この記事をまとめると
■フォルクスワーゲンが日本に上陸して70年になる
A・B・Cと続くが「Dがなく」てE? メルセデス・ベンツの車名に「抜け」がある謎
■今回はフォルクスワーゲンの車名について解説
■風の名前を頻繁に用いているのが特徴だ
風の名前を用いているのが特徴
いまやもっともポピュラーな輸入車ブランドとして、誰もが知る存在となったフォルクスワーゲン。今年2023年は、このフォルクスワーゲンが日本上陸を果たしてちょうど70年目にあたる年。最初に日本の地を踏んだフォルクスワーゲン車は、108台のタイプ1(ビートル)と、3台のタイプ2(トランスポーター)だったと記録されている。
そのフォルクスワーゲン車もこれまでの累計販売台数で180万台を突破。そのエンブレムは日本においても十分にポピュラーな存在になったと評価しても異論はないだろう。
この70年間に日本に上陸したフォルクスワーゲン車を振り返ってみると、それぞれが個性的でかつ機能的に作られていると同時に、面白さを感じるのはそのネーミングだ。「ビートル」や「ポロ」、「ルポ」、「UP !」などといった例外はあるものの、フォルクスワーゲンは伝統的に風の名前を頻繁に用いている。
最初に風の名前が車名として掲げられたのは、1973年に当時のアウディ80をベースに誕生した「パサート」で、このパサートとは貿易風(偏西風)を意味するもの。
ノッチバック・スタイルのアウディ80に対して、パサートはファストバック・スタイルを採用し、その実用性の高さをアピールするが販売は思わしくなく、1981年には同じくアウディ80を基本としたセカンド・ジェネレーションへと進化を遂げる。
この世代ではノッチバック・スタイルのモデルが「サンタナ」として日産自動車によってノックダウン生産されるが、このサンタナもまたアメリカのカリフォルニア州やメキシコで秋に吹く季節風の名前である。
ゴルフの由来もメキシコ湾流から発生する風
1974年に発表された「ゴルフ」は、フォルクスワーゲンにとってはまさに待望の一台ともいえるモデルだった。そのデザインは、ジョルジョト・ジウジアーロによるもので、デビューから続々と魅力的な追加車種を設定。その歴史はもちろん現在にまで続き、現行型はじつに8世代目に相当する。
ちなみにゴルフとはやはり強風のメキシコ湾流を意味していると考えるのが一般的だが、フォルクスワーゲンはかつてスポーツモデルにゴルフボール型のシフトノブを与えたこともある。
このゴルフから派生したモデルにも、風の名が与えられた例は多い。初代ゴルフをベースに誕生した4ドアサルーンの「ジェッタ」は、ジェット気流にその名を得たものであるし、1993年にゴルフIIIから派生した「ヴェント」はポルトガルからイタリアに向けて吹く風を。また、その後継車となった「ボーラ」は、そもそもイタリアのマセラティが所有する登録商標だったが、フォルクスワーゲンとの話し合いにより新たにそれを使用することができるようになった。ちなみにそれはアドリア海沿岸などで冬季に吹く北風のことだ。
フォルクスワーゲンが1974年に発売し、一時その生産を休止したものの、2008年にはさらに美しいボディを得て復活を遂げた「シロッコ」も、風に由来する名を得た一台だ。
このシロッコとは北アフリカから地中海へと吹き込む、砂塵を含んだ熱風のこと。ちなみにマセラティが生産していたギブリは、このシロッコがリビアへと至ったあとの名前。
なぜ自動車メーカーは風の名を好んで自社のプロダクトに掲げるのか。それはやはり「風=空気」という避けられない存在に対しての率直な主張、そして速さへのイメージを物語るには最適な自然現象といえるからなのだろうか。
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