安全装備の充実などライバルを圧倒!
スーパーハイト系軽自動車は、今や日本を代表するファミリーカーとなっている。プチバンとも言えるキャラクター、室内の圧巻の広さ、両側スライドドアを備えた使い勝手の良さによって、ダウンサイザー、コンパクトカーやミニバンからのダウンサイズにもぴったりというわけだ。
ダイハツの新世代クルマづくり「DNGA」の新技術を公開! まずは7月発売の新型タントから
そんなスーパーハイト系軽自動車のパイオニアが、2003年に登場したダイハツ・タント。2代目からは子育て世代にアピールする助手席側Bピラーレスのミラクルオープンドアを採用し、その存在感を確固たるものにしている。
この4代目となる新型タントは、ダイハツの次世代プラットフォーム、今後、Bセグメントにまで採用されるDNGA(ダイハツ・ニュー・グローバル・アーキテクチャー)を初採用。改良型エンジンは加速度15%増しのNA、トルクアップしたターボを揃え、組み合わされるCVTは世界初のパワースプリット技術によるデュアルモードCVTとなっている。
そのほかにも、軽量高剛性ボディによる最大80kgの軽量化、サスペンション、アンダーボディ、シートの刷新、16mmの低床化、さらにはスマートアシストの進化として全車速追従機能付きACC(ターボモデルのみ)、レーンキープ機能、ブレーキ制御付き誤発進抑制装置といった先進安全支援の装備など、一気に軽自動車最新、トップレベルの全方位に渡る商品性を手に入れたと言っていい。
そして子育て世代に大人気のタントだけに、母親目線の新機能も忘れてはいない。そう、ミラクルオープンドアの使い勝手を最大限に生かす、世界初の運転席540mmロングスライドシートを新採用(安全のため解除スイッチ付き)。運転席から後席への移動のしやすさはもちろん、子どもを後席に乗せたあと、車外に出ることなく(車道側に出ることなく)、運転席に移動できるメリット、安全性、快適性は極めて大きい(運転席ロングスライド時の助手席とのすき間は最大約190mm~)。
そのほかにも、軽自動車初のドアロックの事前予約機能やクルマに近づくだけでパワースライドドアを自動で開けられるウエルカムオープン機能など、便利さを追求した装備が満載である。
NAのモデルでも上質な走りを披露する
さて、まず試乗したのは14インチタイヤを履く標準車のNAモデル。ダイハツのNAエンジンは以前からトルキーで、街乗りでは十二分なトルク、加速力を発揮してくれたが、加速度15%UPというより、スムースさがレベルアップした印象だ。登坂路ではさすがにターボのようにスイスイとは登らず、エンジン回転を高める必要に迫られるものの、平たんな道なら「これで十分」と思える、軽自動車のNAエンジンモデルとして、上質かつ最上レベルの動力性能、走りやすさを体感させてくれたのだ。
しかし、もっとも感動したのは乗り心地。スーパーハイト系軽自動車は全高・重心が高く、転倒防止のために足まわりを硬めに設定しがちだが、新型タントはしなやかで“しっとり”としたフラットな乗り心地を、カーブやレーンチェンジ時の前後左右の姿勢変化最小限で実現しているのだから、もう、びっくり。これほど乗り心地に上質なしっとり感がある軽自動車はほかにないと思えたりするほどだ。下手なコンパクトカー真っ青である。
セミベンチタイプにこだわった前席の掛け心地は素晴らしい! のひと言だ。お尻がふんわり沈み込む座面後端の分厚いクッション感はもう絶妙(カスタムのシートのほうがより明確)で、カーブなどで頭と上半身が揺すられにくく、結果として長時間運転の疲れにくさに直結。それはDNGAの威力もあるのだが、シートの体重で心地良くサポートしてくれるシートのできの良さも寄与しているはずである。
ただし、ちょっと残念なこともある。それはアウトホイールタイプの液晶メーター。標準車、カスタムともにNAモデルはドライバーの正面となる部分が真っ黒。なんの表示もされない。じつはそこ、標準車/カスタムのターボモデル限定で装備されるACC(アダプティブクルーズコントロール)の表示部分になっていて、ACCが未装備だと不自然な(寂しい)見栄えになってしまう。左側にオフセットされている速度表示を右側に移動させるなどの配慮がほしいと思える。
