歴史的モデルの流れを汲むフラッグシップスポーツ
2003年、フランクフルトモーターショーで発表されたメルセデス・ベンツ「SLRマクラーレン」はそのネーミングどおり、モータ-スポーツの最高峰であるF1でジョイントしたメルセデス・ベンツとマクラーレンが共同開発した最高級のスーパーカーである。メルセデス・ベンツ伝説のレーシングスポーツカー「300SLR」の系譜を受け継ぐ最高級スーパーカーとして発表された衝撃は凄まじいものだった。
「F1」はほんの一角! スーパーカーも作れば医療からエネルギー関連まで手がける「マクラーレン」とは
つまり1955年に活躍した伝説のメルセデス・ベンツ300SLRが蘇り、しかもマクラーレンの名まで添えられていたのだ。今回はこの両社のジョイント開発経緯や話題となった主な装備や機能にスポットを当て紹介しよう。
伝説のメルセデス・ベンツ300SLR(1955年)
まずはSLRマクラーレンの原点ともいえる、1955年登場のメルセデス・ベンツ300SLRについて振り返ってみたい。車名の300は3Lエンジンを差し、SLRはドイツ語の「Sport Leicht Rennwagen(スポーツ軽量レーシングカー)」を意味。シャーシは鋼管スペースフレームを採用していた。
1954年のメルセデス・ベンツのスポーツカーと言えば、ガルウイングドアや世界初のガソリン直噴エンジンを搭載し240PSを誇り、先進のメカニズムを満載した市販車「300SL」が有名だが、当時F1で活躍していたW196(ボディはオープンホイールとエアロダイナミックなストリームライナーの2タイプ)をベースに1955年にもう1種スポーツカー・エディションが同時に造られた。
コードは「W196S」、通称「300SLR」。エンジンのみスポーツカー・チャンピオンシップのレギュレーションに合わせて3L、310PSにチューン。この300SLRのデビューは1955年のイタリアのミレ・ミリアで、スターリング・モスとジェンキンソンのコンビが優勝したのは有名だ(No.722はスタート時間の午前7時22分)。特にル・マンタイプは大きな特徴を持っていた。
それはコーナー入り口で制動をかける時、リアの大型エア・フラップが持ち上がり、高速サーキットでの厳しいブレーキングを助ける機構だ。そのエアブレーキ・フラップを使う時のシーンは実にダイナミックで、ル・マンの観衆を大いに沸かせた。
メルセデス・ベンツとマクラーレン
マクラーレンについては、もはや説明の多くは要さないだろう。1963年に「ブルース・マクラーレン」によって設立されたイギリスのレーシングチーム。F1には1966年から参戦し続けている名門だ。特に1970年6月2日、グッドウッドサーキットで新車「M8D」をテストドライブしていたチームのボス、ブルース・マクラーレンがマシントラブルでクラシュし死亡したが、チームの運営はテディ・メイヤーに引き継がれ、F1、F2、インディ500、Can-Amなどに参戦し、目覚ましい活躍をした。
1974年にマールボロと契約し、以後「マールボロ・カラー=マクラーレン」の関係は長期にわたり続いた。1981年には、ジョン・バーナードが設計したカーボンファイバー製モノコックを採用した初のF1マシン「MP4/1」を開発。ワトソンがイギリスGPで優勝するが、一方でこのカーボンファイバー製モノコックボディは、他のチームメイトがレースでクラシュを起こしてもドライバーは無傷で生還し、その安全性を証明した。
1994年、MP4/9に前年のフォード・コスワースからワークスのプジョーエンジンに乗せ換えて参戦するが、度々のエンジントラブルでリタイア。これに業を煮やしたマクラーレンチームは複数年契約だったプジョーとの契約をわずか1年で破棄することに決め、翌年の1995年にはイルモア(イギリスのF1用エンジンビルダー)が開発するメルセデスエンジンに変更する事をシーズン終了前に発表した。
すでにメルセデス・ベンツは1990年代初めにはこのイルモアに資本参加し、インディカーやF1に復帰。1993年にイルモアエンジンを「Concept by Mercedes-Benz」としてこの年から同じF1へ参加したスポーツカーレースのパートナー、ザウバーに提供した。翌1994年から正式にF1への復帰を宣言し、ザウバーにメルセデス・ベンツのバッジを付けたエンジンを供給。そして先述のとおり、マクラーレンの意向を受けて1995年にザウバーからマクラーレンに供給先を変更した。
マクラーレンは1997年からスポンサーをマールボロからウエストに変更し、同社のタバコパッケージをもじってマシンのカラーをシルバーに変更。以後、メルセデスエンジンを搭載したマクラーレンがシルバーアローと呼ばれた。メルセデス・ベンツは2009年にはフォース・インディア(レーシングコンストラクター)、ブラウンGP(イギリスのレーシングチーム)にもエンジンを供給した。
