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『これ無理やん!』実質3台のレースを終わらせた悪夢のオープニングラップ。当事者たちが語るマルチクラッシュの状況

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『これ無理やん!』実質3台のレースを終わらせた悪夢のオープニングラップ。当事者たちが語るマルチクラッシュの状況

 岡山国際サーキットで行われた2024スーパーGT第1戦。開幕戦のGT500クラスでは1周目からアクシデントが続出。一気に3台が勝負権を失う波乱の展開が待ち受けていた。そのアクシデントの状況を当該者のドライバーたちに聞いた。

 まず状況を整理すると、スタート直後の1コーナーでは5番手を争っていたENEOS X PRIME GR Supraの大嶋和也とMOTUL AUTECH Zのロニー・クインタレッリが接触。これにより23号車がコース外に押し出される形となった。

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 その後、コース後半のリボルバーコーナーで12号車MARELLI IMPUL Zからの接触を受けた14号車がスピン。その14号車にAstemo CIVIC TYPE R-GTの太田格之進が避けきれずに突っ込んだ。これにより、17号車はラジエーター破損などマシンのダメージが大きく、その場でリタイア。なんとか走行を再開した14号車はリヤセクションを大きく壊し、ピットで長時間に及ぶ修復作業が行われた。

 12号車も接触の影響でマシンにダメージを負いながらの走行となった他、14号車に対する危険なドライブ行為でドライブスルーペナルティを受けることになった。なお、1コーナーで23号車をコースアウトさせた件で14号車に対してもドライブスルーペナルティが課せられている。

■ENEOS X PRIME GR Supra大嶋和也「思ったほどタイヤが芯まで温まっていなかった」

「スタートでロニー(クインタレッリ)とブレーキ勝負になったのですけど、そこでロックして(23号車に)当たってしまいました。ソフトタイヤを履いていたのでウォームアップに自信があったものの、思ったほどタイヤの芯までは温まっていませんでした。その辺はちょっと判断ミスだったなと思います」

 そう語るのは14号車の第1スティントを担当した大嶋。思うように1周目のペースが上がらず、後続も迫っているなかでのバトル中に12号車MARELLI Zに突っ込まれたという。

「その後(ヘアピンで)3号車に合わされて、そのまま並んでいったら危なかったので(前に)行かせたのですけど、そこに12号車が(タイヤを)ロックさせてきちゃいました。そこに関しては12号車のミスだと思いますけど、そこに陥ってしまったのと、僕の1周目のスピード不足だったので……」と大嶋は肩を落とす。

 その後、スピンしたところで12号車MARELLI Zと再度接触していたほか、17号車Astemoにも突っ込まれる形となったが、コクピットにいた大嶋本人は「いろいろぶつかっていたみたいですけど、自分からはどうなっていたのか分からない状況でした。エアロがボロボロでしたけど、足回りは異常がなかったので、壊れている状況を探りながらピットオープンまで走りました。ただ、簡単に直るレベルではなかったです」と、状況を説明した。

 チームはマシンを修復させて、レース中盤に戦列復帰を果たした。そこからは福住仁嶺が走行を担当し、トップから39周遅れでフィニッシュ。規定周回を満たしていないため、完走扱いにならなかった。

「開幕戦でこんなレースになっちゃったので、ちょっと悔しいですね」と大嶋。

「クルマに関しては今週も決まっていたと思いますが、選んだタイヤがソフト寄りだったので、ちょっと勝負に出過ぎたかなというところはありましたけど、クルマも決まっていたので、みんなと同じタイヤを履いて、普通に勝負に行けば良かったかなと思います。とにかく悔しいので、気持ちを切り替えていきたいと思います」と、終始元気のない様子だった。

■Astemo CIVIC TYPE R-GT太田格之進「理由はどうであれ、チームに申し訳ない気持ち」

「僕は14号車が(スピンした反動で)バックしてくると思っていたんです」と、リボルバーコーナーでの状況について説明する太田。

 当時の位置関係としては、目の前でスピンした14号車ENEOSが、17号車Astemoから見て左側にいくと太田は想定して回避行動に入ったという。しかし、彼には行き場がなかった。

「僕の左側には16号車(ARTA MUGEN CIVIC TYPE R-GT)がいて、このまま左に行ったら危ないなと思って右側に避けようとしたら、今度はそっちにも1台いて、『これ無理やん!』と思ってブレーキを踏んだのですけど、間に合いませんでした」

