日本で購入できる乗用車の車種数は180車前後に達する。この中には売れ行きが落ち込んだクルマも見られ、大半は海外向けに開発されている。
国内はいわばオマケの市場だから、売れなくてもメーカーにとって大きな痛手にはならない。国内の販売台数が少ないのに、海外と併せて定期的にフルモデルチェンジを行う。
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しかし販売が落ち込んで、なおかつ発売から6年以上を経過したのに、フルモデルチェンジを受けていない車種もある。これらは見捨てられた印象が強い。
次期型の計画がなく、そのモデルで終わる可能性も高い。ここでは発売から長い時間を経過しながら、売れ行きの下がった状態で売り続ける車種を取り上げたい。
文:渡辺陽一郎/写真:ベストカー編集部
■プレミオ/アリオン(2007年~)は5ナンバーが必須の人たちに
筆頭はトヨタのプレミオ&アリオンだ。今では5ナンバーサイズのセダンは、プレミオ/アリオン/カローラアクシオ/グレイスの4車種だけだから、貴重な選択肢になった。
しかもプレミオ&アリオンはこの4車種の中では居住空間が最も広く、後席の足元空間にも余裕がある。
大人4名が快適に乗車できて、街中でも運転しやすい。日本向けに開発された実用セダンだ。
ただし今では発売から約11年を経過した。緊急自動ブレーキを作動できる安全装備はマイナーチェンジで加えたが、歩行者は検知できない。
設計が古くなって売れ行きが下がり、トヨタ店が扱うアリオンは、トヨペット店のプレミオに比べて登録台数が少ないから、1か月平均で500台前後だ。
それでも生産と販売を続けるのは、前述のように後席の居住性が優れた5ナンバーサイズの実用セダンになるからだ。
プレミオは以前のコロナ、アリオンはカリーナの流れを受け継ぐから、トヨタのセダンとしては中心的な存在になる。ユーザーには個人だけでなく、定期的に乗り替える法人も多いから簡単には廃止できない。
そして法人の場合、例えばプレミオを廃止したことで日産のシルフィに乗り替えられると、同じ法人が使うトヨペット店のハイエースまで、日産キャラバンに変わる心配が生じる。
販売会社としては、新しい法人と繋がりができれば、その法人のセダンからバンまで一手に引き受けたいと考えるのは当然だ。懇意にしている法人を逃さないためにも、車種の廃止はできない。
ちなみに軽自動車のOEMが多い理由も同じだ。マツダやスバルは、かつて軽自動車を自社開発していたが、合理化のために撤退した。
この時に軽自動車を単純にやめてしまうと、他メーカーに入り込む隙を与えてしまう。そこでOEM車を扱って穴埋めをしているわけだ。
■北米でも人気低迷中のフーガ(2004年~)が生き残るわけとは?
設計が古くなって売れ行きの落ち込んだセダンとして、日産フーガも挙げられる。フーガの前身はセドリック&グロリアだから、トヨタのクラウンに相当する伝統あるLサイズセダンだ。
日産の経営を立て直す段階で、姉妹車だった2車種をフーガに統合した。初代フーガは2004年に発売され、2009年に2代目の現行型にフルモデルチェンジされた。
今では2代目フーガも発売から約9年を経過して売れ行きが下がり、1か月の登録台数は150台前後になる。
それでも国内販売を続けるのは、セドリック&グロリアの後継とあって、付き合いの長いユーザーもいるからだ。
法人需要もあるから、後席に電動リクライニングシートなどを備えた250/370/ハイブリッドVIPも用意した。
またフーガは海外ではインフィニティQ70として売られる。Q70の売れ行きも下がった。
しかしインフィニティの上級セダンはQ40、Q70L(シーマ/フーガのロング版)、Q50(スカイライン)のみだから廃止するのは難しい。そこでフーガ、Q70ともに細々と生産を続ける。
■プリウスα(2011年~)がモデルチェンジしないわけ
プリウスαは、先代プリウスをベースに開発されたワゴン風のモデルだ。全長とホイールベース(前輪と後輪の間隔)が少し長く、荷室に3列目の補助席を備えた7人乗りもある。
発売されたのは2011年で、2015年にはプリウスが現行型にフルモデルチェンジされたから、プリウスαは古い印象になって売れ行きを下げた。
