伝説のクルママンガ『頭文字D』の意思を現代に受け継ぐ次世代のクルママンガ、『MFゴースト』。2017年の連載開始時から圧倒的な読者人気を獲得しており、13巻発売時点の現在で、ついに単行本累計発行部数320万部を突破した。
同作品に登場したクルマたちの世界観と魅力を読み解いていく本連載。記念すべき第10回目となった今回は、世界のスーパーカーたちと鎬を削るラストサムライ、日産 GT-Rを紹介する。
前代未聞のワゴンタイプ交通覆面。大阪府警のステージア登場の衝撃を覚えているか?
文/安藤修也
マンガ/しげの秀一
■特別な構造と生産工程を持つ伝統モデル
現在の日本において、日本が世界に誇るスーパースポーツ、名実ともにワールドワイドに通用するモデルといわれれば、この日産 GT-Rを挙げる声が多いに違いない。ご存じのとおりスカイラインGT-Rの系譜にあって、長い歴史を受け継いでいるし、走行性能は海外のスーパーカーに勝るとも劣らないものを備えている。
ボンネットの下に搭載されるエンジンは、赤いヘッドカバーが眩しい3.8LのV6ツインターボで、日産社内で「匠」と称される特別な工員によって手組みされ、最高出力はデビュー当時480馬力であったが最新モデルでは600馬力にまで進化している。
日産 GT-R NISMO Special edition(2022年モデル)/全長4690×全幅1895×全高1370mm、パワーユニット:3.8L V型6気筒ツインターボエンジン、最高出力:600ps/6800rpm、最大トルク:652Nm/3600-5600rpm
また、素早い変速を可能としたデュアルクラッチトランスミッションや、最適な重量バランスを実現する独立型トランスアクスル4WDなど、“最速”のためのさまざまな装備や機能が採用されている。
大口径グリルや縦型ヘッドライトを備えたフロントデザインは、従来のスカイラインシリーズとの決別をあらわしているようだが、大きくはみ出たフロント&リアフェンダー、スポーツモデルにしては居住性の高そうなキャビンスペース、大型リアウイング、そして何よりリアの4つのテールランプは、日産 スカイラインの伝統を紛れもなく継承していると言えよう。
従来の国産スーパーカーでは到達しえなかったレベルにまで引き上げられた戦闘力を持ちながら、乗りやすく、扱いやすい。そしてまた、世界のスーパーカーと比べると低価格なところも特徴的だ(2007年の初期モデルは777万円であった)。まさに日本自動車史に残るモデルであり、金字塔的存在である。
■特性を活かした走りで好順位を獲得!
そんなGT-Rが『MFゴースト』の作中に初登場したのは、第一話の1ページ目。つまり、作中で一番最初に登場するマシンという名誉を獲得している。ここで登場したことで、国内でもトップレベルの高い人気を誇りながら『頭文字D』では主役になり得なかった歴代スカイラインGT-Rの名誉を挽回し、GT-Rファンの気持ちを高めてくれている。
GT-Rに搭乗するのは相葉瞬という24歳の青年。主人公である片桐夏向(と読者)へMFGに関する知識を解説する、兄貴分的存在で、熱血漢である。カーナンバーは9、つまり前年度ランキングは9位であり、国産車では唯一のトップ10入りだという。新シーズンの目標はトップ5以内であり、走行中にも「大和魂見せたろーぜGT-R!!」と発言しているように、国産車への強い思い入れが感じられる。
物語冒頭の走行シーンはラウンド1の「小田原パイクスピーク」の予選で、スタートグリッドは5位を獲得。決勝レースでは、アウディ R8とドラッグレースのような激しいバトルでタイヤを消耗してしまい、その後、R8にフェラーリ 488を加えて三つ巴の3位争いを展開したが、ブレーキングのミスで痛恨のオーバーラン。最終的には6位でフィニッシュした。
ラウンド2「芦ノ湖GT」の予選ではミスが響きいて13位に沈む。しかし、雨中の決勝レースでは、4WDならではのトラクション性能を活かし、さらに相葉が地元の小田原出身ということもあって気合の走りを見せる。
ここでもR8と熾烈なバトルを繰り広げ(なお「この2人には因縁がある」旨が記載されているが、現時点で詳細は明かされていない)、車体をぶつけながら4つのコーナーでサイドバイサイドの末、見事に打ち負かした(GT-Rの見せ場だがその様子が描かられていないのが残念!)。最終的には6位を獲得している。
■GT-Rは「ラストモデル」となってしまうのか?
そして、ラウンド3は「ザ・ペニンシェラ真鶴」。予選走行時より相葉が「真鶴と熱海が苦手」と発言、特にコーナーが不規則に連続する住宅街エリアを苦手としているようだ。予選結果は12位。決勝スタート後は、ロータス エリーゼとアルファロメオ 4Cとの連携に苦しめられたものの、トンネルエリアのロングストレートで2台を一気にパスした。GT-Rの特徴でもある、超高速域でのスタビリティ性能を見せつけた形だ。
いよいよ、ファイナルラップ。前方の10位を疾走するのは、またしてもアウディ R8。両者ともヘビー級のボディに同レベルの最高出力、そして4WDという点が共通している真っ向ライバルで、宿命の対決としてバトルが描かれる。
GT-Rは、苦手な住宅街エリアを我慢してタイヤを温存し、バックストレートで最高のパフォーマンスを発揮、横に並びかけると、ボディをぶつけながら半車体ほどの差で前へ出て見事に10位フィニッシュした! 第三戦までのポイントランキングで、GT-Rは5位につけている。
この現行型GT-Rがデビューしたのは2007年で、2022年現在ですでに登場から15年が経過している。近年、フェラーリやポルシェが5、6年おきにモデルチェンジしているのに対して、GT-Rはモデルチェンジするどころか、まもなく販売終了するとさえ言われている。
もし、このまま実車がモデルライフに終止符を打ってしまうとしても、最強の国産スポーツモデルであったことの名誉は永遠に残る。そしてその栄誉に、MFGでの年間ランキングの結果が追加されるか否か、日本人としては期待したいところである。
■掲載巻と最新刊情報
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あるとすれば首都高、湾岸
金に余裕がないと乗れないからあとはサーキット