設計となり、今回の2025年モデルではさらなる進化を遂げました。
最高出力170psを発揮する、通称「V4グランツーリスモ」エンジンは、低回転時に前方バンク2気筒のみを稼働させるエンジン休止システムを新たに搭載し、低燃費走行や熱管理にも優れています。
ちなみに、同じV4でもスーパースポーツの「Panigale V4(パニガーレV4)」シリーズとは排気量もボア×ストロークも異なる別物で、ドゥカティ伝統のデスモドロミックではなく、耐久性に優れたスプリングによるバルブ駆動方式を採用するなど、アドベンチャー用に最適化されています。
車体も改良され、アルミ製モノコックフレームはスイングアームのピボット位置を1mm上げて加速時やタンデム走行時のトラクションを向上。また電子制御には新たに、車高を自動で下げる機能や「ウェット」モードが実装され、足つき性や雨天時の安心感も向上しています。
さらには前走車を自動で追尾する「ACC」や、バックミラーの死角にある車両を検知する「BSD」など従来からの機能に加え、新たに前方衝突警告機能も追加。安全性や快適性、扱いやすさが大幅に向上しています。
生粋のスポーツバイクに匹敵するパフォーマンス
第一印象として、外観はあまり変わらないように見えますが、実はヘッドライトが新設計となり、ホイールやサイレンサーも軽快感のあるデザインに洗練されてします。
さっそく跨ってみると、シート位置が低いことに気づきます。新型には自動車高低下機能(オートマチック・ロワリング・デバイス)が搭載されていて、速度が10km/h以下になるとリアサスペンションのプリロードが調整されて、シート高が約30mm下がる仕組みです。
自分の足がしっかり地面に届くという安心感が、新型の最大のトピックかもしれません。大きく、重く、背の高いアドベンチャーバイクと向き合うには、この機能が最も実用的と言えるでしょう。
ライディングモードを切り替えたときのキャラクターの激変ぶりも、新型の特徴です。市街地では「アーバン」モードで穏やかに流します。速度レンジ的にも前方バンク2気筒だけになり、排気音も静かに。「ゾーン30」が徹底されている欧州の生活道路では、その意義がよく分かります。
いざワインディングへ。モードを「スポーツ」に変更すると、アクセル反応が鋭くなりエンジンパワーが増大。電子制御サスペンションによってリア車高が上がり、減衰力も強化されてスポーツ走行に適した仕様へと自動的にセットアップされます。
クラス最強レベルのV4エンジンの加速は強烈そのものですが、鼓動もキメ細かく、パワーの出方もスムーズ。低回転からトルクが安定していて、タイトな上りコーナーでもギアを落とさず登っていけます。
ハンドリングも軽快かつフロント19インチホイール特有の安定感があり、狙ったラインを正確に描ける気持ち良さはドゥカティならではと言えます。
「ムルティストラーダ」はアドベンチャーと言うよりも、生粋のスポーツバイクに乗っている感覚に近く、同クラスのライバルの多くが2気筒や3気筒であるのに対し、V型4気筒を採用していることが大きいかもしれません。「パニガーレ」やMotoGPマシンにも繋がる血統を感じさせるところです。
オフロードも本気で走れる万能ツアラー
試乗日は生憎の雨……だったのですが、かえって新型の実力が際立ちました。新たに追加された「ウェット」モードに切り替えると出力特性が穏やかになり、コーナリングABSやトラクションコントロールも最適化されます。なんとサスペンションもウェット路面用に自動調整されます。
とりわけ印象的だったのが、前後連動ブレーキです。新型ではリアブレーキ操作だけでも十分な制動力を得られ、フロントをかけづらい下りのワインディングでも安定した走行が可能でした。もちろん、これらのサポート機能は任意でオフにもできるため、自分で積極的に操りたい人を退屈させることもありません。
ダートセクションでは、オプションのクロススポークホイールにデュアルパーパスタイヤを装備したオフロード仕様に乗り換えました。
「エンデューロ」モードに切り替えるとエンジン出力は115psに制限され、出力特性もマイルドに。電子制御サスペンションは悪路向けにプリロードを上げつつ、ストローク量を確保。リア側ABSは解除され、トラクションコントロールの介入も最小限に抑えられます。これによりオフロードバイクに早変わり。
車体左右にアルミ製ボックスを装着した状態でも、走行への影響はほとんど感じず、その気になれば後輪を軽く流しながらコーナーを立ち上がる、アドベンチャーらしい走りも楽しめてしまいます。
多少のガレ場でもどんどん行けてしまうので、逆に試乗する側としては冷や汗ものですが、この美しくラグジュアリーなマシンをオフロードで本格的に走らせようというドゥカティの強い意志が感じられました。
従来の優れたパフォーマンスに磨きをかけ、より扱いやすく、安全で快適な万能ツアラーへとまた一段ステージを高めた新型「ムルティストラーダV4S」は、このカテゴリーを支えるトップランナーの1台であることは確かでしょう。
※ ※ ※
新型となったドゥカティ「ムルティストラーダV4」シリーズの価格(消費税10%込み)は、ベースモデルの「V4」が279万8000円、セミアクティブサスペンションや自動車高低下機能を備える「V4 S」は337万7000円です。
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みんなのコメント
その時点でも、まぁ凄い!便利!最高唯一のツーリングバイク!
低速も高速も乗りやすく、コーナーは楽しく、サーキットではミドルのSSくらいはカモれる(笑)
アダプティブ・クルーズ・コントロールと、ブラインド・スポット・ディテクションは、前後の安全確保に超・有効。
Bluetoothでリンクしたら、ソロツーでも音楽や電話が繋がる。
メーターパネルにはナビが出る。
もはやクルマ。
B社の1250GSに乗り替えた事もあったが、ムルチV4の方が楽しかった。
今回のマイナーチェンジで、燃費が向上したとも言われてるので、ロングで試乗してみたい。