この記事をまとめると
■国産自動車メーカーのうちでホンダだけが国内他社と提携関係を結んでいない
かつてのホンダは凄かった! 踏めば脳天まで痺れる「エンジンのホンダ」を感じさせる名車5選
■いすゞ・GMとは一部の分野でのみ提携
■競合他社を見ながらの開発や経営ではなく、なさなければならないことを忘れない経営だ
創業以来ホンダは独自路線を歩んでいる
国内に乗用車メーカーは8社あり、このうちトヨタと提携関係を結ぶのは、ダイハツが100%子会社であるほかにも、スバル、マツダ、スズキが挙げられる。日産自動車と三菱自動車工業がもうひとつの柱として提携関係を結んでいる。
残るはホンダで、国内の乗用車メーカーとの提携関係はない。ただし、トラック/バスのメーカーであるいすゞとは、燃料電池の取り扱いで将来を模索する動きがある。また、米国のゼネラルモーターズ(GM)と提携関係にあり、米国市場におけるEV用のリチウムイオンバッテリー調達や自動運転モビリティサービス事業で協力している。
過去には、英国のブリティッシュ・レイランドと提携したり、米国クライスラーのジープ・チェロキーを国内販売していたりしたこともあるが、創業以来ホンダは独自路線を歩む印象が強い。
ホンダは、1946年に本田宗一郎が本田技術研究所を設立したことにはじまり、2年後に現在の本田技研工業を名乗るようになった。
本田宗一郎が、旧陸軍の放出エンジンを自転車に取り付け、のちに独自開発による2ストロークエンジンを開発して二輪メーカーとして歩みはじめたのは有名だ。二輪車販売の仕方も、既存の自転車店網を活用するなど独創的な姿勢で事業を拡大してきた。米国への二輪車の販売進出や、米国の現地四輪工場建設なども動きは早かった。
本田宗一郎は1966年に新入社員へ向けて次のように語っている。
「うちは、うちの独自の道をいくんだということを、はっきりと宣言する。企業の合弁が盛んなようだが、それはうちとは一切関係ない」。
5代目の社長を務めた吉野浩行も、「経済原理に基づく競争が続く限り、自分の身は自分で守るという努力に終わりはない」と述べている。当時、1990年代後半は、日産とルノーの提携やダイムラー・ベンツとクライスラーの提携など、規模の拡大が世界的に進められた時代だった。
対処療法をよしせず根本を見極めるホンダの経営
競合他社を見ながらの開発や経営でない点は、四輪事業をはじめるきっかけとなった軽自動車のT360やS360の開発においても、トラックやスポーツカーにまず取り組み、いずれもDOHCエンジンを搭載するというように、暮らしを支え、なおかつ楽しみを忘れず、技術では高性能を目指すホンダの姿は、以来、貫かれているとみえる。
1990年代前半にミニバンを国内へ導入し、爆発的な人気を呼んだのもホンダの独創だ。背景に、商用車を持たず、セダンを主軸とした生産工場という規模の課題があったとはいえ、そのなかで何ができるかを自力で考えた末の商品計画であった。
技術では、二輪時代に英国のマン島TTレースに参戦し優勝、四輪では1960年代にF1に参戦し、ここでも優勝し、以後、昨年のチャンピオン獲得を含め、中断はあっても折に触れ高性能への挑戦を続けている。米国では、1969年からアルコール燃料を使うインディカーへエンジン供給を行い、そのなかで、佐藤琢磨によるインディ500での2度の勝利という栄冠をもたらしている。
エンジンの活用について、いまごろバイオ燃料などという声が出ているが、ホンダは永年にわたってアルコール燃料でのレースに挑戦してきた。そのうえで、現在の三部敏宏社長は「エンジンをやってきたからこそ、10~20年後の脱二酸化炭素へ向けエンジンという選択肢はない」として、2040年にEVへの転換を宣言したのだ。
ホンダが、1970年代の排出ガス規制にあわせ、CVCC(複合渦流調整燃焼方式)で世界初の排ガス浄化を達成したのも、触媒など後処理装置に頼らず、本田宗一郎が根本からの解決を求めたことが、排出ガス浄化による大気汚染防止の道を拓いたのだ。
提携を拒むというより、常に根本(原理原則)を見極め、二輪・四輪・汎用のメーカーとして何をなさなければならないかを忘れない経営が、独自路線を歩ませるのであって、競合他社や、行政による規制や制度を見ながら進める対処療法的な経営とは、そこが異なるのである。
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