R1300GSツーリングの便利装備、ACCは長旅の帰路に優しい機構
2023年11月23日から発売となったビッグアドベンチャーモデルの新型R1300GSは、ワインディングで意外な軽快さと楽しさを味わわせてくれた。だが、それだけではない。ひとしきり楽しんだ後、帰路の高速走行でも頼もしく巡航してくれ、ACC(アクティブ・クルーズ・コントロール)が長旅の疲労を和らげてくれるのだった。一般道からワインディング、さらにはシメの高速道路までをR1300GSで試してみて、「これは便利!」と感じたのはACC(アクティブ・クルーズ・コントロール)だ。日本版ではツーリング仕様に標準装備されるライダー支援機構で、スロットル操作なしで任意に設定した速度(30~160km/h)を維持して巡航できるものだ。また加えての特筆点は、前車との車間を保ちつつ減速したり、加速したりすること。
【画像22点】新型BMW・R1300GSの高速で便利なACC機構ほか、各部の特徴を写真で解説
郊外のワインディングを楽しみ、高速で都心へ戻るときなど、交通量が徐々に増えて速度が落ちたり渋滞したり、また流れ始めたりという状況はよくあることだが、そんなときACCは実に有効。例えば、任意に100km/hでクルーズコントロールを設定しても、前車が詰まれば車間の余裕を持って(車間は任意に設定可能)自然な感じで減速する。車間を標準設定で試したところ、100m弱前車との距離を置いたまま、30km/h程度まで速度が下がった場合でも車間を維持しつつ追従(乗り手側の適切なシフトチェンジ操作は必要)。そして交通の流れがよくなり、前方がクリアになれば、迷わず任意の速度まで加速する。また前車が詰まっていない車線に変更すれば、タイムラグも感じさせずに任意の速度まで加速する。
その減速、加速ぶりが乗り手にまったく違和感を覚えさせないのにも感心した。こうした自動制御は、時として急激だったりもたついたり、乗り手の意思と異なることは往々にしてあるが、R1300GSのACCにはそういう場面がない。渋滞が完全に停止する場合はもちろん乗り手が制動操作をするものの、長旅の最後の高速渋滞なんて場面では、有り難い機構と感じるだろう。
十二分な余裕を持つ、R1300GSの高速性能
そんな渋滞が始まる前、R1300GSで帰路を急ぐ高速走行も余裕しゃくしゃくだった。トップ6速のメーター読み80km/hでは約2500rpm、100km/hでは約3300rpm。回転には十二分な余裕があり、おそらく120km/h出すと4100rpm付近になるだろうが、このバイクの最大トルクの発生回転数は6500rpm、最高出力発生回転数は7750rpm(レッドゾーンは9000rpmから)。バイクの中では前面投影面積の大きなバイクゆえ風の抵抗は大きいが、それでもアウトバーンの速度無制限区間などなら、軽く200km/hの巡航も許容してくれるのだろう。もちろんのこと、そうした超高速巡航を許容する環境は日本にはないが……。
しかし、だからといって大排気量バイクの価値は薄れるものではなく、いざというときの余力が大きいほど頼もしいのは事実で、そうした使わない余力が大排気量モデルの魅力のひとつであることに共感する向きは多いだろう。
従来よりも軽さを研ぎ澄ました車体とフラットツイン過去最大のパワーでもって、ライダーを十分に支援する各種電子制御技術も盛りだくさん。これ以上何を望むことがあろうかというレベルまで高められた大排気量アドベンチャーの雄、R1300GSは今後も同カテゴリーのリーダーとして盤石な立ち位置に在り続けることだろう。
とは言うものの、一方で今後は電子制御の介入がバイクの素の走りの魅力を薄めてしまわないかも、課題じゃないかと個人的には思う。バイクとは自立できない2輪の乗り物であり、それを乗り手がどうバランスさせて操作するかが本来の楽しさだなどと、筆者が言うまでもないだろうが、軽く研ぎ澄ましたR1300GSであればこそ、装備を極力削ぎ落として価格も抑えたベーシック仕様があってもいいのではと思ってしまう。
時代の要請によりABSは必須だろうが、前述したように便利なACCや前車や周囲との安全を警告するFCWやSWW、足着きには有効なライドハイトコントロールなどなど、アルファベット三文字の電子制御機構のオンパレードを極力非装備とした場合、さて車重はどれくらい軽くなるか? 素の仕様はR1300GSの基本進化をどれほど感じさせてくれるのか? 日本のユーザーの多くのニーズには合致しないし実現可能性は多分ないだろうが、そんな仕様を試してみたいというひねくれ者は、筆者以外にも少しはいるかもしれない。
BMW R1300GSの装備と機能を解説
■電動スクリーンとフロントまわり
スタンダード仕様のブラックとツーリングに標準装備となる電動調整スクリーン(その他は手動式)の最高位置の状態。R1300GSでは大型スクリーンでもライダーの上体が風の巻き込みで前に押されないよう、風を整流する工夫も実施。なお、ヘッドライト上の黒いボックス部分にはACC&FCW用のレーダーセンサーを内蔵。
■機能満載のコックピット
オプション719専用パーツを追加装備したR1300GSツーリングのハンドルまわり。電動スクリーンのほか、多機能液晶ディスプレイのメーター上には、ナビホルダーが装備される。また燃料タンクキャップの前方には、前ヒンジで開閉する小物入れを設置。
■液晶メーターディスプレイ
