■軽量なボディが印象的なクルマを振り返る
近年、クルマの装備は充実しており、さまざまな快適装備や先進安全技術を標準装備することで重量増は避けられません。
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また、電動化によってバッテリーを大量に搭載することも、重量増につながっています。
一方で、各メーカーとも軽くて強度が高い高張力鋼板をシャシに効果的に配置したり、アルミやCFRPを用いるなど軽量化もおこなっており、劇的に車重が増えているわけではありません。
軽量な車体というのは、一般的に「走る・曲がる・止まる」というすべての性能に良い影響を与えると同時に、燃費の向上にもつながるため、どのクルマでもなんらかの軽量化がおこなわれています。
そこで、とくに軽量なことが特徴のクルマを、5車種ピックアップして紹介します。
●ロータス「エリーゼ S1」
イギリスの名門スポーツカーメーカーであるロータスは、昔から軽量なクルマを数多く輩出してきました。
なかでも1960年代以降に出たモデルについては、鋼板を組み合わせた高剛性シャシにFRP製ボディを架装するのが主流となり、たとえハイパワーなエンジンでなくても軽量な車体によって優れた走行性能をみせるというのが、ロータスの美学でした。
この思想を受け継いで1996年に発売された新時代のスポーツカーが、「エリーゼ S1(シリーズ1)」です。
オープン2シーターのボディは全長3726mm×全幅1720mm×全高1200mmと非常にコンパクトなサイズで、外観デザインは抑揚のある曲面を組み合わせたグラマラスなスポーツカーフォルムを採用。
もっとも特徴的なのがシャシで、複数のアルミ製押出材をエポキシ樹脂で接着して成形されたバスタブ型を採用し、ボディパネルはロータスがもっとも得意とするFRP製とすることで、車重はわずか690kgを達成。
また、ヒーター以外の快適装備やエアバッグは搭載されず、初期のモデルではアルミ製ブレーキディスクを採用するなど、とことん軽量化にこだわっていました。
リアミッドシップに搭載されたエンジンはローバー製の1.8リッター直列4気筒DOHCで、最高出力は120馬力とローパワーですが、加速性能は馬力以上の実力を発揮。もちろんコーナリング性能の高さはいわずもがなです。
その後、エンジンがトヨタ製にスイッチされてパワーアップを図り、S2、S3とデザインの変更と、快適装備や安全装備が充実したことで車重は増えていきましたが、それでも900kgほどに抑えられていました。
エリーゼはすでに生産を終えており、ロータスは次世代モデルとしてエンジン車だけでなくEVも発売予定とアナウンスしていますが、やはりロータス流のライトウエイトスポーツカーとなることは間違いないでしょう。
●トヨタ「スターレット」
トヨタの現行モデルでエントリーカーとして販売されている「ヤリス」は、前身が「ヴィッツ」です。このヴィッツよりもさらに前のモデルが「スターレット」で、長くトヨタを代表するコンパクトカーでした。
さらにルーツをたどると「パブリカ」→初代「パブリカスターレット」→2代目「スターレット」という系譜ですが、2代目スターレットはFRで室内の広さではライバルに遅れていました。
そこで、1984年にはすべてを刷新したFFコンパクトカーの3代目スターレットが登場。スタイリッシュなフォルムからたちまち人気車となります。
トップグレードの「Si」は93馬力(グロス)を発揮する新開発の1.3リッター直列4気筒SOHCエンジンが搭載し、わずか730kg(3ドア)と軽量な車体によって高い走行性能を誇りました。
当時は同クラスのクルマはどれも軽量でしたが、スターレットの特徴としてはシャシ剛性の高さがあり、ジムカーナなどのモータースポーツでも活躍。
1986年に105馬力(ネット)を発揮する「スターレット ターボ」を追加ラインナップ。トップグレードの「ターボS」でも790kgですから、かなり軽いといえます。
なお、自然吸気のモデルは「かっとび」、ターボは「韋駄天」のキャッチコピーでした。
●ホンダ「バラードスポーツCR-X」
ホンダの新時代を告げるコンパクトカー初代「シビック」は1973年に誕生しました。その後、シビックにとって大きな転換期となったのが1983年9月に登場した3代目で、デザインが一新されるとともに高性能化が一気に進みました。
この3代目シビックよりも少し前の1983年6月にデビューしたのが、シビックと基本的なコンポーネントを共有する「バラードスポーツCR-X」です。
バラードスポーツCR-Xの外観はセミリトラクタブルライトのフロントフェイスに、コンパクトで洗練されたファストバックスタイルのフォルムが特徴の3ドアハッチバッククーペです。
トップグレードの「1.5i」に搭載されたエンジンは110馬力(グロス)を発揮する1.5リッター直列4気筒で、パワフルではありませんが、わずか800kg(MT)と軽量な車体で、さらにシビックよりも180mm短いホイールベースが相まって優れた加速性能とコーナリング性能を実現。
フロントマスクをはじめ、ヘッドライトフラップ、フロントフェンダー、ドアロアガーニッシュ、サイドシルガーニッシュなどに軽量で耐久性の高いプラスチックを採用することで軽量化を達成していました。
1984年10月には135馬力(グロス)を発揮する1.6リッターDOHCエンジンを搭載した「Si」グレードが追加されますが、それでも車重は860kgで、まさに日本を代表するライトウエイトスポーツカーといえます。
■ストイックな方法と技術的なアプローチ。異なる手法で軽量化を成功させた2台とは?