ダイムラーはマクラーレン・グループの株式を40%取得していたので、マクラーレンを完全回収してメルセデス・ベンツ単独でF1参加するのではと噂されたが、2009年11月16日にブラウンGPの株式をアブダビ政府系の投資会社アーバーインベストメントと共に75.1%をダイムラーが取得し2010年のF1からメルセデスGPで参戦するとした。
同時に2011年までにマクラーレン・グループ株をすべてマクラーレン・グループに売却し、エンジン供給は2015年まで延長すると発表。しかし、マクラーレンは1年早い2014年をもって20年に亘るメルセデス・ベンツとの協力関係を終了した。
メルセデス・ベンツ「SLRマクラーレン」の登場
2003年のフランクフルトモーターショーでメルセデス・ベンツは、1995年以来F1でパートナーを組むマクラーレン・グループと共同開発したフラッグシップスポーツカー、SLRマクラーレンを発表する。このモデルはメルセデス・ベンツが1955年のレースシーンを席巻した300SLRに由来しており、上方へ跳ね上がるように開く「スイングウイングドア」やF1のノーズコーンを連想させるフロントまわりのディテールなどが特徴。
イギリスのマクラーレン専門工場であるマクラーレン・テクノロジーセンターでロボットは要さずにハンドメイドで生産され、塗装さえ人間が受け持つほど特別なモデルとして製造された。
その施設はロンドンから南西40km、サリー州ウオキングの景観保存地区に位置する。マクラーレン・グループの7社が同じ敷地に集結し、2万平方メートルで全3階(地下1階、地上2階)、高さ10mの建物はアンスラサイトグレーと白を基調にして超モダン。1000人あまりのスタッフがハイテク・オフィス、研究所、ワークショップで働いている。これこそメルセデス・ベンツSLRとチーム・マクラーレン・メルセデス・F1レースカーの聖地と言える。
メルセデス・ベンツSLRマクラーレンのボディバリエーションは多彩で6種類。マクラーレンのF1技術をそのまま転用した軽量高剛性のカーボンファイバー製モノコックボディを採用し、エンジンはAMGがこの車のためだけに開発した最高出力626PSのV型8気筒5.4Lスーパーチャジャー付きだ。
エンジン始動はセレクターレバー頭部のボタンで行なう。メルセデス・ベンツ専用の電子制御5速ATを介して後輪駆動し、最高速は334km/hに達する(クーペモデル)。一方、その速さに見合った制動力を得るために、カーボンファイバーセラミック製の超大径ディスクブレーキを採用したほか、120km/h以上からのブレーキング時に自動的にトランク部のウイングが起き上がり、空気抵抗でスピードを落とす「エアブレーキ」を標準装備している。
このようなレーシングカーの走行性能を誇る一方で、SLRマクラーレンはメルセデス・ベンツの高品質、快適性も全く犠牲にしていない。インテリア装備はボディバリエーションで異なるが、キャビンは2座シートが用意され、コックピットの仕立てはSLの流れを汲み、シンプルで上質だ。
カーボンファイバー製フルバケットシートはセミアニリンレザー&アルカンターラでレーシーな雰囲気にまとめつつ、パドルシフトを備える本革スエードスポーツステアリングや赤いシートベルトなどがスポーツマインドを駆り立てる。
最新のレース技術を最高のロードカーに余すことなく投影したこのメルセデス・ベンツSLRマクラーレンには、その伝説が確かに継承されている。尚、日本では2002~2013年の超大型高級車・マイバッハ同様、各ディーラーではなく、メルセデス・ベンツ日本がお客様に直接販売とサービスサポートを担当していたと記憶している。
6種類のボディバリエーション
【SLRマクラーレン・クーペ】SOHC V型8気筒5.4Lスーパーチャジャー付き、626PS/79.5kg.m。電子制御5速AT、駆動方式はFR。0-100km/hは3.8秒。価格は5985万円。カラーはシルバーとブラックの2色のみでそれ以外はスペシャルオーダー。日本で正規輸入された台数は22台と言われている。全長4656mm、全幅1908mm、全高1261mm、ホイルベース2700mm、車両重量1768kg、タイヤサイズ前245/40R18・後295/35R18。
