フェラーリの新型クーペの「ローマ」に松本葉がイタリアはピエモンテ州のアルバで試乗した。Vol.1ではデザインなどについてリポートする。
ポルトフィーノとは別物
2019年、5台!ものニューモデルをデビューさせたフェラーリ。そのトリを飾ったのがローマである。発表は昨年11月、車名に合わせて首都でお披露目され注目が集まった。欧州でも発売前から熱い視線が注がれている。
カテゴリーで言えばGTカーに属するローマのエンジンユニットは、ポルトフィーノに搭載された3855cc V型8気筒ガソリンツインターボ、ボアxストロークは同一だ。ディメンションではローマが全長で7cm、全幅で3.6cm長く、広くなり、全高は1.7cm低くなっているものの、ホイールベースは変わらない。
当初はポルトフィーノのクーペ版という声もあったものの、蓋を開ければブランニュー。もっとも重要なトピックはボディシェル/シャシー・コンポーネンツの70%が新設計されたことだろう。4年連続でインターナショナル・エンジン・オブ・ザ・イヤーに輝いたV8は今回Euro 6Dに沿うようパワーには不利なGPF(ガソリン・パティキュレート・フィルター)が装着されたにもかかわらず、バルブリフト量を高めたカムシャフトなど新技術の導入によって、(かえって)ポルトフィーノより20ps増の620psを獲得した。
組み合わされるゲトラグ製トランスミッションは7段からSF90ストラダーレ譲りの8段DCT(デュアル・クラッチ・トランスミッション)になり、変速スピードがはやめられたという。ちなみに変速機については6kgの減量に成功、車両全体ではポルトフィーノより75kg軽い1472kg(乾燥重量)を実現した。同社自慢の電子制御装置、SSC(サイド・スリップ・コントロール)も6世代目に突入、さらなる洗練を受けている。新技術については枚挙にいとまがない。インフォテインメントを含むコクピットまわりも大きく変わった。
そう、ローマはまごうことなき新型車だ。しかし「フェラーリ」である。味付け、新技術の効用、乗り手との相性や好みなどの問題を別にすれば、性能、数値、装備の向上、進化は予想内と言えるのではないか。にもかかわらず、 アンヴェールされた段階でなぜここまで熱い視線を浴びたのだろう。
クルマとの暮らしを楽しんでもらう
その所以はスタイリングにあると思う。フェラーリはローマで、GTデザインの新たなページをめくった。電話で話を聴いた同社デザイン・チーフのフラヴィオ・マンツォーニは「(ページをめくったというより、)角を曲がったくらいに表現して欲しい」と、語り、モンツァSPとのファミリーフィーリングを強調した。
あの頃から、ストレートだった道はコーナーへと向かっていたのかもしれない。
1952年から跳ね馬のスタイリングを生み出してきたピニンファリーナによる最後のモデルは「458イタリア」。「F12」は“協同”で、「488」からはフェラーリのデザイン部門によるものとなった。
自動車製作はコストとスピードが要となり、技術の複雑化はスタイリングにおいても細かなモディファイを次々に強いてスピーディな解決を求める。効率を考えるとデザイン作業が社内で、文字通りエンジニアリングと、となり同士で進められることは時代の要請だったのだろう。
が、この距離の近さがフェラーリのスタイリングをどんどん“強く”した要因のひとつかもしれない。デザインは空力向上の使命に支配され、ボディを構成するラインは複雑化したものの、今回のローマでは別の“ルート”に切り替えたかのような印象を受ける。ピニンファリーナ時代のフェラーリではしばしばそのスタイルを形容するのに用いられたにもかかわらず、ここ数年忘れられていた「エレガントなフェラーリ」という表現がぴったりな、美しいたたずまいを与えられた。
クルマのコンセプトは“新・甘い生活”。ローマを舞台にした映画、1960年公開の『ドルチェ・ヴィータ』になぞらえたものだ。(映画のストーリーではなく)ファッションも含めてあの時代の街に漂った、甘く、優雅な空気を現代に再現したという。
「あくせくあくせく、実に慌ただしい今の時代に、乗り手にクルマとの暮らしを楽しんでもらうことを目的とした」とは、製品マーケティング部の責任者、エマニュエレ・カランドの弁。
