新卒者だけの営業所 乗務員全員が「運転地理検定」に挑戦
東京都内タクシー大手の日本交通には、新卒者だけで構成された営業所、葛西営業所が存在します。そこに所属する全28名の乗務員が2021年1月、「運転地理検定」を団体受験しました。同社は、この検定を通じて乗務員としてのモチベーションとスキルの向上を図り、より高いタクシーサービスの提供を目指すとしています。
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というのも、「地理に詳しくない」ことは、サービス品質に大きく影響するからだそうです。
同社が利用者へ実施したアンケートによると、タクシーサービスを「悪い」と感じる点について、多くの人が「乗務員の接客態度の悪さ」に次いで「地理に詳しくない」ことを理由として挙げているのだとか。地理知識の習熟は「安心・安全な個別輸送機関の実現という社会的要請に大きく貢献します」とのこと。
ドライバーの高齢化が課題となるなかで、若手も増えているタクシー業界ですが、地理の知識という点は、ベテランに分があるでしょう。そもそもタクシー乗務員はどうやって道や地理を覚えていくのか、日本交通に聞きました。
――新人は道や地理の知識をどう覚えていくのでしょうか?
まずは営業所配属前に、乗務員証取得のための、いわゆる「地理試験」に合格しなければ、営業をすることができません(試験は東京タクシーセンターで実施)。基本的な交差点名、道路名などは、このときに学びます。
営業所に配属されてからは、実際の乗務の中で学んでいくことが基本です。帰庫後に、その日の運行実績(日報)を見ながら、新人指導を行う世話役の先輩乗務員である班長が「流し方」を指導し、その上で本人も地図を見ながら復習して、知識と経験を積み重ねていきます。そのような繰り返しで、半年から1年ほどかけてほぼ一人前といわれるレベルになります。
「ナビ使っていいですか」じゃダメ? 地理の知識が必要な理由
今回、葛西営業所の乗務員が受検した「運転地理検定」は、乗務員証取得に必要な東京タクシーセンターでの地理試験とは別のもの。一般財団法人 運転地理検定協会がプロドライバー向けに実施するもので、東京をはじめとする首都圏エリアの交差点、道路、施設などについて記述を中心に答える、難易度の高い検定だといいます。
検定種目や科目も細かく、たとえば東京23区内に関する内容も「都心部3級/2級/1級」「副都心3級/2級/1級」などに分かれています。日本交通では、もともとハイヤー乗務員が受検していましたが、タクシー乗務員もこれらを順次取得し、同社は「タクシー乗務員の地理知識を見える化する」構えです。
しかしながら、いまやタクシー車内にナビなどが付いているのは当たり前で、乗務員から「このあたりは詳しくないので、ナビをセットしてもいいですか?」などと言われることもあります。また近年、アプリで運賃とルートを事前に提示して料金を予め確定させる「事前確定運賃」も始まりました。
そうしたなか、乗客に対して地理の知識は、どのような場面で必要になってくるのでしょうか。
「ナビで検索したコースは、必ずしも最短ルートとは限らず、またお客様が希望されるコースも必ずしも最短ルートやナビ通りのルートとは限りません。特定の場所を経由するルートを希望される場合もありますし、ナビには反映されない交通状況の変化に、都度対応していく必要も考えられます。お客様のご要望に柔軟に対応しつつ、適切なルート選択をするためには、ナビはあくまでも補助と位置付け、乗務員が適切に判断していくのが望ましいと考えます」(日本交通)
また、道を知っていることは、乗務員の焦りや不安、ナビの注視などを減らし、交通安全にもつながると考えているそうです。
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