■ちょっと変わった理由から、海外で人気となっている日本車を紹介
現在、日本の中古車市場では、1980年代から1990年代に発売された、「旧車」や「ネオクラッシック」と呼ばれるクルマの価格高騰が顕著です。
この原因のひとつは、日産「スカイラインGT-R」がアメリカで人気となったことで大量の中古車が日本から輸出され、国内の在庫が極端に少なくなったことにより価格が高騰。それに引きずられるかたちで、他の高性能車も価格が上がり、旧車全般に波及しました。
もともと、日本の中古車は比較的程度が良いという特徴があり、さまざまな国で人気が高い状態が続いていました。
そうした中古車のなかには、さまざまな理由から海外で人気となったモデルも存在。そこで、意外な理由で海外において人気となった日本車を、5車種ピックアップして紹介します。
●日産「フィガロ」
1980年代の終わりに一世を風靡した日産の「パイクカー」シリーズ第3弾として、1991年に「フィガロ」が2万台限定で発売されました。
シャシとエンジンは初代マーチがベースで、外観は欧州のクラシックなスポーツカーをイメージさせるデザインを採用。屋根とリアウインドウ周辺が手動で開閉でき、一見すると2シーターのように見えますが、狭いながらもリアシートを備える4シーターです。
内装もクラシカルで、レトロな書体のタコメーターやアナログ時計、ダッシュボードにはトグルスイッチ、古いラジオのようなデザインのCDオーディオを装備しています。
フィガロは日本専用車ですが、発売当時から海外でも注目されており、後にフェラーリ・コレクターとしても有名なエリック・クラプトンがフィガロをイギリスで乗っていたことが、大いに話題となりました。
右ハンドルであることや英国趣味の内外装から次第にイギリスで人気となり、またコンパクトカーがMT車ばかりだったイギリスで、AT車であるフィガロは斬新だったともいわれています。
かなりの台数のフィガロがイギリスに輸出され、いまではイギリスに専門店やオーナーズクラブまで存在するほどです。
●オートザム「AZ-1」
1992年にデビューしたマツダ「AZ-1」は、軽自動車で唯一無二の、ガルウイングドアを採用した2シータースポーツカーです。
エンジンはスズキ「アルトワークス」に搭載された、最高出力64馬力を発揮する660cc直列3気筒ターボを、リアミッドシップに搭載し、外装にFRPを多用することで720kgの軽量ボディを実現。
「公道を走るゴーカート」とも称されたクイックなハンドリングは乗り手を選ぶともいわれ、「面白いけど危険なクルマ」とも評されてしまいます。
しかし、軽自動車として生粋のスポーツカーというキャラクターが好まれ、1995年の販売終了後から中古車価格が極端に下がることはありませんでした。
そして、旧車人気の世界的な高まりのなか、この世界最小の量産ガルウイング車は当然のように海外のコレクターから注目されることになります。
とくに、コンパクトなスポーツカーが人気の欧州で話題となり、フィガロと同様にイギリスを中心に中古車が輸出され、現地では日本円で200万円以上の高値で取引されました。
現在の状況は、そもそも販売台数が少なく現存数も少ないAZ-1ですから、海外への流出は沈静化していますが、国内での価格高騰が続いており、コンディションによっては250万円から300万円の値がつけられています。
●ダイハツ「ハイゼット」
軽自動車は日本独自の規格で製造され進化を遂げてきましたが、一方で「ガラパゴス化」の象徴的な商品と揶揄されたこともあります。
しかし、欧州やアジア圏にほぼ日本仕様のまま輸出された実績もあり、いまも海外で販売されているケースもあるなど、軽自動車はグローバルでも通用するクルマです。
なかでも、4WDの軽トラックは数年前から北米で人気となり、とくに過走行で格安な中古車が数多く輸出されています。
アメリカでは安全基準の関係で、軽トラックでは登録できない州もあることから、ほとんどの軽トラックは農場などの私有地で使われています。もともとATVといった小型バギーが存在しますが、軽トラックはエアコンも付いているので、快適に使えるということです。
とくに、ダイハツ「ハイゼット」はキャビンが長い「ハイゼットジャンボ」を1983年からラインナップしていることもあって、身体の大きなアメリカ人でも窮屈すぎないドライビングポジションをとれるため、人気となっています。
いまでは北米に中古軽トラックの専門店がいくつもあり、オフロードタイヤを装着して最低地上高を上げたカスタマイズも定番で、「サムライ・トラック」の名で親しまれています。
■4WD車の需要が高いロシアでマークIIは別格!?