ちなみに、液晶メーター左端の主に回転計を表示する部分は、エアコンのダイヤル操作、温度設定を行うと、設定温度を表示。視線をエアコン操作パネルに落とすことなく確認できるので、安全かつ便利だ。
一方、ターボエンジンを搭載し15インチタイヤを履くカスタムRSグレードは、完璧なスーパーハイト系軽自動車と言えそうだ。つまり、標準車と同じ超実用性に加え、高速走行も坂道の登坂も余裕でこなす動力性能、エンジン回転をより低くキープすることで得られる車内の静かさ、ステアリングのフリクションほぼ皆無のスムースさを備え、高速道路での渋滞も怖くない、渋滞追従型ACCを完備しているからだ。
これで車速コントロールがしやすくなり、下手にブレーキを踏まれるよりスムースな減速が可能になる(乗員がゆすられにくくなる)とともに、ブレーキの負担も軽減できるパドルシフトがあれば、個人的にはさらにうれしいのだが、タントは伝統的にパドルシフトを採用しないことになっているという(泣)。ライバル車のカスタムグレードにはあったりするんですけどね。
N-BOXよりもエンジンのフィーリングは良好
ところで、新型タントはここ8年に渡り、スーパーハイト系軽自動車のベストセラー、国産乗用車販売台数No.1のホンダN-BOXと熾烈な争いを繰り広げているが、とくにターボモデル同士で比較すると、新型タントが優位。その理由は、N-BOXのターボエンジンは、アクセルの踏み始めにゴロゴロする振動が発生。それがペダルなどに伝わり、ボクのように不快に感じる人もいるはずだからである。
しかし、新型タントのトルクアップしたターボエンジンは極めてスムースで振動がほとんどなく、高回転まで回しても不快な振動、ノイズと無縁。1L以上のNAエンジンを思わせる、じつに洗練されてドライバビリティにも優れた軽自動車用ターボエンジンなのだ。新型タント同士では、14インチタイヤより、カスタムRSの15インチタイヤのほうが、ロードノイズが小さい点も褒められる。
また、N-BOXは乗り心地が“意外なほど”硬めで、しかしゆったりとしたストローク感あるタッチと、比較的深いロール量を示す。その点、前後ダンパーに低フリクションタイプをおごる新型タントRSは、より上質なしっとり感さえあるフラットライドに徹し、カーブなどでの乗員の頭部(視線)の揺すられ感は最小限。つまり、長時間、長距離の移動で疲れにくいのは、間違いなく新型タントのほうと思える。
直接的ライバルのN-BOXが今でも新型タントをリードしている部分を探せば、まずはイメージ。タントにある子育てカー的なイメージとは違い、より万人向けのキャラクターだ。そして依然、圧倒的な後席ニースペースの余裕と、センタータンクレイアウトを生かした後席後端位置での足引き性(シート下は空洞)、それがもたらす立ち上がり性の良さ、約35~115km/hの作動とはいえ、全グレードにホンダセンシングに含まれるACCを装備しているところなどだろう(新型N-WGNは渋滞追従型のACCを装備しているので、今後、N-BOXも渋滞追従型ACCになる可能性あり)。
そんな新型タントは、価格アップを最上限に抑えつつも、全車に世界最小のステレオカメラによる15種類もの進化した先進安全支援装備=スマートアシスト、サイド&カーテンエアバッグ、LEDヘッドライトなどを標準装備。基本性能、走行性能を含め、日本を代表する軽自動車メーカー、軽自動車にいち早く先進安全支援装備を搭載したダイハツらしい、ユーザーに寄り添う見識と“打倒N-BOX!”の意気込みを強く感じさせてくれる、快作の新型である。
お薦めは、一家に一台のファーストカー、ロングドライブの機会も多いというなら、迷うことなくXターボ、またはカスタムRSのターボモデルである。理由は渋滞追従型のACCが装備され、高速走行の実燃費はエンジンを低回転でまかなえるターボのほうが伸びる傾向にあるのと、じつはターボとNAモデルとの価格差がそう大きくないからだ。
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