ご存知カリフォルニア州といえば、自動車の街。生産地としてのそれはデトロイトに譲るが、消費地として永遠のタイトルホルダー、それがカリフォルニアでありロサンゼルス。ロサンゼルス空港に降りる際に、眼下のフリーウェイを、5~6車線幅のコンクリート路面の上を、無数のクルマが滑るように走っている様は、いつ見ても壮観だ。
そもそもロサンゼルスは、オレンジ・カウンティと合わせただけでも関東平野の約2/3ほどの広さで、広域都市圏として周辺で人口の多い3郡をさらに足すと約8.8万平方キロメートルと、北海道より大きな面積となる。経済規模だけを見ても、イタリア一国分に相当するといわれている。
2桁ナンバー物語 Vol.2 品川35のアルピナB8 4.6 リムジン(後編)
シボレー コルベット・スティングレイ|Chevrolet Corvette Stingray
F25やF35など戦闘機のキャノピーをヒントにしたデザインが特徴。エンジンのMR化により、着座位置は420mm前方に移動している。
地下鉄やUBERのようなサービスも台頭してきたとはいえ、いまだフリーウェイを行くクルマの大半は一人乗りで、2人以上乗車もしくはEVなら「カープール」といわれる優先車線を使う権利がある。それほどカリフォルニアで乗用車は生活必需品であり、市場として大きな規模と需要をもつばかりでなく、リベラルであるがゆえに使う側と売る側の責任という点でも、世界でもっとも厳しい排出ルールを伝統的に課してきた土地柄だ。ゆえにここ、カリフォルニアで行われるLAオートショーは年々、重要度を高めている。
シボレー コルベット・スティングレイ|Chevrolet Corvette Stingrayニューパワーは快楽と共犯関係を結べるかところがLAオートショーが、新しいEVの檜舞台であるかのような見方は、木を見て森を見ないに等しい。そのスターが必ずしもEVに限られないところが、カリフォルニアひいてはアメリカの自動車観の面白さでもある。
シボレー コルベット・スティングレイ|Chevrolet Corvette Stingray今回のショーで注目を集めた「オールド・スクール」代表はGMから、1953年の初代以来アメリカ伝統のスポーツカーとして君臨してきたシボレー・コルベットだ。8世代目にしてついにFRレイアウトからミッドシップ化された。実車は横から見ると、かなりキャブフォワード気味のプロポーションで、ケーニヒセグやパガーニらに通じるものがある。6.2リッター・495ps仕様のV8にデュアルクラッチ式8速ATを組み合わせた強大なパワーユニットの存在感を、そのまま語るかのような外観なのだ。しかも駆動方式は後輪駆動のみで、0-60マイル加速は2.8秒、それでいて本国での価格は6万ドルを切る5万9995ドル~と発表されている。ちなみに今回は電動トップを備えたコンバーチブルも発表されたが、いずれもプリ生産モデルとのことだった。
メルセデスAMG GLS 63 |Mercedes-AMG GLS 63メルセデスAMG GLS 63 |Mercedes-AMG GLS 63
メルセデス・ベンツのブースではメルセデスAMG GLS 63を展示。1952年開催のレース「カレラ・パナメリカーナ・メヒコ」で優勝した300SLをモチーフとした専用グリルを装着する。
昨今のスーパースポーツの定石として、とくに欧州車はハイパワーを効率よく使い切るために高度に制御されたAWD化は必然の流れだった。そこに「飼い慣らされないパワー」という選択肢をあえてコルベットが採ったことは、価格と同じぐらい注目に値する。