通常表示の液晶メーター。外周に回転計、中央に数字表記の速度計、右にギヤ段数を表示。画面上部中央に切り替えで距離計など、その右にライディングモードを表示(写真はROADの状態)。また画面下右に時計、下左に外気温などを表示。
■液晶ディスプレイの機能設定画面
左グリップのマルチコントローラーで選択して現れる各種設定用メーター画面。ACC用車間距離制御ほか、ヒーター(グリップ&シート)、ウインドシールド、DTC(ダイナミック・トラクション・コントロール)、ダンピング設定などを表示し、その下にも各種設定が登場。
■左グリップに集中した操作スイッチ
操作系の集中した左グリップ。上からクルーズコントロール(その奥にハイビームとパッシングスイッチ)、ハザードと機能リストボタン、マルチロッカースイッチ、メニューロッカースイッチ、ウインカー、ホーン。写真手前のダイヤルがマルチコントローラーで、回転方向のほかダイヤルを左右に押して各種設定、切り替え操作が可能。
■右グリップにイグニッションボタンを配置
右グリップの操作系は、上からイグニッション(ステアリングロック&集中ロックシステム付き)、走行モード選択(事前設定で4種類まで呼び出し可能)、セル&キルボタンを配置。スマートキーシステムのため、始動時のキー差し込み口はない。
■シートヒーター付き前後セパレートシート
キーロック式の前後セパレートシート。前ライダーの体格に合わせてリヤシート部の段差(ストッパー)が二段階に前後する。リヤシート下にはETC機器などが収納可能で、リヤシート裏に簡易な工具がはめ込まれている。なお試乗車のツーリング仕様にはラゲッジラック(トップケース装着には別部品が必要)、パニアケースホルダー(電気接続機能&センターロック機能付き)が標準装備。
■タイヤほかフロントホイールまわり
日本仕様はクロススポークホイール(チューブレスタイヤ対応)が標準装備。GSスポーツ以外の仕様のタイヤは120/70R19サイズのメッツラーTouranceNext2(写真)ないしミシュランAnakeeAdventureを標準装着。ブレーキはラジアルマウントの4ポッドキャリパーに310mm径ダブルディスクの組み合わせ。またブレーキはフルインテグラルABS Pro採用で前後とも相互連動して、自然かつ最適な制動&車体制御を行ってくれる。
■タイヤほかリヤホイールまわり
リヤブレーキは2ピストンフローティングキャリパー+285mm径シングルディスクの組み合わせで、フロントと同じくチューブレスタイヤ対応のクロススポークホイールには170/60R17のメッツラーTouranceNext2を標準装着。
■ギヤシフトアシスト付きのシフトレバー&ステップ
オプション719専用のアルミ削り出しステップ&シフトレバーを装着の試乗車。日本仕様では全車に標準装備のギヤシフトアシスタントProにより、アップ&ダウンともクラッチレスでの変速操作はスムーズ。頻繁な変速や、長時間走行では有り難い機構。
■レーダーセンサー付きのテールまわりとウインカー
テール&ストップ兼用のウインカー。中央に配置の黒いボックスには、SWW(レーンチェンジウォーニング=車線変更警告)用レーダーセンサーを内蔵。後方の交通状況を監視し、車線変更時の危険をライダーに知らせる。またその警告はバックミラー内側の黄色の▲マークで表示される。
■足着き&ライディングポジション
身長173cm/体重76kgの体格での乗車姿勢。従来に比べてタンクを含む前回りが軽快な印象を受ける。アダプティブ車高制御により停止時は820mmになる(標準時850mm)シート高での両足接地では足裏が半分程度浮くが、踏ん張りの効く高さ。なお、走行時はアップライトな姿勢で操作しやすいものの、Uターン時は幅広なハンドルの外側グリップが遠くなる。その場合はシートの着座位置をずらすなど、操作に合わせたアクションが必要。
BMW R1300GS主要諸元
■エンジン 空水冷4サイクル水平対向2気筒DOHC4バルブ ボア・ストローク106.5×73mm 総排気量1300cc 圧縮比13.3 燃料供給装置:電子制御式インジェクション 点火方式トランジスタ 始動方式セル
■性能 最高出力107kW(145ps)/7750rpm 最大トルク149Nm(15.1kgm)/6500rpm
■変速機 6段リターン 変速比1速2.438 2速1.714 3速1.296 4速1.059 5速0.906 6速0.794 一次減速比1.479 二次減速比2.910
■寸法・重量 全長2210 全幅1000 全高1405(ウインドスクリーンロー状態) 軸距1520 シート高850(各mm) ステアリングヘッド角度63.8° キャスター112mm タイヤ(F)120/70R19 (R)170/60R17 車両重量250kg
■容量 燃料タンク19L(リザーブ約4L)
■車体色
<スタンダード>ブラック・ストーム・メタリック、レーシング・ブルー・メタリック
<ツーリング>レーシング・ブルー・メタリック、ブラック・ストーム・メタリック、アウレリウス・グリーン・メタリック
<GSスポーツ>レーシング・ブルー・メタリック
■価格 284万3000円~336万8000円
report●阪本一史 photo●岡 拓/モーサイ編集部
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