今、クルマ社会を大きく変えようとしているのがEV化の波と「ADAS」だ。「エーダス」と呼ばれるこの先進運転支援システムは、かつては高級車の証しとも言えるものだったが、いまや軽トラにも搭載され、その本来的な利便性を広くアピールしている。
運転をサポートしてくれるこの安全システムの開発状況はいかに? また、ADASを搭載したモデルを購入すれば安心感が得られるだけでなく、非搭載車と比較して格段にお得! という件を、今回はレポートしたい。
「人間はミスをするもの」ということを前提に?? ホンダが目指す交通事故死者ゼロの未来
文/鈴木喜生、写真/スズキ、ダイハツ、トヨタ、ホンダ、マツダ、三菱自動車、Tesla, Inc. 、NEWSPRESS UK、写真AC
「ASV」によって「ADAS」のひとつ「AEBS」が義務化!?
ADAS(Advanced Driving Assistant System)とは、先進運転支援システムのこと。ドライバーが安全&快適に運転でき、事故を防げるようにするシステムの総称だ。
昨年から特にこのADASが注目されるようになった理由として、国土交通省が推し進める「ASV推進計画」が挙げられる。「ASV」(Advanced Safety Vehicle)とは、ドライバーの運転を支援するシステムを搭載した「先進安全自動車」のことで、つまりADAS機能を搭載したクルマが「ASV」となる。
ASV推進計画の一環として、2021年11月から自動ブレーキ装着「AEBS」の義務化が新車に対して段階的に行われることになった。この機能も先進運転支援システムADASのひとつだ。その性能は以下のように国際基準によって定められている。
【制動要件】
●静止車両
時速40kmで走行中、前方にある停止中の自動車に衝突しないこと
(軽トラは時速30km)
●走行車両
時速60kmで走行中、時速20kmで走る前方の車に衝突しないこと
(軽トラは時速50km)
●歩行者
時速30kmで走行中、高さ115cmの6歳児相当のダミー人形が時速5kmで横断した場合に衝突しないこと
(軽トラは時速20km)
この衝突被害軽減ブレーキ「AEBS」を搭載した軽トラのCMが流れているのはご存じの通り。ただし、2021年11月からAEBSが義務化されたのは、フルモデルチェンジする国産車の新車販売に関してのみ。国産車における既存車種すべてがこの対象になるのは2025年12月からで、軽トラにおいては2027年9月からとなる。
【AEBS自動ブレーキ装着の義務化】
●新型車 国産車2021年11月~
輸入車2024年7月~
●継続生産車 国産車2025年12月~(軽トラは2027年9月~)
輸入車2026年7月~
2018年5月には、ハイゼット トラックに軽トラックとしては初となる衝突回避支援システム「スマートアシストIIIt(スリー ティー)」搭載された
「ADAS」と「AD」のおさらいと、各社メーカーの動向
ベストカー読者の皆さんは、「ADAS」(運転支援)と「AD」(自動運転)の違いをよくご存じだろう。
運転の主体は人間にあるけど、それをシステムがサポートしてくれるのがADAS運転支援機能。一方、AD自動運転機能は、運転自体をシステムが代行してくれる。つまりドライバーはハンドルに触れなくてもドライブが可能となる。例の「レベル」で言えば、レベル0から2がADAS運転支援機能で、レベル3から5がAD自動運転機能だ。
今、自動車メーカー各社から販売されている車両に搭載されているシステムは、基本的にはレベル2まで。ただし、なかには限りなくレベル3(つまり自動運転)に近いシステムを搭載したレベル2モデルもある。
世界で初めてレベル3の車両が販売されたのは2021年3月4日で、それはホンダの「レジェンド」だった。この先進機能システム「Honda SENSING Elite」を搭載したレジェンドは、公道使用可能なレベル3モデルとして100第限定で販売されたのだが、このモデルが搭載する「トラフィックジャム・パイロット(渋滞運転機能)」をオンにすれば、高速道路の渋滞中にドライバーはDVDを見ることができる! と話題になった。
ただし、狭山工場(埼玉県)の閉鎖に伴い、残念ながらレジェンドは2021年末で生産終了となっている。
2021年3月にはホンダが世界初となるレベル3自動運転システム「Honda SENSING Elite(ホンダ センシング エリート)」を搭載したレジェンドを100台限定で発売。高速道路渋滞時など一定の条件下で、システムがドライバーに代わって運転操作を行うことが可能となった
また、昨年12月にはメルセデス・ベンツが、「レベル3での走行をドイツ政府から承認された」との報道が世界を駆け巡った。ただしその運用は限定的で、「ドイツ国内のアウトバーンにおいて、最高時速37マイル(時速約60km)までで使用可能」というもの。
とはいえ、これがハンズフリーで公道を走れるモデルの突破口となり、今後その普及に勢いがつく可能性は高い。
自動運転といえばテスラ社が想起されるが、同社においては現在まだレベル3以上のソフトを販売していない。「オートパイロット」や、「FSD」(Full Self-Driving / 完全自動運転)と呼ばれるソフトをオプションとして販売しているが、それらの機能はADAS、つまりレベル0から2までの運転支援システムだ。
メルセデス・ベンツが開発したレベル3の自動運転システム「ドライブパイロット」が、世界初の国際的に有効なシステム認証を取得したことがヨーロッパで大きなニュースとなった。2022年前半には、DRIVE PILOTを搭載したSクラスが発売される予定という
イーロン・マスク氏は自身のツイッターで、希望的情報を流して世を攪乱する傾向があるが、同社のAD、つまりレベル3以上の自動運転システム搭載モデルがいつデビューするかは、現時点では不明だ。ただ、マスク氏のツイッターに関していえば、「2050年に火星へ100万人を入植させる」よりも「レベル3モデルの販売は近い」のほうが、はるかに信憑性は高い。
また、日本政府においても「2025年をめどに高速道路を走行する乗用車でレベル3よりさらに高度なレベル4を実現させる」という目標を掲げている。
事故を起こした時の責任は?