逆に、伝統のネーミングを電動化パワーによって復活させたのが、フォードのマスタング・マッハEだ。パワーユニットは永久磁石モーターで332ps・565Nmを発揮、駆動方式は後輪駆動もしくは4WDが用意される。さらに強力な「GT」そして「GTパフォーマンスパッケージ」も予定されており、前者は459ps・830Nmを備えるとフォードはアナウンスしている。ベースモデルとGTの仮想敵はそれぞれ、ポルシェ・マカンとマカンターボだ。
元祖マスタングは、そのスペシャリティ色の強いキャラクターゆえに並の実用車と分けて「ポニーカー」と呼ばれた。そのマスタングやマッハといった名看板が、現代の「ポニーカー」的存在となったSUVクロスオーバーに受け継がれることに違和感を覚えないでもない。逆にいえば、ポニーカー繋がりだけで元祖とは似ても似つかないが、スペシャリティとしてのキャラクターとマッスルな加速を備えたEVが、その名を使うことは正当かつ正統であるとフォードは判断したのだろう。
メルセデスAMG GLE 63 S 4MATIC+|Mercedes-AMG GLE 63 S 4MATIC+
エンジンとトランスミッションの間に電気モーターを配置しており、これを利用したEQブーストという新装備を搭載。加速時にエンジンをアシストする。
いってみれば、放埓なパワーやトルクがもたらす扱い易さというか、海外の自動車評論がよくdocile(甘やかしてくれるほどの従順さを備えている、という意味)と形容するクオリティが守られれば、内燃機関か電動か?は問わない訳ではないが、後からでいい。そんな土壌を感じさせる意味で、新しいコルベットとマスタングは象徴的だった。カリフォルニア州がEVを優遇するのは、何も清教徒的にクリーンな倫理観からではないことは、昔ながらのドーナッツ・ショップの隣に巨大チェーンのフィットネスジムが構える、そんなショッピングモールがあちこちにあることを見れば明らかだ。自由には大きな責任が伴うが、原則は自己責任。だからこそチート(インチキ)には厳しく、欧州の主導するCO2削減のような総量規制には馴染まない、それがアメリカ的なリベラルさなのだ。
メルセデスAMG GLE 63 S 4MATIC+|Mercedes-AMG GLE 63 S 4MATIC+元気さが目に付いたドイツブランドたち現行ルールの範囲内での伝統的なハイパワー礼賛という意味で、ドイツ車勢はフェス状態だった。メルセデス・ベンツのブースでは、メルセデスAMGがフルサイズSUVであるGLS63 4MATIC+と、同じく612psの48Vマイルドハイブリッドを積むGLE63Sを登場させた。両車ともAMG専用の外観として「パナメリカーナ」風のフロントグリルを備える辺りが、カリフォルニアの土地柄を意識した点だろうか。
BMW M8 グランクーペ ファーストエディション|BMW M8 Gran Coupe First Edition
コンセプトM8グランクーペの意匠を取り入れた発売記念車のBMW M8 グランクーペ ファーストエディション。イエローに光る「BMWアイコニックレーザーライト」を採用している。400台限定での発売。
BMWは625psのV8の4.4リッターツインターボを積むM8グランクーペのファーストエディション、さらにはカーボンルーフやMスポーツ独自のアドオン・パーツで武装したM2CSを発表。ちなみにBMWグループはミニもハイパフォーマンス攻勢で、MINIジョンクーパーワークス(JCW)GPの市販版を初公開した。オーバーフェンダーなどにカーボンを用いて後席を取り払った2シーターの軽量化仕様としつつ、ミニ史上最強となる306ps・450Nmの2リッター直4ターボを積むという。
BMW M2 CS |BMW M2 CS
BMWはサーキット走行も視野に入れたM2の CSを展示。欧州での価格は約9万5000ユーロで、日本で発売されれば約1150万円!
