2021年7月、7年ぶりにフルモデルチェンジしたトヨタ新型アクア。登場以降、売れ行きは好調で、登録販売台数ランキングでトップ10までの順位をキープし続けている。
本稿では、新型アクアの販売好調の理由や、長所と短所とは一体どこなのか? さらにライバル車である同門ヤリスとの比較を解説していく。
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文/渡辺陽一郎、写真/TOYOTA、HONDA、NISSAN
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人気カテゴリーに登場した新型アクアの立ち位置
2011年デビューの先代型アクア。デビューすると同時に大ヒットし、2016年以降も毎年10万台以上の登録台数を記録したトヨタのメガヒットモデル
今はクルマの価格が全般的に高まった影響もあり、全長を4200mm以下に抑えたコンパクトカーの人気が高い。国内で新車として売られる小型/普通乗用車の約40%を占める。
2020年から2021年には、コンパクトカーの新型車が多く発売された。2020年2月にヤリスとフィット、年末にはノートとソリオ、2021年にはアクアとノートオーラという具合だ。
コンパクトカーは売れ筋カテゴリーだから、複数の新型車が一斉に発売されると、ライバル車同士の競争も激しくなる。あとから発売される車種は、先に登場したライバル車に比べると、価格を割安に抑えて買い得感をさらに強める。
この典型が2021年7月にフルモデルチェンジされたアクアだ。コンパクトなハイブリッド専用車で、先代(初代)モデルは2011年に発売され、好調に売られた実績がある。
先代モデルの2011年当時は、コンパクトなハイブリッドは車種が限られていたが、今は同じトヨタにもコンパクトなヤリスハイブリッドが用意される。ヤリスクロス、カローラセダン/ツーリング、カローラスポーツ、カローラクロス、カローラアクシオ/フィールダーにもハイブリッドがある。
そのために「もはやアクアの2代目は登場しないのではないか?」という見方もされたが、前述の通り2021年7月にフルモデルチェンジを行った。
アクア ハイブリッドだけで7251台売れた背景とは?
トヨタのハイブリッド専用コンパクトカーとして2021年7月に登場した新型アクア
新型アクアの売れ行きは好調だ。小型/普通車の登録台数ランキングでは、発売直後の8月は3位、9月と10月は2位、11月は少し下がったが5位にランクされた。
しかもアクアはグレードが少ない。直列3気筒1.5Lエンジンをベースにしたハイブリッドだけを搭載して、販売ランキングの上位に入った。
ちなみに小型/普通車登録台数が11月に1位になったカローラには、前述の通りセダン&ツーリング、スポーツ、継続生産型のアクシオ&フィールダーがあり、SUVの新型カローラクロスも追加された。そのためにカローラシリーズとして合計台数を増やしている。
2020年に登場した現行型ヤリス。ハイブリッドのほか、ノーマルエンジンも設定
2位のヤリスにも、SUVのヤリスクロスとスポーツモデルのGRヤリスが含まれる。コンパクトカーのヤリスだけを算出すると、2021年11月の登録台数は5100台だ。ヤリスのパワーユニットには、ハイブリッドのほかに1Lと1.5Lのノーマルエンジンもあるが、アクアはハイブリッドだけで11月に7251台を登録した。
アクアがハイブリッドだけで売れ行きを伸ばす背景には、先代型からの膨大な乗り替え需要もある。販売店では「アクアは保有台数が豊富で、個人のお客様に加えて法人も多い。そのために先代型からの乗り替えが順調に進んでいる」という。ヤリスやカローラにもハイブリッドを設定しながら、アクアを存続させた背景には、先代型からの乗り替え需要を継承する目的もあった。そのねらいが当たり好調な販売に結び付いている。
アクアは商品力も高い。開発者は「ノートやノートオーラなどのライバル車を意識して、商品開発や価格の設定を行った」という。最近の新型車では「特定のライバル車は想定していない」「独自の価値を追求した」とコメントされることが多いが、アクアは違う。この背景にもコンパクトカーの厳しい競争関係がある。
そしてアクアの競争相手には、ノートやノートオーラ、フィットハイブリッドなどが想定されるが、小型/普通車登録台数ランキングの上位をみると、前述のようにカローラ、ヤリス、ルーミー、ライズ、ヴォクシーなどのトヨタ車が並ぶ。
2021年1~11月に国内で販売された小型/普通車の内、トヨタ車が52%を占めた。今は軽自動車の国内販売比率が37%に達するから、総市場に占めるトヨタ比率は33%だが、小型/普通車に限れば過半数に達するのだ。
そうなると、アクアの開発者は「ノートやノートオーラなどのライバル車を意識した」と述べたが、実際の小型/普通車市場では「トヨタの敵はトヨタ」だ。アクアは好調に売られるヤリスハイブリッドを超えることで、コンパクトカー市場を制覇できる。アクアにとって最も身近なライバル車はヤリスハイブリッドなのだ。
アクアと同門ヤリスのどちらを買うべきか?
