AAV7水陸両用車、どんな装備?
text:Kumiko Kato(加藤久美子)AAV7(水陸両用車)は離島防衛を主な目的として2018年に新設された陸上自衛隊「水陸機動団」(長崎県佐世保市相浦駐屯地内)の中核装備として現在までに50台以上が配備されている。
アメリカで製造され、米海兵隊へは1971年以来、派生型含めて1300台以上を配備している。
50年近くの長い歴史を持つ装備品で、日本以外にも韓国や台湾、イタリア、ブラジル、タイなど10以上の国で活躍中だ。
全長8.2m×全幅3.3m×全高3.3mで装甲車より一回り大きなサイズゆえ日本での公道走行は不可。防弾アルミ製のボディは重量21.8tで主力戦車である10式戦車(44t)のほぼ半分。アメリカ版より少し軽量化されており、12.7mm重機関銃と40mm自動てき弾銃を備える。
海上機動性及び防護性に優れ、海上からの部隊などを島しょ部へ投入する装軌式の水陸両用車両だ。
最高時速は地上では約72km/h、海上では約13km/h。高圧水流を利用して推進力を得る「ウォータージェット」によって水上でも約7時間の航行が可能だ。
8月25日に開催された「令和元年度陸上自衛隊富士総合火力演習」で、実際にふだんの訓練でAAV7を担当している陸自隊員に操縦した感じや必要な免許などを聞いてみた。
乗った感じ/免許の他に必要な訓練は?
――AAV7に初めて乗った印象は?
「陸を走っている時には一般的なキャタピラー付きの装甲車とほぼ同じで、船を感じさせるものはありません」
「最初に水の中に入った時はやはり感動しましたね。がたがたとした地面を走っているところから、ドボンと水にはいって、ふわ~っと浮く感じ」
「独特ですね。海上、水上でも進むことができる装甲車という印象です」
――AAVはどんな場所で使われるのでしょうか?
「AAVは離島防衛を目的として配備されていますが、災害派遣でも活躍が期待されています」
「孤立した島から住民を救助する場合など。多様な活躍ができそうです。防衛省は良い買い物をしたなあと思いますよ」
「災害派遣と言えば、東日本大震災に時も孤立した島が結構あったんですけど、陸上自衛隊はまだこのような水陸両用車を持っていなかったので、救出に行けなかったんです。それで、アメリカ海兵隊のお世話になりました」
「今度、もし同様の災害があった時にはこのAAV7で自分たちが救出に行けます。これを持ったことでより多くの災害派遣にも対応することができて、救助の幅が広がったという印象です」
――AAVを扱うにはどんな免許、訓練が必要でしょうか?
「大型特殊免許と船舶免許が必要ですね。一般的な陸上自衛隊の訓練と比べて違うところは、水泳の訓練があることです」
「水上で使うので当然と言えば当然ですが、水上で沈んでしまった場合に水から泳いで脱出し、生存するために、『1時間泳ぎ続けられる能力(1時間泳)』や着衣のまま泳ぎ続ける訓練をします」
番外編:アメリカでは次期水陸両用車も
米海兵隊がAAVの後継として配備する「ACV 1.1」(Amphibious Combat Vehicle)は、Iveco社が2009年に発表したフルタイム8輪駆動の「 Super AV APC」をベースとしている。同社は日本でも消防はしご車のメーカーとしておなじみ。
全長9.2m×全幅3.1m×全高2.9mで何よりも履帯(キャタピラ)ではなく、装輪(タイヤ)であることが大きな特徴。
乗員3名+人員13名の輸送が可能で、超硬スチールモノコックで装甲を強化し、耐地雷座席も装備している。
出力700psの新しい6気筒パワーユニットを搭載しており、水中では2つのプロペラによって推進する。
AAV7に比べるとやや小ぶりになり輸送機C130やC-17での輸送も可能。
2019年秋に米海兵隊への納入が予定されている。
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