1957年登場の第2世代のフィアット「500」は、今なお多くの人に愛されている1台である。そんな500を、現代の日本でも乗りこなせるようにカスタマイズしたモデルが登場した!
現代の日本で、そのまま“チンクエチェント”を乗るには無理がある?
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自動車史上「カワイイ」クルマのひとつとして、母国イタリアのみならず我が国を含め全世界で絶大な人気を誇るのが、1957年から1975年まで生産された、第2世代のフィアット500だ。
車名の500は、イタリア語なら「Cinquecento(チンクエチェント)」。略称の好きな日本では「チンク」などとも呼ばれ、ファンからはまるで愛玩動物のごとく溺愛されている。
でも、こんなにお洒落で可愛いチンクながら、苛烈なことで知られる日本の交通事情のもとでも実用的な乗りものでありうるのか……?その問いかけに対して、筆者は「ノー」と「イエス」のふたつの答えを用意している。
空冷直列2気筒OHVエンジンが、まだ479cc・13psという、か細いパワーに過ぎなかった初期モデルはもちろん、中期以降の499.5cc・18psであってもノーマルのままならば、現代の都市部の流れに追いつく、あるいは急こう配の坂道を軽快に走るのは、正直なところなかなかの冒険的行為となる。つまり実用車としては「ノー」である。
しかし、後継車フィアット126用の空冷2気筒594ccエンジンをコンバートした最終型の「500R」や、さらにイタリアではこれまでにも数多く販売されてきたチューニングキットを組みつけることによって、なんとか現代の日本国内の道路事情にも適したクルマになり得る。
そんな「イエス」の条件を満たしたチンクは、これまでにもスペシャルショップなどの手でいくつか創られてきているが、このほど現状における決定版ともいうべきモデルが誕生したようだ。
この夏に千葉・幕張メッセで開催されたクラシックカーのトレードショー「オートモビル・カウンシル2020」(2020年7月31日~8月2日、千葉県千葉市)にて遭遇したフィアット500 mCrt 595である。
フィアット500クラシケとは?
日本を代表するクラシックカーディーラー「ガレーヂ伊太利屋」ブースに展示されていた、この「フィアット500 mCrt 595」は、2000年に愛知県にオープンしたフィアット500のミュージアム「チンクエチェント博物館(Museo Cinquecento)」のプロデュースにより、イタリアの名匠たちの手で製作されたものである。
同館では、長らく歴代フィアット500とそのファミリーの保護・保存に取り組んできた。しかし、館内で所蔵・展示するだけでなく、このクルマを愛する人に所有してもらい、いつまでも生き生きと走らせてもらうこともチンクエチェントという文化遺産を守ることにつながる……、という考えのもとに、イタリアの500スペシャリストが手がけたリフレッシュ車両「フィアット500クラシケ」の輸入・販売をスタートさせたという。
フィアット500クラシケにはいくつかの種類がある。日常的に走行している車両でボディコンディションが比較的良い個体を選んで輸入する「ベース」。内外装パーツの多くを新品に交換し、エンジンやトランスミッション、足まわり、ブレーキなども、イタリアのフィアット/アバルト界では第一人者と称されるメカニック、アルド・グラッサーノ氏によって入念なメインテナンスが施された「スタンダード」。さらに、顧客のフルオーダーに基づいてボディ全体を取り外し、新たに板金塗装まで行う「フルレストア」の3種類が設定されている。
さらに「スタンダード」と「フルレストア」をベースに、往年のアバルトのお家芸的チューニングを現代に復活させた「mCrt 595」と「mCrt 650」が選択できるという。
“mCrt”とは、かつて「アバルト500/695アセットコルサ」を擁して日本国内のスーパー耐久選手権(通称S耐)にフル参戦(2013~15年シーズン)し、また「アバルト500R3T」とともに全日本ラリー選手権でも活躍した、チンクエチェント博物館のレーシングチーム「mCrt(Museo Cinquecento Racing Team)」に因んだ名称である。前出のグラッサーノ氏が開発・製作したチューニングキットを組み込んだのが、「mCrt 595」および「mCrt 650」なのだ。
ちなみにチンクエチェント博物館はこのレース活動を経て、イタリア・トリノのアバルト本部および「FCAヘリテージ(旧アバルト・クラシケ)」とも密接な関係を構築したという。
日本の交通事情にもOK!
mCrtのチューニングキットの中身は多岐にわたるもので、ピストン/シリンダーのボアアップキットや専用カムシャフト、専用バルブスプリング、デロルト社製の大径キャブレター、アバルトの有名な「レコルド・モンツァ」タイプのマフラーに「ABARTH」の文字が鋳込まれたアルミ製オイルパンなど、往年のアバルトさながらの内容を誇る。
さらに駆動系でも、トルクの増強に応じてファイナルギアを交換。例えば高速道路などでも周囲に引け目を感じることない、充分なスピードと安定感を得たそうだ。
チンクエチェント博物館の伊藤精朗代表曰く、1960年代に製作されたオリジナルの「フィアット・アバルト595/695」はピーキーなイメージもあるが、実際には実用性も充分に考慮されていたそうである。
また、往年のアバルトのエッセンスを現代に再現した2モデルの中でも、特に650ccの「mCrt 650」はトルクゆたかで非常に乗りやすいとのこと。一方「mCrt 595」はエンジンが良くまわり、ドライビングの純粋な楽しさでは、こちらがちょっとだけ勝るという。
そしてどちらも、日本の交通事情で実用に供することができる。つまり、この上なく「イエス」なチンクなのである。
もちろん希少な最初期モデルなど、特別なヒストリーのある個体については、ある種の文化財としてオリジナルスペックを保持しておくべきだろう。しかし、そうではない「フツーのチンク」ならば、こういったモディファイもあってよいのではないだろうか?
たとえ歴史的なクラシックカーであっても、ガンガン乗ってこそのクルマ!と思われる向きには、おススメのチンクなのだ。
ちなみにチンクエチェント博物館では、同じくイタリアで製作されるコンバートBEV(電気自動車)車両「フィアット500クラシケev」も取り扱っている。
旧き良きガソリンエンジンのチンク、あるいは当代最新のテクノロジーを盛り込んだ電動チンク。双方ともにご興味を持たれた方は、まずはチンクエチェント博物館の公式ウェブページを訪ねてみることをお勧めしておきたい。なお、EVヴァージョンは小川フミオ氏が先日試乗されたとのこと。そちらのインプレッションもいずれ公開されるそうだから、参考にしてほしい。
文・武田公実
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