2023年の全日本スーパーフォーミュラ選手権第6戦決勝レース(41周)が静岡県の富士スピードウェイで行われ、2番グリッドスタートのリアム・ローソン(TEAM MUGEN)がアンダーカットでポールシッターの牧野任祐(DOCOMO TEAM DANDELION RACING)をかわし、逆転でシーズン3勝目を飾った。初勝利の期待がかかった牧野は悔しい2位フィニッシュとなり、宮田莉朋(VANTELIN TEAM TOM'S)が5番手スタートからの追い上げで3位に入った。最後までピットストップを遅らせた平川亮(ITOCHU ENEX TEAM IMPUL)が終盤に怒涛のオーバーテイクで4位入賞、サーキットに詰めかけた2万人のモータースポーツファンが大いに沸くバトルを披露した。
気温30度超えも予想されていた決勝日の富士スピードウェイだが、予報に反して前日からの曇り空は変わらず、気温25度、路面温度31度というコンディションで41周の決勝レースがスタートした。フロントローの2台は順当なスタートを切り、3番グリッドの太田格之進(DOCOMO TEAM DANDELION RACING)はやや出遅れてしまう。
【正式結果】2023スーパーフォーミュラ第6戦富士 決勝レース
代わって、6番グリッドの山本尚貴(TCS NAKAJIMA RACING)がロケットスタートで3番手に浮上した。オープニングラップを終えて、トップは牧野、2番手にローソン、3番手に山本。以下、佐藤蓮(TCS NAKAJIMA RACING)、宮田、大津弘樹(TGM Grand Prix)というトップ6で、太田は7番手まで後退してしまった。
序盤は佐藤と宮田の4番手争いが白熱。2周目のTGRコーナーでサイドバイサイドのバトルになると、コカ・コーラコーナーで宮田がアウト側から豪快にオーバーテイク。しかし、翌周には佐藤がホームストレートで並びかけTGRコーナーで再度逆転する。4番手を取り戻した佐藤は、前を行くチームメイトの山本に対し徐々に近づいていくと、7周目のTGRコーナーで山本をとらえ、表彰台圏内の3番手に浮上した。
レースが10周を終了しタイヤ交換が可能になると、上位陣のなかで真っ先にピットインを行ったのは佐藤と宮田、太田の3人。その翌周にローソンがピットインし、佐藤の前でコースへ復帰する。ローソンのピットアウトを見て、アンダーカットを阻止すべく牧野がピットイン。チームも素早い作業で牧野をコースへ送り出し、ローソンより前でTGRコーナーへの進入に成功した。だが、すでにアウトラップを終えてタイヤが温まっているローソンが急接近。続くコカ・コーラコーナーで牧野をとらえ、ピットインを済ませたドライバーのなかでトップとなる。後退した牧野の背後には、最初にピットインを済ませた佐藤がつける展開となり、以下、宮田、太田、野尻智紀(TEAM MUGEN)、大津というオーダーだ。
ピットウインドウが開いて数周で多くのマシンがタイヤ交換を済ませ、ステイアウトしているのは13周を終えた時点で7台。『表の1位』と言われる暫定トップは山本で、その後ろには平川が着けていた。予選が振るわず20番グリッドからのスタートだった平川だが、オープニングラップで4ポジションアップすると、前方で起きた国本雄資(KCMG)と関口雄飛(ITOCHU ENEX TEAM IMPUL)のアクシデントを潜り抜けてさらに順位を上げる。平川は勢いそのままに、5周目のTGRコーナーで松下信治(B-Max Racing Team)をオーバーテイクし、6周目のダンロップコーナーでは小林可夢偉(ITOCHU ENEX TEAM IMPUL)のインに鋭く飛び込んで12番手までポジションアップに成功していた。前方のマシンが次々にピットインしていくことでクリアスペースでプッシュできた平川は、山本との差をじわじわと削り、13周目の時点で6秒ほどあったギャップは3.7秒まで縮まっていた。
24周を終えるところで山本が先にピットイン。大きなロスはなかったものの、タイヤ交換後のペースが速かったローソンの前に出ることはできず、牧野、佐藤、宮田、太田、野尻の先行も許し暫定11番手、裏の7番手で戦列復帰となった。
26周を終えて阪口晴南(P.MU/CERUMO・INGING)と小高一斗(KONDO RACING)がピットへ向かい、残るは平川のみ。ただすでに2番手までポジションを取り戻していたローソンとは20秒ほどしかギャップがなく、トップを守り切るのは難しい状況だ。30周を終えてようやく平川がピットイン。これでローソンが堂々のトップへと返り咲いた。その後方に牧野が続き、31周目のダンロップコーナーで佐藤をとらえた宮田が3番手。佐藤、太田、野尻、山本と続き、平川はその後方、8番手でのコース復帰となった。
この終盤、最も観客を沸かせたのは野尻と山本のSF王者同士によるバトルだ。早めにピットインしていた野尻に対してタイヤマージンを持っている山本が急接近。29周目には0.3秒差まで近づきテール・トゥ・ノーズに持ち込むが、野尻も要所を押さえて牽制。複数年の王者経験を持つ者同士のハイレベルな戦いは注目を集めた。勝負は32周目のコカ・コーラコーナーで決着。その前のTGRコーナーでクロスラインを採った山本が並びかけ、コカ・コーラコーナーで野尻を完全に抜き去り6番手に浮上した。
ただ、この2台が争っている間に1番タイヤがフレッシュな平川が接近。34周目に入るホームストレートで野尻をかわすと、さらに37周目にも同じような展開で山本を攻略。直後の38周目には、1分24秒593でファステストラップをマークしながら猛プッシュで追い上げを開始。40周目に入るストレートで太田をとらえて5番手に浮上すると、そのまま目の前にいた佐藤にも襲い掛かる。パナソニックコーナーで佐藤のインを突きコンパクトに回り込んだ平川は4番手に上がってファイナルラップへ突入。ただ佐藤もオーバーテイクシステムを使って加速するとホームストレートで再び4番手を奪取した。
後方で手に汗握るバトルが繰り広げられているなか、トップのローソンは牧野に対し5秒のマージンを築いて快走。41周を走り抜き、今季3度目のトップチェッカーを受けた。牧野は悔しい2位フィニッシュ。3位には予選結果をリカバーした宮田が入った。
決着がついたかに思われた4番手争いは最後にドラマが。まるで1周前の再現かのように最終コーナーで平川がもう一度佐藤をとらえて4番手に上がると、今度は佐藤の猛追を振り切ってチェッカー。20番グリッドスタートから驚異の16ポジションアップを果たし4位入賞となった。
2023年全日本スーパーフォーミュラ選手権、次戦となる第7戦は8月19~20日に栃木県のモビリティリゾートもてぎで開催される。
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