実際に試乗してわかった「オールラウンダー」
「高性能SUV」を矛盾した存在と考えるか、異端とするか、あるいは究極のオールラウンダーと捉えるか。もはや、このような議論も目立たなくなってきた。それだけ現世に馴染んできたということだろう。
【画像】物理法則を破る万能タイプのSUV【ポルシェ・マカンGTSを写真でじっくり見る】 全24枚
背が高く重たいSUVは本来、スポーティな走りには向かないはずなのに、多くの人がショールームに駆け込み、0-100km/h加速タイムよりも速く飛び出してくるのである。力強さと実用性の融合により、さまざまな生活スタイルにすんなりと溶け込むことができるのだ。
重心の高さなど関係ないかのように、多くのモデルは安定して、正確に、そして堂々と走る。さらに、ラグジュアリーなキャビン、遠くまで見渡せる運転視界、四輪駆動による安心感など、さまざまな特典もある。ある程度のオフロード走行も可能で、欠点を探す方が難しいかもしれない。
そこで今回は、欧州で販売されている高性能SUVからトップ10を厳選して紹介したい。時期や装備によって多少変動するが、価格の上限は10万ポンド(約1800万円)程度とした。ランボルギーニ・ウルスのような「スーパーSUV」については、また別の機会に取り上げる。
1. ポルシェ・マカンGTS
長所:速さ、室内の広さ、ダイナミクスと優雅さの理想的なブレンド、クラス最高峰のハンドリング
短所:重さを感じる。発売からもう10年近く経つ。
スポーツカーをこよなく愛する人たちから尊敬を集めるSUVがあるとすれば、それはマカンGTSだろう。ポルシェのエントリーモデルとして、誕生から10年近く経過しているにもかかわらず(ベースは2008年登場のアウディQ5と共通)、加速性能、室内の広さ、優雅なダイナミクスを融合させ、SUV市場における1つの基準となっている。トレンドに後ろ向きな人でさえも、乗れば納得してしまうほどだ。
新しいEV仕様の導入を目前に控える中、現時点でのトップグレードであるGTSは、最高出力445psの2.9L V6ターボを搭載している。0-100km/h加速はわずか4.5秒、最高速度は275km/hに達する。
サスペンションは標準車よりローダウンされ、改良が施された結果、まるで小さなホットハッチに乗っていると錯覚させるような、軽快なドライビング・エクスペリエンスを生み出している。物理学の常識を覆すような奇想天外な走りぶりだ。ステアリングもまた、ポルシェのスポーツカーらしい重みとレスポンスがあり、一方で乗り心地はクッション性に富んでいる。
エアサスペンションと豪華なインテリアを備えたマカンGTSは、高級セダンのようにリラックスして長旅を楽しむことができる。今回取り上げた他車ほど広くはないが、それでも十分なスペースが確保されているので、不満はほとんどないだろう。もし、SUVを1台だけ所有するとしたら、このクルマを選びたい。
2. ジャガーFペイスSVR
長所:さまざまな用途に適している。バランスが良く汎用性も高い。
短所:インフォテインメント・システムにやや難あり。ライバルに比べ走りの鋭さに欠ける。
ジャガーが初めてSUVを発表したとき、やがて高性能モデルも出るだろうと期待された。そして、その通り登場したFペイスSVRは、スポーティな感覚に溢れていながら、ゆったりとした大人しい性格も持ち合わせており、レスポンスを追求するドイツ車とは異なる路線を示した。
FペイスSVRは、通勤や通学、週末のドライブでクルマを使う人のためのスポーツカーであり、疑問を感じるほどの硬いサスペンションは持たない。咆哮する5.0L V8スーパーチャージャーは、必要とされるスピードとドラマをすべて叶えてくれる。ハンドリングは刺激的だが、実用的なキャビンとトランク、絶妙なシャシーチューニングによって日常生活にも十分対応できるものとなっている。
フェイスリフトを受けた2021年以降は、さらに輝きを増した。ボディの空力性能がわずかに改善され、新しいトルクコンバーター式ATはすべてのギアでV8のフルトルク(71.3kg-m)を上手に扱えるようになった。
サスペンションの調整により、ダイナミックさを損なうことなく、丸みを帯びた使い勝手の良いモデルに仕上がった。完璧ではないが、インテリアやインフォテインメント・システムも一新されている。非常に好印象なSUVだ。
3. アルファ・ロメオ・ステルヴィオ・クアドリフォリオ
長所:夢のようなエンジン。SUVとしては最も魅力的な走り。
短所:ライバルと比較すると残念なインテリア。後席レッグルーム不足。
アルファ・ロメオ初の高性能SUVについては、説明に多くの言葉を必要としない。フェラーリ458スペチアーレのハンドリングを作り出した人物がシャシーにサインしたクルマである。
マラネロのV8から派生したV6ターボを搭載しており、アルファ・ロメオ自身もまた、世界の尊敬を集めるスポーツセダンやクーペを数多く輩出してきたブランドである。