●トヨタ「アクア」
昔からアジア圏では日本の中古車が人気で、とくに日本製のトラックや1BOXバン、ライトバンは耐久性や信頼性の高さから絶大な支持を受けています。
また、アジア圏では関税が非常に高額な国もあり、日本での価格に対して倍以上で販売されているケースも珍しくなく、それが安価な中古車の人気に拍車をかけているようです。
そんな国のひとつがスリランカで、これまで日本の中古車が大量に輸出されてきましたが、近年はだいぶ状況が変わってきました。
スリランカはクルマに対する関税と物品税など諸税が高く、排気量によって段階的に上がり、日本から輸出されると現地ではおよそ2倍から3倍の価格になってしまいます。
さらに、輸入されるクルマは原則的に車齢が2年以下でないとならず、2年を超えると別途、許可を得る必要があり、古くて安い中古車は自由に輸入できません。
しかし、ハイブリッド車は税金が優遇されており、現地で正規販売されていない安価なトヨタ「アクア」が注目され、日本で登録済み未使用車として売られている低走行の中古車が即納可能とあって、とくに人気です。
ほかにもホンダ「ヴェゼル ハイブリッド」や、1リッターエンジン車のトヨタ「ライズ」も人気で、一時はちょっとしたバブルになりました。
ただし、厄介なのがスリランカでは輸入品についての税制や規制がコロコロ変わるため、動向を常にチェックする必要があるといえます。
●トヨタ「マークII3兄弟」
日本ではあまり馴染みがないのですが、ロシアでは共産主義時代から自動車製造が盛んにおこなわれてきました。
しかし、何十年もモデルチェンジしていないことから性能的に良いとはいえず、1990年代から日本の中古車がとくに極東地域で人気となり、2000年代には一気に台数が膨れ上がりました。
一時は右ハンドルに起因した事故が多発したことから、日本の中古車の輸入を禁止すると宣言されましたが、国民から大反対され、現在も輸入が続いている状況です。
なかでも高い人気を誇っているのが、トヨタ「ランドクルーザー」や三菱「パジェロ」などのクロカン車で、極寒のロシアならではの車種といえます。
ところが、若い世代に絶大な人気となっているのがトヨタ「マークII3兄弟」で、理由としてはドリフト走行に適したモデルだからです。
日本で誕生したドリフト競技は世界に発信され、アメリカやアジア圏だけでなく、ロシアでも近年は非常に人気が高くなりました。
そのため、日本では買い手がいないような改造済みの中古マークIIが、ロシアでは高いニーズがあります。
例えば、YouTubeでマークIIによるドリフト映像があると、ロシアの若者によるコメントが数多く見られるほどです。
さすがに日本でもマークII3兄弟の個体数が減っているため、ロシアでも入手は困難なようですが、いまも人気車には変わりありません。
※ ※ ※
アメリカでは今もスカイラインGT-Rや旧車人気が続いていますが、もともとアメリカは中古車の輸入に厳しい制限があり、排出ガス規制や安全基準を満たしている必要がありました。
しかし、新車登録から25年を経過したクルマはクラシックカーとして扱われ、年間走行距離など制限されますが、基準を満たしていなくても輸入が可能になりました。
このように、中古車の輸入が規制されている国は意外と多く、お隣の中国も原則的に輸入できません。
しかし、日本はクルマの輸入についてはかなり自由といえる国で、国内の保安基準に適合していれば大手を振って登録が可能です。しかも関税はかからず、左ハンドルでもまったく問題ありません。
日本は自動車の輸入に関しては、世界一寛容な国といえるのではないでしょうか。
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