自宅ガレージとサーキットの移動も可能
text:Matt Saunders(マット・ソーンダース)
translation:Kenji Nakajima(中嶋健治)
名も知れない田舎道で蛍光色のサーキットマシンを走らせていると、その横に乗馬を楽しむ女性がいた。そのたおやかな仕草が、あまりにも対象的に感じられた。
気温はわずか5度。凍えるように寒い12月。シルバーストーン・サーキットはここから数kmのところにある。一般道の走行も許されたサーキットマシンの実力を引き出せそうな道は、この辺りにはなさそうだ。
鮮やかな黄色に塗られたラプチャーは、英国東部、ピーターバラを拠点にするレーシングカーを手掛けるスペシャリスト、ラディカル社が生み出したクルマ。先代のラディカルSR3 SLの後継モデルに当たる。
ラプチャーは英国だけでなく世界各地で公道走行が許されるように設計が施されている。一般道が走れるとはいっても、クルマが目指す場所は明らかではある。
想定される一般道での走行は、自宅ガレージとサーキットとの移動時程度。それ以外の多くの目的では使用しにくい。そのかわり、サーキット用マシンを購入するにはモータースポーツ・ライセンスが必要となるけれど、ラプチャーならラディカルのショールームに行けば普通免許でも購入が許される。
シャシーはFIAが定めるセーフティセルと軽量チューブラーフレーム・シャシーを備え、プラスティック・コンポジット製のボディが載っている。サスペンションは前後ともにダブルウイッシュボーンの全調整式。
2.3Lのエコブースト・ユニットは365ps
ボディは四隅いっぱいにまで広がり、ダイナミックな造形ながら、空力的にも配慮されたもの。フロントスプリッターは、高速域で強力なダウンフォースを生み出すために、再設計を受けている。
推進力となるのは、縦置きされる2.3Lのフォード・エコブースト・ユニット。4気筒ターボエンジンで、ラディカル社のチューニングにより365psと44.1kg-mを獲得している。トランスミッションは6速シーケンシャル。クワイフ社製のリミテッド・スリップデフが付く。
英国での価格は9万ポンド(1260万円)からと、ロードリーガル・レーサーとしては身近な方。それでもパワーウエイトレシオは500ps/tに近い。
ボディはコンパクトな方だから、ラプチャーに乗るのにボディサイドへ飛び上がる必要はない。コックピットに身体を落とし込むと、フロントガラスはなく、小さなディフレクターが突き出ている。
シートベルトは4点式。スイッチ類は少し変わった配列で、宇宙人なら快適に感じるかもしれない。メーター類は小さなダッシュボード中央に取り付けられたカラーモニターに集約。その下にはクルマのヘッドライトやヒーターを操作するスイッチが並ぶ。
素材のフィット感や組み立て品質は、良いとは呼べない。試乗車の場合、内装のパネルはボール紙のような質感でぐらついている。少なくとも操作時に手をのばす周囲は、作り込まれているようではある。
荒々しく生々しいパワートレイン
インテリアから受ける気持ちの高まりは、ダラーラ・ストラダーレと同様に、さほど高いものではない。ラディカル・ラプチャーのオーナーは、クルマがどう見られるかではなく、自分がどう走らせられるのか、に価値を見出すタイプなのだ。
コクピットの環境は、走行するという点に関しては満たしている。でも、わたしの身長は190cm近く、足元の広さも肘周りの広さも少し規格外。快適に感じるのには無理があった。
バッテリーのスイッチをオンにして、イグニッションキーを回し、スターターボタンを押すとエンジンが目覚める。ドライサンプということもあり、充分に温まるには少し時間がかかる。
エンジンが温まっても存在感は荒々しく生々しい。ハーフスロットルを与えると、リジッドマウントされたパワートレインの衝撃で、身体は前後に揺さぶられる。ギアボックスを操作すると、コツンと振動があり、低回転域で高音のメカノイズが響く。
低回転域を使って都市部の流れに合わせるような運転の仕方は、ラプチャーが目的とするものではない。一般道でも乗り心地は許容できる範囲にあるが、路面電車のレール付近の凹凸では大きく揺さぶられ、郊外の道に出たいと感じさせられる。
すべてが直接的だから、ラプチャーに乗っている時は集中力が低くなることはなさそうだ。冬の濡れたサーキットでは手に負えなくなるかと思ったが、そうでもなかった。
濡れたサーキットも許容する操縦性の高さ
365psのエンジンと軽量シャシーの組合せで、クルマは猛進するように加速する。しかし操縦性は良好で、ラプチャーだけでなくサーキットにも不慣れなドライバーでも、事故なく数ラップを楽しむことができたことは素晴らしい。
電子的なサポートは一切なく、ドライバーが感じ取れる挙動や操作に対するフィードバックは非常に重要。ラプチャーは路面が濡れていても低速度域でも、横荷重が低くても、充分に多くを伝えてくれる。
ステアリングはクイックで、重み付けや触感は素晴らしく、路面の状態やタイヤのグリップ状態をしっかり教えてくれる。ハンドリングの俊敏さは高いが、グリップレベルも極めて高い。
ラディカル・ラプチャーが履くのはヨコハマ製の高性能タイヤだが、濡れた路面は不得意科目。それでも限界領域でもしっぺ返しを食らうこともなく、トラクションも充分で、ブレーキング時の姿勢も安定していた。
ブレーキペダルの質感も優秀。漸進的に増える効きの強さが、操る自信を高めてくれる。
ラプチャーから得るドライバーの満足感を評価するのは、また後日。気温が高く、路面の乾いた日に改めたい。恐らく全身の筋肉を使うチャレンジになるだろう。
アリエル・アトムやケーターハム・セブンとは異なるが、一般道でも安全に走行でき、サーキットへの往復もある程度は快適に運転ができるのがラプチャー。先代のSR3 SLを思い返すに、サーキットでは鮮烈な走りをドライバーに楽しませてくれるに違いない。
凶暴な大型犬を飼いならすように
先代のSR3 SLはシルバーストーン・サーキットの中速コーナーで、マクラーレンやポルシェを外側から交わせるクルマだった。裕福な男性が果敢にコーナーを攻め、サーキットで番狂わせの走りを披露するのだろう。
ラプチャーはラディカルの支持者が期待するであろう内容を持っている。更に速く、運転しやすい。パンチ力の強さでは、先代を超える仕上りだ。
試乗を終えて、ラディカル・ラプチャーは凶暴な大型犬に似ているかもしれないと思った。向こう見ずな飼い主が一緒に街を歩くと、周囲の人は避けて通る。なぜ一緒に暮らすのか、理解すること自体が難しい。
実際の飼い主は上手に荒々しい気性を飼いならし、鋭い眼差しと掛け声で上手に行動を操る。クルマを愛するという点で共通していても、わたしの知り得ない考えを持つドライバーが、世の中には存在するということだ。
ラディカル・ラプチャーのスペック
価格:11万ポンド(1540万円)
全長:4100mm
全幅:1790mm
全高:1110mm
最高速度:265km/h
0-100km/h加速:3.1秒
燃費:-
CO2排出量:-
乾燥重量:765kg
パワートレイン:直列4気筒2261ccターボチャージャー
使用燃料:ガソリン
最高出力:365ps/6000rpm
最大トルク:44.1kg-m/3600rpm
ギアボックス:6速シーケンシャル
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