プラットフォームは今では旧世代だから、操舵感が少し曖昧だ。それでも販売を続ける理由は、広い後席や荷室などの実用性が、今でも相応に通用するからだ。
売れ行きも大幅には落ち込まず、1か月平均で1000台少々は登録されている。同じトヨタのエスティマやプレミオと同程度か、少し上まわるため、地味なクルマでも廃止されない。
商品のテコ入れも行われ、緊急自動ブレーキは改良を受けて、トヨタセーフティセンスPに進化した。従って歩行者の検知も可能とする。
運転感覚には古さを感じるが、長いホイールベースとバネ上制振制御(モーターの駆動力を微妙に増減させて車体の水平を保つ機能)で、乗り心地はおおむね快適だ。
今でも市場から認知されているため、生産を続けている。
■レクサスCT(2011年~)は入門車種として存続
レクサスCT200hは、トヨタが展開する上級車ブランド、レクサスに属するミドルサイズのハッチバックだ。2011年に発売されたから7年以上を経過する。
プラットフォームは先代プリウスやオーリスと共通だが、開発者は「各部の造り込みを考えると、レクサスHS250hのショートホイールベース版と考えて欲しい」と述べた。
パワートレーンは1.8Lエンジンをベースにしたハイブリッドだから、先代プリウスがベースになる。JC08モード燃費は、売れ筋グレードが26.6km/Lだ。
スポーティ感覚を重視して開発され、操舵感は適度に機敏で比較的良く曲がるが、後輪の接地性はいまひとつだ。
レクサスとしては乗り心地も不満で、登坂路ではハイブリッドながらも4気筒エンジン特有のノイズが耳障りに感じる。
価格は割安とはいえず、売れ筋になるバージョンCは399万円だ。緊急自動ブレーキは歩行者も検知できるが、全般的に設計の古さが散見されて選ぶ価値が薄れた。
1か月の登録台数は450台前後になる。それでも生産を続ける理由は、レクサスの中では、今でも貴重な300万円台で買える車種になるからだ。
レクサスのLS/GS/RXなどを使う世帯が、セカンドカーを求めた時も、CT200hのサイズと価格、燃費はセールスマンにとって推奨しやすい。
レクサスブランドに興味を持ったユーザーが、最初に購入するエントリーカーにも適する。このほか欧州などの海外で売られている事情もある。
そしてレクサスは数多く売られるブランドではなく、販売店舗数も全国に約170拠点と少ない。トヨタの4系列を合計すれば約4900拠点だから、レクサスの販売網は3%程度だ。
こうなると1か月の登録台数が450台前後でも、CT200hは大切な選択肢になる。これらの事情が相まって、レクサスCT200hは今でも販売を続けている。
■軽自動車から5ナンバーにしてまで作られるi-MiEV(2009年~)
軽自動車の三菱iが発売されたのは2006年で、この後、電気自動車のi-MiEVが加わった。2009年に法人向けのリース販売、2010年には個人向けの販売を開始している。
この後、ガソリンエンジンを搭載するアイが生産を終えた後も、i-MiEVは継続され、2018年には全長を3480mmに拡大して小型車になった。
軽自動車は航続可能距離が短い代わりにクリーンな移動手段だから、都市内の移動に適する。
つまり電気自動車と軽自動車のサイズは相性が良いが、電気自動車では日産リーフの進化が著しい。
今ではi-MiEV Xは16kWhのリチウムイオン電池を搭載して価格が294万8400円、リーフSは3ナンバーサイズのボディに40kWhのリチウムイオン電池を搭載して315万360円だ。
2018年度のCEV補助金は、リーフが40万円、i-MiEVが16万4000円だから、補助金額を差し引いた実質負担額は、アイ・ミーブの方が高くなってしまう。
これではi-MiEVの販売は難しいが、三菱には三菱車を積極的に購入する関連企業も多い。
また三菱はアウトランダーPHEVも含めて、電動技術に力を入れるから、電気自動車のi-MiEVは象徴的な存在だ。やめられない事情も多く、販売を続けている。
★編集部のまとめ★
こう振り返ってみると売れないながらも地道に作り続けるメーカーの意図、そしてそのクルマを必要とする人が多くいるのがわかります。
少しでも個性のあるクルマを残すためにも、このようなクルマたちには1日も長く販売現場に残ってほしいなと思います。
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