 17号車Astemoとは直接的に絡んでいないものの、ことの発端となった12号車MARELLI Zの動きはスタート直後から気になっていたという。

「正直いうと、1コーナーの段階から12号車の動きが怪しくて、ブレーキをロックさせていて止まれていない感じがしました。『ちょっと危ない動きをしているな』と思いながら走っていました」と太田。

 1コーナーでは接触こそなかったものの、12号車MARELLI Zもブレーキをロックさせ、隣にいた16号車ARTAの大津弘樹も「けっこうな勢いで突っ込んできたので、僕は手前で減速しました。そのまま並んで入っていたら、ぶつかっていたかもしれません」と、話していた。

 新天地での初戦ということで、かなり気合いが入っていた太田。しかし、思わぬ形で1周もせずにリタイアを余儀なくされ、コース脇のマーシャルポスト付近に力なく座り込んでいた様子が公式映像に映し出されていた。

「ひとつ言えることは、(接触について)自分の非じゃないにしても、止まるというのは良くないなと思います」と太田。

「個人的な意見としては『300kmのレース距離で、最初からそんなにリスクを負う必要があったのか?』と……相手に対して思うところはありますけど、それ以上に自分自身に対するところで、どんなシチュエーションであってもクルマを完走させられなかったというのは、運も含めて自分の責任でもあると思います」

「チームも金石勝智(監督)さんも『次、頑張ろうな』と言ってくれますけど……個人的にはチームに対して申し訳ないと言う気持ちが強いです。みんなが期待して僕を起用してくれているなか、その1戦目でこういうふうになったので……理由はどうであれ、悔しい気持ちは少なからずあります」

 次戦の富士に向けては「今回はホンダ陣営のなかでも僕たちは少し遅れていたのかなと思います。8号車(ARTA MUGEN CIVIC TYPE R-GT)とか100号車(STANLEY CIVIC TYPE R-GT)はペースがあったので、その辺を次までに改善していきたいなと思います。そういう点でも、今日のレースでロングランができなかったというのは痛いですけど、なんとか頑張りたいなと思います」と、意気込みを語りつつも、割り切れない思いを抱えている太田の表情が印象的だった。

■MARELLI IMPUL Zベルトラン・バケット「これは僕のスタイルではない」

 今回の混乱の中心人物となった12号車MARELLI IMPUL Zのバケット。自身のスティントが終わると、真っ先に14号車ENEOSのプラットホームに謝罪へ行っていた。その後も酷く落ち込んでいたようで、レースが終わってかなり時間が経ってから話を聞くことができた。

「正直、なぜこうなった(タイヤが何度もロックした)のかが分からない。スーパーGTに参戦して11年になるけど、こういう経験は今までになかった」とバケット。

「普通に1コーナーに入って行ったら、外側のフロントタイヤが突然ロックアップした。正直、これもなぜ起きたのか分からない。その後、14号車のウォーミングアップに問題があったのか、すごくペースがスローだった。ヘアピンを立ち上がってインサイドに高星(明誠/3号車Niterra MOTUL Z)さんがいて、14号車も前にいる状態だったけど、そこでまたブレーキがロックアップして、大嶋さんにヒットしてしまった」

 結果的に14号車への危険行為でドライブスルーペナルティとなったが、バケットは繰り返し“アグレッシブに行ったつもりはなかった”と強調していた。

「ターン8(リボルバーコーナー)ではブレーキを遅らせたつもりはなくて、普通にブレーキングした。そうしたら、いきなりタイヤがロックしてそのまま突っ込んでしまうことになった。ターン1に関してもまったくリスクを負っていなかったし、安全にいった。だけどタイヤがロックしたことで、そうではなくなってしまった。大嶋さんや巻き込んでしまった他のクルマに申し訳ないと思っている」

「今回のブレーキロックは本当に驚いた。こういったことは二度と起こしたくない。14号車のみんなには本当に申し訳ないと思っている。彼らのレースを台無しにしまったことは間違いないからね」

 ここまで落ち込んだ様子のバケットを見るのは初めてだったが、次戦に向かう前に「しっかりとオンボード映像を見て状況を理解したいが、いずれにしてもしっかりとデータを分析して何が起きていたのかをハッキリさせたい。もし、クルマが正常に動いていたのであれば、今回の件は言い訳したくない」と話していた。

「今回は、本当に申し訳ないという気持ちしかない。僕もこういうレースはしたくないし、これは僕のスタイルではない。自分自身に対しても残念な気持ちでいっぱいだ。ここから学んで、また良いレースをしたい」

 1周目のアクシデントで今回のレースを台無しにしてしまったチーム、そしてドライバーたちの奮起を第2戦富士スピードウェイで期待したい。

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