ステルヴィオ・クアドリフォリオは、現在販売されているSUVの中で最もシャープで魅力的なパフォーマンスを秘めており、車両重量やボディ形状とは裏腹に、上質な乗り心地と機敏なステアリング・レスポンスでドライバーを虜にする。
キャビンの質感に関してはいくつか問題があり、2020年のフェイスリフトではその一部が解消されたものの、この価格帯では素晴らしいとは言い難い。
乗り心地の洗練度や日常の使い勝手に関しては、このクラスでは妥協のない部類に入る。何はともあれ、ドライビングのスリルを何よりも重視する人には、ステルヴィオ・クアドリフォリオがぴったりだろう。
4. レンジローバー・スポーツP530
長所: 高級感、快適性、洗練性はよし。オフロード性能も優秀。
短所:非常に重い。高価。
新型レンジローバー・スポーツは、走りにおいては最高峰ではないものの、その総合力の高さは他の追随を許さない。もちろん、ドライバーを飽きさせない十分な速さを持っているが、それを驚くほどの高級感と快適性、洗練性と結びつけているところに「レンスポ」の真髄がある。言わずもがな、不安定な路面でもうろたえない安心感もある。
本稿執筆時点では、トップグレードのSVについてまだ評価できていないため、次に控えるP530を取り上げる。パワートレインは4.4L V8ツインターボで、最高出力530ps、0-100km/h加速4.5秒と、2500kgをわずかに下回る車重にしては十分なパフォーマンスだ。
足回りには、車重の悪影響を抑えるためにさまざまなトリックが仕掛けられている。デュアルチャンバー・エアスプリング、48Vアクティブ・アンチロールバー、リミテッド・スリップ・リア・ディファレンシャル、四輪操舵などが、P530のハンドリングを驚くほどクイックにしている。
ひとたびサスペンションを緩めると、ほぼ無音で走っているかのように快適で、インテリアの美しい細工にマッチした高級感を味わえる。それでいて、ヒマラヤのシェルパのように、荒れた路面を軽快に乗り越えていくのがレンジローバー・スポーツなのだ。
5. ポルシェ・カイエン・ターボ
長所:実世界最速のSUV。かつてない居住性の高さ。
短所:以前のカイエンほど切れ味がよくない。高価。
現実の世界で最も速いSUV。カイエン・ターボは、その優れた視界と非常に有能なシャシーのおかげで、どんな天候でも、他車よりも速くA地点からB地点へと移動することができる。
しかし、第3世代の現行型カイエンは、先代の鋭さや後輪駆動チックなテイストをやや失っている。
この2.3トンのSUVがダイナミックに方向転換する姿は依然として驚異的だが、高い居住性と商品力を持たせるために、これまでの熱気が一段階低くなったように感じられる。
6. アウディSQ7
長所: 驚異的な速さ。高い快適性。
短所:ダイナミクスではライバルに及ばない。V8ディーゼルが恋しい。
SQ7が一躍脚光を浴びるようになったのは、高性能かつ日常的に使えるSUVというコンセプトを、大半のライバルとは少し異なるアプローチで実現したからだ。
その中心となったのがディーゼルの4.0L V8ツインターボで、このパワープラントはSQ7に驚異的な速さだけでなく、少なくともこのリストの他車から見れば優秀な燃費を誇る。
しかし2020年、アウディはこのディーゼルを廃止し、ベントレーやポルシェまであらゆるモデルに搭載されているガソリンの4.0L V8ツインターボに変更した。このエンジンは、最高出力507psと最大トルク78.5kg-mを発生する強力なものだ。
確かに、SQ7は速くて、洗練されていて、7人乗りで、非常に快適なクルマである。ドライバーを惹きつける力としては、ポルシェやアルファ・ロメオ、ジャガーのようなスポーツカーブランには及ばないものの、サイズの割にハンドリングもいい。
ただ、新しいV8ガソリンは優秀かもしれないが、以前のディーゼルほど個性的なものではない。
7. メルセデスAMG GLC 63 S 4マチック+クーペ
長所: 洗練されたデザイン、陶酔させるV8エンジン
短所:コーナリングではポルシェに及ばない。乗り心地は硬くてうるさい。
GLC 63クーペの最大の敵は、5ドアSUVボディのGLC 63である。いずれも、V8エンジンでドライバーを陶酔させるからだ。
優雅なスタイリングに魅了されるなら、クーペを選んで損はない。メルセデスAMGに期待されるラグジュアリーなインテリアをばっちり備え、0-100km/h加速タイムではポルシェ・マカン・ターボに0.5秒の差をつけている(ただし、ダイナミクスではかなわない)。
乗り心地は硬くてうるさいため、静かな走りを好むドライバーにはリーチできないだろう。しかし、ライバル車が6気筒エンジンに移行する中、ミドルクラスの高性能SUVとしてエモーショナルなV8ガソリンを搭載していることが大きなアドバンテージとなる。
