かつては日産にもアッパーミドルクラスのステーションワゴンが存在した。それがステージアだ。初代が直6、2代目がV6を搭載したハイパワーワゴンだったが、なぜ消えたのかを探ってみた。
文/永田恵一、写真/日産
国産ハイパワーエステートのさきがけ! 2代続いた「ステージア」はなぜなくなってしまったのか!?
■レガシィツーリングワゴンの牙城は崩せなかったが……
1990年代中盤から2000年代前半にかけて健闘したステーションワゴンがステージアだった
日本で販売される日本車においてステーションワゴンはモデルが激減し、現在まずまず売れているのはカローラツーリング&フィールダー、レヴォーグ、レガシィアウトバック(正確にはクロスオーバーモデルになるが)くらいという寂しい状況である。
しかし、バブル期だった平成はじめから10年少々、日本の自動車業界でステーションワゴンはブームとなっており、特に初代から4代目モデルまでのレガシィツーリングワゴンはその牽引車としてステーションワゴンの代名詞となるほどの王者に君臨していた。
だが、そういった状況下でもレガシィツーリングワゴンの牙城を崩すまで行かなくとも、アコードワゴンなど健闘を見せたモデルもいくつかあり、その1台が日産のラージステーションワゴンであるステージアだった。ここではステージアが歩んだ軌跡を振り返ってみた。
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■1996年登場の初代ステージアは事実上の「R33スカイラインワゴン」
初代ステージアはR33スカイラインと同様、直6エンジンを中心としたラインナップとなっていた
ステージアのポジションは、かつては上級小型車というジャンルに属していたスカイラインやローレルのステーションワゴンである。なお、スカイラインには1986年登場の7代目モデルまでステーションワゴンがあったが、スカイラインらしいスポーツ性の向上に注力した1989年登場の8代目モデルでステーションワゴンは姿を消しており、その復活ともいえた。
初代ステージアのベースとなったのはともに1993年登場の7代目ローレルと9代目スカイラインだった。初代ステージアのサスペンションはリアがマルチリンクというのは2WD、4WD共通だったが、フロントサスペンションは2WDがストラット、4WDはマルチリンクと、その意味では2WDはローレル、4WDはスカイラインに近いところがあった。
初代ステージアは車格も反映し、「最上級のワゴンクォリティと高性能な走りを両立したプレステージツーリングワゴン」というコンセプトが掲げられていた。そのため前者に関しては、ラゲッジルームにレバーを引くとリアシートを倒せる機能、荷物を一杯に積んだ際にラゲッジルームとキャビンを仕切るなどに使えるパーティションネット、フック類や電源ソケットを装備するなど、絶対的な広さに加えて 使い勝手も良好だった。
また、後者に関しても、ボディ剛性では不利なステーションワゴンでありながら高い剛性を持つボディを基盤に、ラゲッジルームを広くするためコンパクト化された専用のリアサスペンションを持ち、セダン並みという高い静粛性も実現していた。
初代ステージア前期型の最強グレードRS-FOURは直6の2.5LターボのRB25DETを搭載。ドアはサッシュレスタイプとなっていた
初代ステージアに搭載されたエンジンはすべて直6で、初期モデルは2LSOHC、2.5LDOHC、2.5LDOHCターボの3つ、トランスミッションはATのみ。2.5L系には発進時の前後駆動力配分を50:50として雪道など滑りやすい道でのトラクションを高めるシンクロモード付きアテーサET-Sという4WDも設定されていた。
初代ステージアはよくまとまったモデルであったが、2.5Lターボは初期モデルで235psとスペックだけでなく走行時のパンチにも欠けるという点が不評だった。
1997年10月に登場したステージア260RS。R33スカイラインGT-Rと同じパワートレーンを採用していた
その対応もあり、1997年10月にはRB26DETT+アテーサET-Sというパワートレーン、ブレンボブレーキ、4WSのスーパーハイキャスといった要するに第二世代のスカイラインGT-Rの機能部分を初代ステージアに移植し、オーテックジャパンが生産などを担当した「260RS」を追加(価格は当時のR33型スカイラインGT-Rを基準にすると安くも感じる440万円)。
なお、260RSが加わるちょっと前となる1997年8月には一部改良で2Lと2.5LのNAは、可変吸気システムと可変バルブタイミング機構を加えたネオストレート6に移行した。
