スーパーバイク世界選手権(SBK)第2戦スペインラウンドが、ヘレス・サーキット‐アンヘル・ニエトで行われた。約5カ月ぶりの再開となったレースでは、スコット・レディング(Aruba.it レーシング-ドゥカティ)がレース1、レース2で優勝を飾っている。
SBKは3月上旬に開幕戦オーストラリアラウンドが行われたが、以降のラウンドは、新型コロナウイルス感染症の感染拡大とそれに伴う防止対策により、延期を余儀なくされていた。スペインラウンドは前週に行われたMotoGP同様、無観客で開催。カレンダーの変更はライダーラインアップにも影響を及ぼしており、高橋巧擁するMIEレーシング・アルティア・ホンダ・チームは、元々起用予定だったジョルディ・トーレスがMotoGP併催の電動バイクレース、FIM・エネル・MotoEワールドカップへの参戦によりSBKと重複する日程があることから、代わってロレンツォ・ガベリーニが起用された。
また、第2戦スペインラウンドでは、負傷のレオン・キャミア(バーニー・レーシング・チーム)に代わって、2019年シーズン限りで引退を発表したマルコ・メランドリが復帰、参戦している。
■レース1:レディングが初優勝を飾る
レース1は気温31度、路面温度59度のドライコンディションで行われた。ホールショットを奪ったのは2番グリッドスタートのレイ。トプラク・ラズガットリオグル(パタ・ヤマハ・ワールドSBKオフィシャルチーム)が2番手で1コーナーに飛び込む。3番手にはレディング、さらにトム・サイクス(BMWモトラッド・ワールドSBKチーム)、ロリス・バズ(テンケイト・レーシング・ヤマハ)が続く。
序盤はトップのレイをラズガットリオグル、レディング、バズが追従する展開。5周目、5番手を走っていたサイクスがスローダウンし、マシントラブルからコースアウト。サイクスは一度ピットに戻り、その後再びレースに復帰した。
9周目には8番手を走行していたマイケル・ファン・デル・マーク(パタ・ヤマハ・ワールドSBKオフィシャルチーム)のマシンから白煙が上がり、ファン・デル・マークはその後間もなく、コース脇にマシンを止めてリタイアとなった。
12周目、上位陣のポジションの変化が起きる。6コーナーのブレーキングで、レディングがラズガットリオグルをオーバーテイク。2番手に浮上した。ラズガットリオグルはここまでレイの約0.3秒後方につけていたが、3番手に後退することになった。
レディングは残り6周で、ついにトップのレイをとらえる。数周前にラズガットリオグルを交わした6コーナーで、ブレーキングでレイの前に出ると、レディングはややラインをワイドにしながらもトップをキープしてコーナーを立ち上がった。レイは立ち上がりでマシンの挙動を乱しつつ、2番手に後退する。さらに、そのすぐ後方にはラズガットリオグルが3番手にぴたりとつけている。
トップ3の後方、4番手はバズとチャズ・デイビス(Aruba.it レーシング-ドゥカティ)によって争われていた。残り4周の1コーナーでデイビスがバズのインをうかがうも、このときはバズがポジションを守る。しかしその翌周、デイビスが同じく1コーナーで再びバズに仕掛けた。ブレーキングで前に出たデイビスは、バズをオーバーテイクすることに成功し、4番手に浮上する。
最終ラップ、4番手のデイビスが1コーナーで3番手のラズガットリオグルに仕掛ける。しかしこのときはオーバーテイクに至らない。デイビスはその後もラズガットリオグルのすきをうかがう動きを見せ、表彰台の最後の一角をねらう。
一方、トップのレディングはレイを交わしたのち、じりじりとその差を広げていき、最後は2番手以下に1秒以上の差をつけて優勝を果たした。2020年シーズンからSBKに参戦するレディングにとって、初勝利だった。
2位でフィニッシュしたのはレイ。終盤にレディングに交わされたのち、そのポジションを奪い返すことはできなかったが、今季3度目の表彰台を獲得した。3位はラズガットリオグルで、最終ラップに展開されたデイビスとの表彰台争いを制した。
4位にはデイビズ、5位にはバズが入った。チームHRCのアルバロ・バウティスタは7位、レオン・ハスラムは10位フィニッシュ。高橋は18位でフィニッシュしている。
■レース2:レディング、デイビスによりドゥカティがワン・ツーフィニッシュ
10周で争われるスーパーポール・レースは気温28度、路面温度43度のドライコンディションで始まった。ホールショットを奪ったのはレイ。そこにレディングが続くが、序盤に早くもラズガットリオグルが2番手に浮上する。3番手にレディング、4番手にファン・デル・マーク、5番手にバズが続き、オープニングラップを終える。
レイは2周目には1分39秒186のファステストラップを記録。2番手のラズガットリオグルとの差は約0.5秒で、この差は次第に広がっていく。ラズガットリオグルには3番手のレディングが、さらにレディングの後方にはファン・デル・マークが続く。