本稿執筆時点では、フルモデルチェンジ後の最新世代にはまだ試乗できていないが、新型は2.0L 4気筒のPHEVとなる。SUVボディのGLC 63 S Eパフォーマンスは、動力性能が高く乗り心地もしなやかになったが、V8モデルのような個性には欠け、体感的な力強さも期待に届かなかった。クーペではどのように変わったか、最終評価を待たれたい。
8. BMW X3 Mコンペティション & X4 Mコンペティション
長所: 驚くほど高いグリップレベル、鋭いコーナリングバランス。
短所:硬めの乗り心地。
BMWが比較的コンパクトな高性能SUVを作るようになったのは、つい最近のことだ。X5 MやX6 Mは以前からあったが、これより小型のモデルが登場したのはX3 MとX4 Mが初めて。
それも、妙に真面目で保守的なクルマである。エアサスペンションではなくスチールコイルサスペンションを採用し、単なるスポーティSUVにとどまらず、M3やM4のSUV版とでも言うような攻めたアイデンティティを確立しようとしている。硬めの乗り心地とシャープに回る6気筒エンジンを持ち、多くの人が諦めているスポーツ性を取り戻そうと必死になっているように見える。
X3 MとX4 Mは、アクスルやシャシーチューニングが共通で、M5譲りの四輪駆動システムを採用しており、驚くほど高いグリップレベルと俊敏なコーナリングバランスを誇る。とはいえ、同クラスで最もハンドリングに優れているというわけではないし、ダイナミクスの才能も決して幅広いわけではない。
9. マセラティ・グレカーレ・トロフェオ
長所:軽快な速さ、ラグジュアリーなインテリア、スムーズな乗り心地。
短所:エンジンのチューニングは完璧ではない。
マセラティは、かつての誇り高きイタリアンブランドとしての威厳を取り戻しつつある。スーパーカーのMC20はその象徴的存在であるが、グラントゥーリズモも復活し、EVも設定されている。しかし、少なくとも販売面で最も重要な新型車は、ポルシェ・マカンを彷彿とさせるミドルサイズSUV、グレカールであろう。
最上位のトロフェオ仕様には、ツッフェンハウゼンのSUVを追撃できる素質があることは確かだ。MC20と同じ3.0L V6ツインターボ「ネットゥーノ」が搭載され、最高出力530ps、0-100km/h加速はわずか3.8秒とされている。スポーツモードやコルサモードでは、エグゾーストノートも高まる。ベストなチューニングというわけではないが、軽快に走らせることができる。
サスペンションも強化されており、鋭さやコントロール性はマカンほどではないもの、そのポテンシャルは高い。リアバイアスの四輪駆動システムにより、コーナリングでの細かな姿勢制御も可能だ。
特筆すべきは、群を抜いて広い室内空間で、見た目にも高級感がある。ダンパーをソフトな設定にするとスムーズで洗練された走りを見せるなど、オーナーの生活にすんなりと溶け込む能力を持つ。
10. ランドローバー・ディフェンダー90 V8
長所:5.0L V8の無限の魅力、運転する楽しみがある。
短所:今回は予算オーバー。合理的とは言えない。
スーパーチャージャー付き5.0L V8エンジンを搭載したディフェンダー90 V8は、今回設定した予算を大幅に超過しているが、あまりに個性的で魅力的なので紹介させてほしい。
エンジン自体は他のJLRモデルにも搭載されているもので、洗練の極みとは言えないが、その魅力は否定できない。鼓動感と過給器のうなり声が、唯一無二のキャラクターを演出している。
ランドローバーのSVO(スペシャル・ビークル・オペレーションズ)部門による特別モデルではないが、22インチホイール、500ps以上の出力、そして芳しいエグゾーストノートなど、SVOの特徴も数多く見られる。開発チームは、運転するのに楽しいクルマを作ろうとした。彼らに話を聞くと、ラリーカーに近い雰囲気を作りたかったと言う。ガタガタした路面では特にバランスよく、軽快に走れるように、と。
乗り心地はなめらかで洗練されていて、不安になるほど速い。FタイプSVRやカイエン・ターボのようなハンドリングは難しいが(期待するのはお門違い)、ダイナミクスに甘美な味わいがあり、十分な加速を見せてくれる。つまるところ、決して合理的ではないが、実に愛らしいクルマなのである。
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みんなのコメント
国産SUVって、肥料を運搬する人が買う車なんでしょう。
で、一番良かったのはレヴァンテだったよ、全てが気持ちいいよ。ゲレンデはクソ遅いしカイエンターボはもういっかなという感じ。ランボルギーニのウルスは速いけどギクシャクするし毎日の足にすると何かと金かかりすぎ、本体も四千万年〜だし、何せちょこまか壊れるから毎月国産車が買えちゃうよ、いやマジで。ただ滅多にカブらないから優越感はかなりある。