1998年8月のマイチェンでフロントマスクを変更したほか、パワートレーンも直6エンジンがネオストレート6に換装されている
そして1998年8月のマイナーチェンジでは問題だった2.5Lターボもネオストレート6化により、スペックも車格や排気量にふさわしい280psにパワーアップし、2.5Lターボの4WDにはMTも設定された。
初代ステージアは約5年間の販売期間で約13万3000台(月平均約2200台)を販売し、それなりの成功を収めた。その背景には当時の日産車には全体的にパッとしたモデルがなく、それは当時の一般的なクルマ好きが買える上限に近い250万円から300万円の7代目ローレルや9代目スカイラインも同様だった。
そのなかでは初代ステージアはまとまりがよく、魅力もそれなりに備えていたことも大きかったのだろう。また初代ステージアの成功には王者レガシィツーリングワゴンよりひとつ上の車格で、ステージアも属するラージクラスのクラウンやマークIIのステーションワゴンが古いまま継続生産されていたことも幸いした面もあった。
■2001年登場の2代目ステージアはエンジンをV6系にスイッチ
2001年登場の2代目ステージア。こちらはV35スカイラインをベースとするエステート
2代目ステージアも同年に登場した11代目V35スカイラインのステーションワゴンという成り立ちで、その点は初代モデルと同様だ。
しかし、11代目スカイラインや2代目ステージアが採用したV6エンジンをフロントミドに搭載した新世代のFMプラットフォームは、V6エンジンの搭載による重量配分の適正化、Cd値の低減やフロントゼロリフトといった空力性能の追求、大径タイヤの採用による前後方向でのタイヤの設置面積の拡大といった新技術を投入。
2代目ステージアのベースシャシー。FMプラットフォームは汎用性の高さも大きな特徴だったという
さらにFMプラットフォームは「いいクルマをリーズナブルに短期間で開発できる」という意味での汎用性の高さも大きな特徴で、FMプラットフォームからは2002年に5代目モデルとして復活したZ33フェアレディZや北米向けSUVのインフィニティFXなどが誕生した。
2代目ステージアでV6となったエンジンは初期モデルでは直噴となる2.5Lと3LのV6NA、新開発となる2.5LV6ターボを搭載。
2代目ステージアAR-X。AR-Xは「オールロード・クロスオーバー・ビークル」の意
また、2代目ステージアは標準系に加え最低地上高を180mmに上げ、樹脂製のオーバーフェンダー、前後バンパー下部やサイドシルのプロテクターを加え、今でいうクロスオーバーワゴンとしたAR-Xを設定したことでも注目された。
2代目ステージアは2004年8月、3LNAと2.5Lターボを3.5LV6に統合するなどのマイナーチェンジを行い、オーテックジャパンが手がけたモデルで一時期は3.5LV6+MTというステージアとしてはマニアックなパワートレーンを搭載するなどしたアクシス系も設定。
しかし、残念ながら2代目ステージアは2007年に生産を終了した。なお、6年近いモデルサイクルだった2代目ステージアの販売際数は約5万8000台だった。
■V36スカイラインベース“幻”の3代目ステージアが見たかった……
280ps/41.5kgmと当時の国産2.5Lターボ最強のスペックを誇っていたV6、2.5LDOHCターボのVQ25DET
ステージアが2代目モデルで姿を消したのは2000年代に入ってステーションワゴン、特にラージクラスに対する需要の減少によるものと言わざるを得ない。それは同時期にトヨタもステージアと車格の近いクラウンエステートとマークIIブリットというラージステーションワゴンを絶版としたこともあり、やむを得なかったのだろう。
もちろん、ステージアのベースとなったスカイラインが2006年にV36型12代目モデルに移行したのを見ると、V36型ベースの3代目ステージアを見てみたかったのも事実ではある。
それでも直接的なステージアの後継車ではないにせよ、2009年にスカイラインの中に車名どおりのクロスオーバーとなるスカイラインクロスオーバーが加わったことは、ステージアやステージアユーザーにとっては救いだったのはないだろうか。
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みんなのコメント
消滅した原因は2代目のスタイリングが悪いからでしょ。いくらスカイラインベースといっても、250万を超えるモデルでインパネを共通する時点で手抜きだし情け無い。
結局は日産自身が首を絞めた。