【SLRマクラーレン722エディション】2006年パリサロンで高性能バージョンとして発表。722は1955年ミレ・ミリアでスターリング・モスが300SLRで優勝した時のカーナンバーでスタート時間の午前7時22分を表す。エンジンフ-ドサイドにこの722のエンブレムが施される。世界限定150台の販売で、専用のスポーツサスペンションやカーボンエアロパーツを装備。セミアニリンレザー&アルカンターラのカーボンファイバー製フルバケットシート等インテリアも上質でレーシー。価格は6300万円。エンジンはSOHC V型8気筒5.4Lスーパーチャジャー付き、650PS/83.6kg.mとなり、0-100km/hは3.6秒、最高速度は337km/hと速くなった。
【SLRマクラーレン・ロードスター】2007年5月発表のSLRマクラーレンのオープンモデル。性能はSLRマクラーレンクーペモデルとほぼ同じ。ソフトトップの開閉はセミオートマチック機構を採用し、フロントウインドシールド上部のロックを解除し、センターコンソールのスイッチを操作すれば、約10秒で開閉が可能。また、ボディ剛性確保と横転時の安全確保の為、Aピラーを補強し、シート後部にセーフティロールケージを装備。その後方には、オープン時の風の巻き込みを防ぎ乗員の快適性を保つドラフトストップを新たに装着。価格は7000万円でクーペモデルより、約1000万円高。
【SLRマクラーレン722 Sロードスター】2009年に発表した722のロードスターバージョン。エンジンパワー、加速性能、最高速度もほぼ同一。世界限定150台の販売で、日本では2台販売されたと言われている。価格は7300万円。
【SLRマクラーレン722GT】722をベースとしたワンメイクレース用モデル。メルセデス・ベンツ認定の基にRay Mallock社(イギリスのモータースポーツエンジン製作会社)より21台製作された。
【SLRスターリング・モス】2009年、北米国際オートショーで発表された75台の限定車で、同年の6月~10月にデリバリー。日本では2台のみ販売され、1億1000万円の価格が付けられた。伝説の名ドライバー「スターリング・モス」の名を冠し、サイン入り。購入資格はSLRのオーナ-に限定。往年のレーシングカーである300SLR(W196S)をデザインイメージし、ルーフとフロントウインドシールドを無くし約200kgの軽量を実現したスピードスターのスタイル。このモデルでメルセデス・ベンツとマクラーレンによる共同製作は終了した。
2009年5月をもって生産を終了し、同時に市販車に関する両社の共同事業契約も終了となったため、その直系の後継車は存在しない。ちなみにその後、2010年6月に初のAMG専用モデルとして「SLS AMG」がメルセデス・ベンツより発表されたが、このSLS AMGのモチーフはF1や300SLRではなく、1954年の市販車・300SLである。
申込み最短3時間後に最大20社から
愛車の査定結果をWebでお知らせ!
申込み最短3時間後に最大20社から
愛車の査定結果をWebでお知らせ!
愛車管理はマイカーページで!
登録してお得なクーポンを獲得しよう
不要or必要? やっちゃったらおじさん認定!? 「古い」「ダサい」といわれがちな [時代遅れ]な運転法
ついにその瞬間がやってきた!!!!! シビックベースの70年代風GTカー[ミツオカM55]が限定100台800万円で販売!!!!! 即売必至か?
マジか…? 新制度導入で「車検」通らないかも!? 10月から始まった“新たな車検”何が変わった? 覚えておきたい「OBD検査」の正体とは
ついにトヨタ「新型セリカ」復活!? 次期8代目登場か… 中嶋副社長「セリカ、やっちゃいます。」宣言! 会長も後押し!? ラリージャパンで語られたコトとは
給油所で「レギュラー“なみなみ”で!」って言ったら店員にバカにされました。私が悪いんですか?怒りの投稿に回答殺到!?「なにそれ」「普通は通じない」の声も…悪いのは結局誰なのか
運営ブチギレ!? 一般車が「検問突破」何があった? 国際イベントでありえない"蛮行"発生! ラリージャパン3日目の出来事とは
給油所で「レギュラー“なみなみ”で!」って言ったら店員にバカにされました。私が悪いんですか?怒りの投稿に回答殺到!?「なにそれ」「普通は通じない」の声も…悪いのは結局誰なのか
「タイヤの摩耗が早い」「買い取り価格は期待できない」EVにまつわる巷のウワサ6つの真実
ホンダ新型「プレリュード」まもなく登場? 22年ぶり復活で噂の「MT」搭載は? 「2ドアクーペ」に反響多数!海外では“テストカー”目撃も!? 予想価格はいくら?
「ん、ここ工事してなくない?」 高速道路の車線規制“ムダに長い”場合がある理由とは?
申込み最短3時間後に最大20社から
愛車の査定結果をWebでお知らせ!
申込み最短3時間後に最大20社から
愛車の査定結果をWebでお知らせ!
店舗に行かずにお家でカンタン新車見積り。まずはネットで地域や希望車種を入力!
みんなのコメント