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手描きの感覚と技術力向上のために仕上げた/柏崎義明さんの代表作・好きな作品

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手描きの感覚と技術力向上のために仕上げた/柏崎義明さんの代表作・好きな作品

キャンバスに彩色方法を変えて描いた2台のバイク

*トップイラストレーターが参加した「AAF作品展」(2022年7月21~31日)、今回はコロナ禍の影響で3年ぶりの開催でした。ご感想をひとこと。
■開催できてよかったです。久しぶりに会員の皆さんと会えましたし、新たな印象の作品もあって、とても有意義でした。来年も開催したいですね。

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*まず作品について
■今回の2作品はキャンバスに描きました。ふだんはイラストボードや、紙を水張りして使いますが、キャンバスは麻の表面が硬くデコボコがあるので、下絵の線を写す作業がひと苦労でした。絵の具の乾燥も遅くなりますし。

*描き方にも特徴があります
■それぞれ彩色方法を変えています。作品1のトライトンは、最初に全体をざっくりダークブラウンで塗りました。この下色は、影になる部分の6~7割ぐらいの暗さです。あまり濃いと全体の仕上がりが暗くなるので、加減しながら塗っていきます。光が当たったバイクは、徐々に明るい色をのせながら形をとっていきます。この描き方は、影の色を先にのせるので、全体の色調をコントロールして描くのに向いています。白地に描くよりも形がつかみやすく立体的に描けます。難点は全体をダークな色で塗るので、色相の幅が狭くなり彩度も落ちます。黄色のパーツなどがある場合は、そこだけ下色を塗らないなど彩色の段取りが重要です。

*作品2は
■ドゥカティは、全体のベース色を塗らずに、ひとつひとつのパーツを完成させていく描き方です。白地に色をのせていくので、色相の幅が広がり、彩度も高くなります。手順としては、バイク本体を先に完成させ、白い背景にバイクが浮き上がった状態から背景を描き始めます。バイクを目立たせながら全体の色味を統一していく作業が難しく、作品1のベース色を先に塗る描き方より手間がかかりました。

*制作期間は
■作品1のトライトンは2カ月。作品2のドゥカティはトータル3カ月ほどですが、2020年1月に描き始めてちょっとずつ手を入れながら完成させました。この2作品は仕事とは関係なく、手描きの感覚を忘れないように、そして技術力を上げるために取り組みました。仕事のときよりも遥かに大きいサイズで、より手間がかかるキャンバスで描くことにこだわりました。決意して挑んだとはいえ、何カ月もこのサイズと向き合うのはかなりキツく、モチベーションの維持が大事と痛感しました。
 実は最近、「AIによる自動画像生成」のニュースが気になっていて。キーワード入力だけでAIが数分で画像生成してくれるのですが、想像以上にすごいクオリティです。もはや人間のイマジネーションを超えていきそうな気配もありますし、技術の進化が止まらないデジタル作品に対抗し得るのは、「究極の手描き」かもしれませんね。

*バイクと並行して取り組んでいるデジタル制作の恐竜は?
■仕事で3D制作していた恐竜は、膨大な数になりました。その恐竜たちを使って、動画の配信を思いつきました。オリジナル絵本も制作中なので、告知の一環になればと……。でも、動画配信はまったくの未経験で、仕組みや動画編集の手順・操作を覚えるのが試行錯誤の連続でした。ようやく昨年から、YouTubeで動画チャンネルをスタートさせました。  始めてみていちばん面白いのは、自分自身が楽しく自由に作ったオリジナル動画を全世界に配信できることと、見る側の存在です。インドネシアやタイなど予想外の国々から視聴が多いのも意外でうれしかったです。英語バージョンを作ろうかなぁとか、動画を見てもらうためのサムネール(見本画像、表紙画像)も工夫しなきゃとか、考えるのも楽しいです。

*散歩の達人とお聞きしていますが……
■ありがとうございます。お昼過ぎに1時間半~2時間ほど、毎日休まず歩いています。音楽やAudible(=音声朗読サービス)の小説の朗読を聴きながら歩いていると、絵本のストーリーなどが浮かびます。  歩きながら撮影もします。木の断面、錆びたトタン壁、コケの地面、ペンキの落ちたベンチなどを接写して、さまざまなテクスチャーのストックを作り、3D恐竜のテクスチャーとして利用しています。探せば無限に見つかります。気分はファーブルです。

作者プロフィール
かしわざきよしあき/兵庫県出身。雑誌の表紙や企業のカタログ、広告などを手がける。近年はプラモデルパッケージのイラストのほか、科学雑誌や図鑑で恐竜の生体復元(3D)を制作中。「恐竜えほん」シリーズ『ティラノサウルス』『スピノサウルス』『トリケラトプス』も好評(3冊とも金の星社)。東海大学デザイン学課程講師。AAF(オートモビル・アート連盟)会員。川崎市在住。

インタビュアー/山内トモコ

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