サイドウインドウの下端を後ろに向けて大きく持ち上げたアクアのデザイン
そこでこの2車種を比較する。まず視界と取りまわし性ではアクアが負ける。全幅は同じ数値だが、全長はアクアが110mm長い。最小回転半径も、ヤリスハイブリッドは5.1mに収まるが、アクアで売れ筋になるGとZは5.2mだ。
しかも、アクアはサイドウインドウの下端を後ろに向けて大きく持ち上げたので、斜め後方の視界が悪い。ヤリスも良好とはいえないが、アクアはさらに見にくい。後方視界の悪さはアクアの大きな欠点だから、購入時には縦列駐車などを行って、後方視界と取りまわし性を確認したい。
ヤリスに比べて上質になっているアクアの内装。ディスプレイも10.5インチと、ヤリス系の8インチよりひと回り大きくなっている
内装の質はアクアが上まわる。ヤリスハイブリッドにも不満はないが、アクアのGとZのインパネには、合成皮革巻きの処理も施され、最上級のZでは装飾類がさらに上質になる。
居住性では後席の広さが異なる。身長170cmの大人4名が乗車したとき、ヤリスハイブリッドの後席に座る乗員の膝先空間は握りコブシ1つ少々だが、アクアは2つ弱を確保した。ヤリスハイブリッドは、基本的に2名以内の乗車に適するが、アクアなら上質な内装と相まってファミリーカーとしても使いやすい。
動力性能は、各種の数値は共通だが、アクアの売れ筋グレードはバイポーラ型ニッケル水素電池を使う。そのため、運転感覚に違いがあり、巡航中にアクセルペダルを踏み増したときの駆動力は、アクアがヤリスハイブリッドよりも少し力強い。
そのかわり2WDのWLTCモード燃費は、アクアZは33.6km/Lで、ヤリスハイブリッドZは35.4km/Lだ。ヤリスハイブリッドはアクアよりも燃費性能が少し優れている。
走行安定性と乗り心地は、アクアが上まわる。ヤリスハイブリッドは、路上の細かなデコボコを伝えやすい。ノイズもアクアが小さく抑えた。そのかわり操舵に対する反応はヤリスが機敏で、峠道などを走るときにはアクアよりも車両の向きを変えやすい。
2WDの価格は、アクアZが240万円、ヤリスハイブリッドZは232万4000円だ。ヤリスハイブリッドZは7万6000円安いが、装備内容が異なる。
ヤリスハイブリッドZでは、100V・1500Wの電源コンセントを4万4000円、アルミホイールを8万2500円のオプション設定としたが(オプションの合計価格は12万6500円)、アクアZにはこれらの装備が標準装着される。したがってオプションを含めた合計額は、アクアZが約5万円安い。
以上のようにアクアは、ヤリスハイブリッドに比べて、居住性、内装の質、走行安定性、乗り心地、静粛性などが優れ、なおかつ価格は割安だ。アクアにも、斜め後方の視界が悪い、後席のサイドウインドーが狭いために後席乗員が側方を見にくいといった欠点があるが、総じて魅力的だ。
したがって、立体駐車場を利用可能なコンパクトカーをトヨタ車から選ぶ場合、ハイブリッドはアクア、ノーマルエンジンならヤリスという選択になる。ヤリスの2021年10月の登録台数は、前年の57%と低迷した。11月も前年の60%だ。新型アクアの登場で、ヤリスの売れ行きが下がるのは仕方ないだろう。「トヨタの敵はトヨタ」であるからだ。
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みんなのコメント
それ以前に文章が凄い読みづらい、思いついた事を入力して適当に改行して、~る。~だ。~い。付けて並べてるだけじゃないの。
良い意味で、買って間違いは無いと知らしめた車ですね。