ミニは同時にMINIクーパーS E、つまり市販EVモデルも初公開したが、JCW GPよりエンターテインメント性で譲ってしまったことは否めなかった。逆にいえば、それだけEVがEVとして珍しがられるのではなくワン・オブ・ゼム、コモディティ化とはいわないが「数あるパワートレインのうちのひとつ」になりつつあるのだ。i3に比べ、32.6kWhのバッテリー容量は譲るものの、184ps・270Nmという出力面は優り、アメリカゆえに最大レンジはEPA基準で、走行モードによりつつも235~270kmと発表された。
ミニ クーパー S E|MINI MINI Cooper S E
ミニのクーパー S E。32.6kWhのバッテリーを搭載し、航続距離は235~275kmほど。バッテリー残量を判断してシステムがオンボードモニターに推奨充電スポットを表示する機能もある。
ミニ ジョンクーパーワークス GP|MINI John Cooper Works GP
「レーシングメタリック」というボディカラーの車両が展示されたミニ ジョンクーパーワークス GP。見る角度によってライトグレーから写真のブルーバイオレットへと変化する。
一方のアウディは、EVモデルの新たなボディ・バリエーションとしてe-tronスポーツバックという、SUV4ドア・クーペ風のモデルを目玉にもってきたものの、ここでもステージの上でより大きな注目を集めたのは、夏に欧州でワールドプレミア済みのRS6、そしてRS Q8だった。
アウディ e-tron スポーツバック|Audi e-tron Sportback
ドライブモードをSモードに選択し、アクセルをフルで踏み込むことによって最大8秒間モーターのパワーを引き上げるブーストモードを搭載。ブーストモード時は0-100km/h加速5.7秒。
600ps・800Nmを発揮する最新のV8の4リッターツインターボに48Vマイルドハイブリッドを組み合わせたパワートレインを、ハイエンドとアッパーミドルそれぞれに搭載するというレシピ自体は、メルセデスAMGと同じくだ。
アウディ e-tron スポーツバック|Audi e-tron Sportbacke-tronスポーツバックも、95kWhというバッテリー容量は市販モデルe-tronと同様ながら、446kmという最大航続レンジはつい先頃に発表されたe-tronの改良版と同じシステムによるものと予想される。
アウディ RS6 アバント|Audi RS 6 Avant
新世代のRSに共通するデザインコンセプトを採用した最初のモデル。「RSマトリックス」というLEDレーザーヘッドライトを装備。車両の施錠・開錠時に専用の流れるウインカーが作動する。
ドイツ勢でむしろ、EVに強くフォーカスした出展内容を展開したのはポルシェのみ。すでに発表済みのタイカン・ターボとターボSに続く追加モデルとして、タイカン4Sを公開した。「パフォーマンスバッテリー」と呼ばれるデフォルトのバッテリー容量は79.2kWhで、最大出力は530ps。オプションで「パフォーマンスバッテリープラス」を採ると、93.4kWh容量の571ps。いずれも0-100km/h加速は4秒となる。
ターボSがオーバーブースト時に最大761ps、ターボが680psながら、最大後続レンジでは4Sがもっとも長い463km(パフォーマンスバッテリープラス選択時)であることに鑑みれば、ツーリングモデル的な位置づけと考えられるだろう。
ポルシェ タイカン 4S|Porsche Tycan 4S
エントリーモデルではあるが、航続距離はグレード中最大。パフォーマンスバッテリーでは最大407km、パフォーマンスバッテリープラスでは最大463kmとなっている。
欧州メーカーのハイパフォーマンス志向は、面白いことにフィアットにまで及んだ。500シリーズのSUVである500Xの追加バリエーションとして、500Xスポーツがお目見えした。通常グレード比で13mmほど車高が低く、FSD(Frequency Selective Damping)という可変減衰力ショックアブソーバーを備えたほか、ステアリングも専用チューニングが施される。パワートレインは、FireFlyと呼ばれる150ps・270Nmの1.3リッター直4ターボに6速デュアルクラッチの組み合わせだ。
かくもパワフルなニューモデルが会場を彩った様子は、東京のそれとは異なるモーターショーの王道といえたが、カリフォルニアの自由奔放さに日本車はどうついていっているのか? 次回はその辺りを検証していこう。
文・南陽浩一 編集・iconic
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