ポルシェの名を掲げた第1号車の誕生から2018年に70周年を迎えたポルシェは、レースとともに成長を続け、高級車ブランドビジネスでも大成功している。そのポルシェが現在、焦点化しているのが電動化。2025年までに世界新車販売台数の50%以上をプラグインハイブリッド(PHEV)車やEVにすると宣言しており、2019年には、初の量産ピュアEVのタイカンをローンチして、2020年に日本でも発売することをを正式にアナウンスしている。
そんなポルシェの最新PHEVを駆ってサーキットを走行する体験プログラム『Porsche E-Performance Nights in Sepang』に参加した。会場はマレーシアの首都、クアラルンプール郊外にあるセパン・インターナショナル・サーキット! かつてマレーシアGPとしてF1が行われていた国際的なサーキットで最新E-Performanceを存分に体験できるというエキサイティングな体験ツアーである。
「GTS」はポルシェ栄光の証──4ドアスポーツのパナメーラに初めて設定したGTSに試乗
クアラルンプールからセパン・インターナショナル・サーキットまでは、クルマで小1時間。現地のポリスバイクに先導されての特別送迎は、ハザードを点灯しながら隊列を組み、赤信号を緊急車両として通過していく“マレーシアスタイル”。やはり、都心部は激しい渋滞で、わずかにできた隙間をめがけて猛ダッシュと、一糸乱れぬ現地インストラクターによる隊列走行はお見事。大渋滞のなかで、煌びやかに夜を彩るパナメーラの横一直線のLEDテールライトが印象的だった。
それまでポツリポツリと降っていた雨が、サーキットへ近づくとともに次第にザーザー降りに。興奮はいつしか緊張となり、大雨のなか、そのままパナメーラターボS E-ハイブリッドのコクピットに身を投じることに。
走行モードはEV走行の「E-POWER」がデフォルトで、アクセルペダルを強く踏むと、シームレスな電気の加速に一瞬フワッと内蔵が浮くような感覚だ。ステアリングにある走行モードのダイアルセレクトを「SPORT PLUS」に選択すると、すぐさまエンジンが爆発し、けたたましいエグゾーストサウンドが響く。アクセルペダルを踏み込むと、身体がバックシートに叩きつけられる。爆発的なV8ツインターボと電気モーターのアシストによる加速ぶりを体感した瞬間だった。“史上最強のパナメーラ”と謳うターボS E ハイブリッドは、最高出力550psの4リッターV8ツインターボエンジンに、136psのモーターを組み合わせている。そのシステム総合出力は680ps! とにかく、速い。
先導する911ターボにも、追いつけそうなくらいの加速力。コーナーでのハンドリングは軽快。車重の重さをまるで感じない。何よりも驚いたのはドシャ降りの雨でもガンガン攻めていけるということ。AWDゆえに結構なハイペースでも不安なく、水しぶきを上げるシーンでも安定感は抜群だ。
サーキットにおいては「走る・曲がる・止まる」の動作一つ一つにPHEV化に伴うクセも感じられない。走行時にPTM(ポルシェ・トラクション・マネージメント)や安全装置でもあるPSM(ポルシェ・スタビリティ・マネージメント)など、さまざまな電子制御デバイスが“利いている”のだが、それに気づかないくらい自然なフィーリング。気づけば、すっかり緊張が吹き飛んでいたほど刺激的なひとときだった。
全開走行を2周した後、1周かけてドライバー&クルマをクールダウン。走行モードを「E-CHARGE」にすると積極的にエンジンの回転を上げ、回生ブレーキによって電気をチャージ。走行時に減っていたバッテリー残量が目で見てわかるほど、充電されていく様子が面白い。それだけエネルギー効率性が良いということだ。パナメーラは燃費性能のみならず、サルーンとしての快適性やスポーツカーとしての性能も全方位で大きく進化していることを確認した次第。
「どうだ、E-Performanceは? 最高にエキサイティングだろ! これがポルシェのスポーツカーだ」と自慢げなインストラクター。高揚感のある加速に、PHEV化による体重増を感じさせないクイックなハンドリング、そして身体の奥底に響く乾いたエグゾーストサウンドの記憶は今でも鮮明だ。
来年には、ポルシェ初のピュア電動車となるタイカンを送り出し、911のハイブリッド化も噂されている。「E-Performance」は環境性能をもちろんのこと、まずは乗って楽しいかどうか。その答えは間違いなく、「楽しい!」と断言できる。ポルシェのプラグインハイブリッドは、紛れもないスポーツカーであるという強い信念を、セパンサーキットで確認したのである。
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