7周目、ラズガットリオグルのマシンに異変が発生。ラズガットリオグルはストレートで左手を上げるとそのままコースアウト。自身でピットに戻ったが、リタイアとなった。パタ・ヤマハ・ワールドSBKオフィシャルチームとしては、前日のファン・デル・マークに続くマシントラブルによるリタイアである。
ラズガットリオグルがリタイアしたことにより、レディングが2番手に浮上。その約1秒後方に、ファン・デル・マークが3番手で続く。レイはその後も独走を守り、2020年シーズン2勝目を挙げた。2位はレディング、3位はファン・デル・マークが入り、ファン・デル・マークは今季初表彰台を獲得している。
4位はバズ、5位はデイビスが続いた。チームHRCのハスラムは9位、バウティスタは10位で、MIEレーシング・アルティア・ホンダ・チームの高橋は22位フィニッシュだった。
スーパースポーツ世界選手権(WSS)のレース2後に行われたSBKのレース2は気温37度、路面温度60度のドライコンディションで行われた。スーパーポール・レースの結果により、レイがポールポジション、2番グリッドがレディング、3番グリッドがファン・デル・マークというフロントロウ。
好スタートを切ったのはポールポジションからスタートしたレイ。2番手にレディング、3番手に4番グリッドスタートだったバズが続く状況。スーパーポール・レースでリタイアとなったラズガットリオグルは10番グリッドスタートながら、オープニングラップでポジションを上げ、3番手のバズを交わす。
さらにトップのレイもレディングにオーバーテイクされ、2周目にはトップがレディング、2番手レイ、3番手ラズガットリオグル、そこにデイビス、ロウズ、バズ、ファン・デル・マーク、ギャレット・ガーロフ(GRTヤマハ・ワールドSBKジュニアチーム)が続く状況だ。
レディングは2周目に1分40秒545のファステストラップをマーク。少しずつ2番手の例を引き離していく。3周目を終えるころには、レディングとレイとの差は約1秒に広がった。4周目、デイビズがラズガットリオグルをとらえて3番手に浮上。レイの背中を追う。ラップタイムはレイが1分41秒前半、対するデイビスは1分40秒後半。デイビスは5周目の9コーナーでレイのインを突き、オーバーテイク。2番手にポジションを上げ、トップを走るチームメイトのレディングを追う。
一方、レイはラズガットリオグル、そしてチームメイトであるロウズとともに、激しい3番手争いを展開。少し離れてバズ、ファン・デル・マークが追っていたが、バズは7周目、13コーナーで転倒を喫した。
3番手はレイ、ラズガットリオグル、ロウズの三つどもえの争いとなった。8周目、ラズガットリオグルがレイのインにマシンをねじ込み、オーバーテイク。ラズガットリオグルが先行する形で周回を重ねていく。
10周目を終えるころには、トップのレディングは2番手のデイビスに対し約2秒のアドバンテージを築いていた。デイビスは3番手のラズガットリオグルに対し、約3秒の差を広げている。3番手争いはラズガットリオグルが次第に抜け出し、レイ、ロウズの4番手争いに、マイケル・ルーベン・リナルディ(チーム・ゴーイレブン)が加わろうとしていた。
13周目、リナルディがロウズを交わして5番手に、14周目の最終コーナーではレイを交わすと、4番手に浮上した。レイは、さらに残り4周でロウズに交わされ、6番手に後退してしまう。
レディングは独走を守り、そのままトップでチェッカーを受けた。レース1に続く2勝目を挙げている。2位はデイビスで、Aruba.it レーシング-ドゥカティのふたりがワン・ツーを達成した。3位にはラズガットリオグルが入っている。
4位はドゥカティのリナルディ。トップ5までに3人のドゥカティライダーが入った。一方、カワサキ・レーシングチーム・ワールドSBKは5位はロウズ、6位はレイと、表彰台を逃す結果となった。チームHRCのバウティスタは8位、ハスラムは12位。高橋は7周目に5コーナーで転倒を喫し、リタイアだった。
また、WSSに参戦する大久保光(Dynavolt Honda)は、レース1、レース2ともにリタイア。レース2では転倒を喫し、メディカルセンターに運ばれたのち、検査のために病院に搬送された。本人のSNSによれば、大きな怪我はなかったということだ。
スーパースポーツ世界選手権300(WSS300)では、岡谷雄太(MTM Kawasaki MOTOPORT)がレース1で4位フィニッシュ。3位とは0.055秒の僅差だった。レース2では何度もトップを走り、表彰台争いを展開していたが、9周目に転倒。惜しくもリタイアという結果となった。
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