このコンセプトを裏付けたのは同部主導の聞き取り調査だ。「明日のフェラリスト」(フェラーリ・ユーザーになり得る層のことを彼はこう表現した)のあいだでは、ひと眼見て豪華と分かる豪華さより、品格や優雅さが求められていることが判明したのだという。
ここから「タイムレス・エレガンス」「控えめなラグジュアリー」というキーワードが生み出されたそうだ。ちなみに興味深かったのは、この傾向を同社が5年以上前から掴んでいたこと。「人々の意識変化を感じ取り、GTの方向づけに繋がった」と述べた。
これを受けてデザイン部がイメージしたのは「250GT 2+2」や「250GTルッソ」。1960年代のベルリネッタ・グランツーリズモである。
もちろん、ノスタルジーに未来を求めたのでは“フェラーリ”とは言えない。同社のヘリテージに独特な意匠のテールランプを含め、現代風解釈が施されて、中身はもっともパワフル、外見はエレガントなGT(スペースは2+2ではなく+2と呼ばれる)が誕生した。同社が好む表現は「エレガンスな着衣を纏ったF1」。
“クリーンで始まり、ピュアで終わる”
ローマを陽光のもとで初めて見たのは9月はじめのことだった。ただしこの時の陽光は首都のローマに降り注ぐものではなく、ピエモンテ州はアルバという街の柔らかな日差し。ここで国際試乗会が開かれた。
割り当てられた車両のボディカラーはロッソ・ポルトフィーノ。大木の下で対面したとき、この赤が光と影の間でトーンを変える美しい姿に惹きつけられた。
個人的にはサイドシルエットがもっとも美しいと思う。素晴らしいプロポーションだ。タイヤの頂点に当たる部分からフロントへ、わずかに膨らみながら流れ落ちる線、やや後方に置かれたコクピットの頂点からリアに向かう線、どちらも非常にきれい。前者はフロントエンドをシャープに落としてノーズを長く見せ、前端を1961年のF1チャンピオン・マシンで知られる「シャクーノーズ」にし、後者は切り落とされた形状、つまりは「コーダトロンカ」によって断ち切られて、それぞれ収束している。
イタリアではモデル製作にクレイ(工業用粘土)ではなく、長くエポキシ樹脂が用いられた。くっつけることで造形する粘土より、削る樹脂が好まれたのは彫刻の歴史によるものだ。イタリア車は削ぎ落とすことでクリーンなカタチを生んだというが、ローマにこの伝統を想起した。派手なエアヴェントも不要な装飾も見当たらない。たとえばオプションでも殆どのオーナーがセレクトするというスクーデリア・フェラーリのバッジすら排除された。
マンツォーニは「クリーンで始まり、ピュアで終わる」と、詩的に表現したが、しかし削ぎ落とすだけで美が生まれるわけではないのは明らかだ。ここで強く意識されたのが光と影という。
たとえば電子制御式スポイラーはハイスピード時に自動的に跳ね上がり(角度は3段階)、最適なダウンフォースを発生するが、通常はリアのトランクリッドと一体化されている。目立つものを減らして、光と影によってボリューム感とエレガンスを演出、存在感を生み出した。
ちなみに最初、ローマのサイドボディに入るラインは2本と思った。リアフェンダーの膨らみ上に1本。うっすらドア手前まで引かれ、色の濃淡がライン下をふくよかに、上をシャープに見せる、もう1本はサイドスカートの上。これはリアタイヤ周辺にダイナミズムを与えている。
ところがマンツォーニに「あれは(ラインではなくて)サーフェスの起伏ですね」と、訂正を受けた。
「ドアも撫でてみてください。緩やかな膨らみや波が感じられると思います。あれがエレガンスを生み出していると自負しています」
彼が気に入っているのはボディと同色のグリルと横ラインのフルLEDライトを特徴とするフロントではないかと勝手に予想したが、ハズレ。引き締まったリアがお気に入りだそうだ。
文・松本葉 写真・フェラーリ
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みんなのコメント
新鮮なデザインなのに、一目でフェラーリと分かるオーラ、ロッソカラーが似合うその完成度には脱帽です。
スポーツ系ではなく、ラグジュアリー系に振ったモデルなんでしょ?