●ケータハム「セブン 160」
前出のロータスが生んだ名作といえば「セブン」です。レースに出る傍らで、市販車の製造もおこなっていたロータスは、1957年にユーザーが自分で組み立てるキットカーとしてセブンを発表。
セブンは当時としても古典的なデザインで、さしずめFR時代のフォミュラーカーといったところです。
このセブンは安価で高性能なことから大ヒットして、1973年に登場した「シリーズ4」まで生産が続きましたが、セブンの製造権をケータハムに売却。
そしてケータハムによって新たに作られた「シリーズ3」セブンの進化系が、現在のケータハム「セブン」です。
ケータハムは独自の技術によってセブンの改良を続け、ロータス時代とは比べ物にならないほどのパワーのあるエンジンを搭載し、もはやレーシングカーに近い性能まで上り詰めました。
しかし、もともとロータス セブンは優れたシャシにフォードなどのローパワーなOHVエンジンを搭載した、安価なスポーツカーだったことからヒットしたモデルでした。
そこでケータハムは2014年に、エントリーグレードとしてスズキ製の660cc直列3気筒エンジンを搭載した「セブン160」を発売。日本で軽自動車登録できるセブンとして、大いに話題となりました。
最高出力は軽自動車の自主規制とは無縁だったことから80馬力を発揮し、トレッドが狭められてタイヤは155/65R14を装着。
そして、ヒーターすら装備せずに車重はわずか490kgに抑えられ、まさに初期のロータス セブンを彷彿とさせるモデルとなっています。
現在、すでにセブン160の生産は終了しており、次世代のモデルが登場するかは未定です。
●スズキ「スイフトスポーツ」
最後に紹介するのは現行モデルのスズキ「スイフトスポーツ」で、国内メーカーのなかでも軽量化技術に定評があるスズキによる渾身の作といえます。
2017年に発売された現行モデルの4代目は、シリーズ初のターボエンジンを搭載。プレミアムガソリン仕様の1.4リッター直列4気筒ターボエンジンは最高出力140馬力を誇り、トランスミッションは6速ATと、クロスレシオの6速MTを設定しています。
また、ボディは通常のスイフトに比べ30mmワイド化されたトレッドの影響でフェンダーが20mm拡幅したことにより、やはりシリーズ初の3ナンバー登録となります。
ターボ化による補機類が増えたことやボディが大型化しながらも、新プラットフォーム「HEARTECT(ハーテクト)」や軽量衝撃吸収ボディ「TECT(テクト)」の採用に加え、内装部品やシートに至る細部まで最適化した結果、3代目から70kgもの大幅な軽量化を実現。
車重は十分な快適装備や先進安全技術を搭載されたうえで、わずか970kg(MT)です。
※ ※ ※
今回、紹介した5車種のなかで、エリーゼとセブンはかなり特殊なモデルで、スターレットとバラードスポーツCR-Xは昭和の時代のクルマですから、軽いことはそれほど驚きではありません。
そうなるとスイフトスポーツの軽さは驚異的ともいえます。ほかのスズキ車ではスタンダードなスイフトの「XG」グレードが860kg、「アルト」の最軽量車はなんと610kgです。
スイフトはもはや他社の軽自動車並で、アルトに至っては20年前のアルトと同等ですから、装備を考えるといかにスズキの軽量化技術がすごいかがわかります。
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