メルセデスのBEV 専用プラットフォームを採用した、初のSUV 版となるEQS SUV が上陸を果たした。3列7人乗りと、セダンより定員が増えたことによる利便性の向上に加え、ゆとりある室内空間が確保されていることも魅力のモデルだ。
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リアステアのおかげで取り回し性も良好
2022年4月に本国で発表されていた、メルセデスEQの最上級SUVであるEQS SUVが、ようやく日本上陸を果たした。
このモデルは、その車名から判るとおり、EQSのSUV版である。つまり、BEV専用プラットフォーム「EVAII」を採用したEQSセダンと多くを共用している。
全長5135mm、全幅2035mm、全高1725mmのサイズは、GLSと比較すると75mm短く、5mm幅広く、80mm幅広く、100mm背が低い。シルエットがスマートなので、一見するとそれほど大きく感じないが、実際に目の前で見ると十分に巨大だ。
3210mmのホイールベースはEQSセダンと共通で、ホイールベース間に搭載されるリチウムイオンバッテリーも107.8kWhと同じ。WLTCモードにおける航続距離は、今回試乗したEQS450 4マチックSUVが593kmで、よりパワフルな上級グレードのEQS580 4マチックSUVスポーツは589km。車両重量が2880kgもある4WDのSUVであることを考えれば、十分に長い。
エクステリアは、フロントのブラックパネルや、左右のリアコンビランプを繋ぐライトバンドなど、EQモデルでお馴染みのスタイリングとなっている。
インテリアは、ほぼEQSセダンと同様の雰囲気だ。インパネ全面には3つのディスプレイを一体化したMBUXハイパースクリーンが備わり、非常に先進的な印象である。キャビン全体は上質なレザーとウッドで仕立てられ、とてもラグジャリー感に溢れている。
MBUXハイパースクリーンは、EQS450 4マチックSUVではARヘッドアップディスプレイなどとともにオプションで選択可能。助手席用ディスプレイは、今回からBluetoothヘッドフォンの接続が不要となっている。
日本仕様に標準で備わる3列目シートは、大人でも問題なく座れるが、使用時に2列目を前方にスライドさせる必要があるので、普段はフラットに畳めばラゲッジスペースとして活用できるだろう。
走りはさすがEQSベースという印象で、街中や高速を大人しく走る分には、極めて高い快適性が味わえる。ホイールベースが長く、重量もあるので、乗り心地は良好だ。静粛性はEQSほどではないものの十二分に高く、とてもリラックスしてドライブできる。
ナッパレザーシートは全車標準。1、2列目のヘッドレストにはソフトなピローが備わる。 2人がけの3列目は実用的な空間を確保。乗降時は2列目が電動で前方にスライドする。 ラゲッジスペースは2列目まで倒すと最大2100Lまで拡大する。
前後の合計で360㎰と800Nmを発揮する電気モーターは確かに強力だが、流石に約2.9トンの車体は重く、加速が爆発的に良いわけではない。それでも発進加速はレスポンスが良くスムーズで、とても気持ちよく走れる。スポーツモードを選べば、それなりに元気のいい走りも楽しめる。
後輪が最大10度ステアするリアアクスルステアリングが標準で備わるのは嬉しい。最小回転半径がたったの5.1mと小さいので、車庫入れやUターンで大柄なボディを意識せずに取り回しが可能だ。
シフトパドルで効き具合を3段階に調整できる回生ブレーキには、もうひとつ“AUTO”と表示されるインテリジェント回生があるのだが、これを選ぶと先行車との距離と相対速度に応じて自動的に停止状態まで回生ブレーキで速度を調整してくれて、とても運転しやすくなる。ただし、ドライバーがブレーキペダルを踏んでからも制御がキャンセルされないようで、ドライバーの意図と異なる減速Gが立ち上がる事があるのは、要改善と感じた。
装着タイヤはグッドイヤー・イーグルF1アシンメトリック5で、サイズは前後275/45R21。 後輪が最大10度ステアするリアアクスルステアは全車標準だ。
また加減速時のピッチングの大きさも気になる。低重心なBEVとはいえ車高の高いSUVなので、やはりキャビンがゆすられる感覚が強い。この点ももう少し抑えが効くようになると、さらに動的質感が高まるだろう。
1542万円という価格は、非常に戦略的だ。補助金や優遇税制などを考慮すると、GLS400d 4マチックと同等か安いくらいになる。BEVを所有する条件が整っている人の多くは、EQS SUVになびくことになるだろう。
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