こうした状況のなかでは、AD(自動運転)に関する法整備を急ぐ必要がある。事故が発生した際、責任をとるのはドライバーなのかシステムなのか、その明確な法的基準がまだ十分ではないのだ。
レベル3においては、「ながら運転」をしていてもドライバーは責任を問われないとする改正道路交通法(2020年6月)が施行されたが、レベル4以上に関しては未整備のまま。ドイツでは2021年7月、レベル4に関する法改正がすでに施行されている。
ちなみにADAS(運転支援)においては運転操作の主体は完全に人間であり、事故発生時の全責任はドライバー自身がとることになる。
ADASシステムの各社メーカーにおける現状
トヨタでは、最新の高度運転支援技術「Toyota Teammate/Lexus Teammate」の新機能「Advanced Drive」を新型LSとMIRAIに搭載
話をADAS(運転支援)に戻そう。前出したレベルの話に基づけば、ADASのレベル「0」と「2」は以下の内容になる。
●レベル0
自動運転機能は一切なし。
●レベル1(運転支援)
以下の運転支援システムを搭載。
・「アダプティブ・クルーズ・コントロール機能」
(前方の走行車を追従)
・「レーン・キープ・コントロール機能」
(車線内走行の維持を支援)
●レベル2(部分的運転自動化)
日本の自動車メーカーにおけるADAS(運転支援)システムは、現在では主にレベル2(部分的運転自動化)が開発・販売されている。その機能の名称はそれぞれ違うが、その目的はほぼ同じだ。以下はホンダのADASシステムの機能例だ。
【ADAS(レベル2)の機能例】
○衝突軽減ブレーキ
○誤発進抑制機能
○歩行者事故低減ステアリング
○路外逸脱抑制機能
○車線維持支援システム
○標識認識機能
○後方誤発進抑制機能
○近距離衝突軽減ブレーキ
また、以下は国内8メーカーにおけるレベル2のADASシステム名。コマーシャルにおいてもこれらのシステム名が全面に押し出される傾向にある。
【トヨタ】 「Toyota Safety Sense(第2世代)」
「Lexus Safety System +A」
「Lexus Teammate Advanced Drive」
【日産】 「ProPILOT」
「ProPILOT2.0」
【三菱】 「e-Assist」
「MI-PILOT」
【ホンダ】 「Honda SENSING」
【マツダ】 「i-ACTIVSENSE」
「マツダ・コ・パイロット2.0」(2022年以降)
【SUBARU】 「アイサイトX」
自動ブレーキ搭載車は保険料が9%もお得?
さて、このコラムの主題のひとつはADASシステムを搭載したモデルを購入すると、「お得だ」という再確認にある。
昨年11月までは、経済産業省による自家用自動車を対象とした「サポカー補助金」という制度があった。これは満65歳以上の人がクルマを購入する際、対歩行者用の自動ブレーキや、ペダル踏み間違いによる急発進抑制装置などを搭載するクルマ(サポカー)であれば、国が車両代金の一部を支援するというものだった。しかし、現在この支援は終了している。
そして現在、私たちが活用できるのは「ASV割引」と呼ばれるもの。これは一定の条件を満たすASV(先進安全自動車)であれば、自動車保険が割引になるという保険会社によるサービス。継続的に支払う必要のある自動車保険において、割引率9%は大きい。
このASV割引の対象となる車両か否かは、衝突被害軽減ブレーキ「AEB」(Autonomous Emergency Braking)の機能が搭載されているかによる。そのため「自動ブレーキ割引」と呼ぶ保険会社もある。または「セーフティ・サポートカー割引」とも呼称されている。
この割引制度は2018年1月からスタートしており、AEB(衝突被害軽減ブレーキ)は、メーカー・オプションでもOK。以下がその基本要件だ。
・自家用普通乗用車、自家用小型乗用車、自家用軽四輪乗用車であること
・衝突被害軽減ブレーキ(AEB)が装備されていること
・自家用普通乗用車、自家用小型乗用車の場合、発売から約3年以内の型式であること
注意してほしいのは、自動ブレーキが付いていれば必ず割引を受けられるわけではない、ということ。自身の所有する車両がこの割引の対象になる型式なのかは、損害保険料率算出機構のサイト内にある「型式別料率クラス検索」で確認できる。このサービスを知らなかったという人は、ぜひ確認してほしい。
損害保険料率算出機構
自動車メーカーの技術革新によって、さほど遠くない未来においてレベル3(条件付き運転自動化)が普及し、レベル5(完全自動運転)が実現されるに違いない。その日が来るまで私たちドライバーは、ADAS(運転支援)システムの力を借りながら、より安全でヒトに優しいドライビングを心掛けたいものだ。
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みんなのコメント
自動運転でこんなもの国が作ってるようじゃ、日本の自動車産業もガラパゴス一直線、これはもうダメかもわからんね
メルセデスが一番進んでる。首都高をほぼ手放して走れるベンツは凄い。