コンパクトなボディでも使い勝手や安全性の高いモデルが人気
好調に売れるクルマは、多くのユーザーが使っている実績があり、優れた商品と判断できる。各ジャンルの販売1位車種が備える唯一無二の「売れる魅力」を考えたい。
2番手で何が悪い! トップになれないけど魅力溢れる愛すべきクルマ5選
1)ホンダN-BOX
人気車の代表はN-BOXだ。2017年から2019年にかけて、国内の最多販売車種になり、軽自動車でも売れ行きは1位になる。
唯一無二の特徴は、前輪駆動の乗用軽自動車では、車内がもっとも広いことだ。エンジンは補機類の配置も含めて縦長にデザインされ、有効室内長を拡大した。ホイールベース(前輪と後輪の間隔)も2520mmだから、軽自動車ではもっとも長い。
しかも燃料タンクを前席の下に搭載して床を低く抑え、全高は1790mmだから、後席を畳んだ時の荷室容量は軽自動車の最大級だ。床が低いために自転車を積む時に、前輪を大きく持ち上げる必要もなく、4名乗車時の居住性、積載性、使い勝手が抜群に優れている。このほか内装の質感、静粛性も優れ、好調な売れ行きに結び付いた。
2)トヨタ・ヤリス
新型車のトヨタ・ヤリスとホンダ・フィットが好調に売れている。登録台数を比べるとヤリスが少し多い。ヤリスの唯一無二の特徴は、コンパクトカーでありながらドライバーの満足感を優先して開発され、安全装備も充実させたことだ。フィットに比べて後席と荷室は狭く、ファミリーには不向きだが、1.5リッターのノーマルエンジンとハイブリッドは動力性能に余裕がある。操舵に対する車両の動きも軽快で、走行安定性も高いから、運転が楽しく感じる。
右折時に直進してくる対向車や横断歩道上の歩行者を検知して、衝突被害軽減ブレーキを作動させるなど、安全装備も先進的だ。商品の特徴はマツダMAZDA2に似ているが、ヤリスは設計の新しさが魅力になる。
コンパクトさや視覚的なバランスの良いモデルに人気が集まる
3)トヨタ・シエンタ
ミニバンで登録台数のもっとも多い車種はシエンタだ。唯一無二の特徴は、全高を1700mm以下に抑えながら、これを超えるフリードやヴォクシー系3姉妹車などに負けない空間効率を実現させたことにある。
秘訣は先代シエンタで開発された薄型燃料タンクだ。3列目に座っても床と座面の間隔が十分に確保されて膝が持ち上がらず、着座姿勢に無理が生じない。3列目は2列目の下に格納できるから、荷室に変更した時の積載容量も大きい。全長と全高の視覚的なバランスも良いために人気を得た。
ちなみに先代シエンタが薄型燃料タンクを開発したのは、燃料タンクを前席の下に搭載して車内の後部を広げたホンダ・モビリオに対抗するためだった。ところがモビリオがフリードに変わると、燃料タンクを普通の配置に変更してしまった。
4)トヨタ・ライズ
SUVは海外市場に重点を置いて開発され、大半が全幅のワイドな3ナンバー車になる。しかしライズは5ナンバーサイズに抑えて、全長も4m以下だから運転しやすい。
しかも後席や荷室は、広くはないが最小限度の容量が確保され、ファミリーカーとしても使える。コンパクトなサイズと実用性の両立が唯一無二の特徴だ。
また最近は、トヨタC-HRやマツダCX-30など、外観を乗用車感覚で仕上げたシティ派SUVが膨大に増えた。その一方で野性味を感じさせる車種は減っている。そこでSUVの原点回帰が見られ始め、前輪駆動ベースでもオフロードSUV風のトヨタRAV4が売れ行きを伸ばした。ライズの外観もオフロードSUV風で、これも人気の要因となっている。
5)トヨタ・カローラツーリング
ステーションワゴンはかつて堅調に売れるジャンルだったが、日本ではミニバンに人気を奪われ、北米ではSUVに押された。欧州だけは日常的に高速走行の機会が多く、高重心の車種を好まない傾向が強いため、ワゴンも相応に用意されるが最近はSUVも増えた。
このような事情により、今の国産ワゴンは少数派だ。この中で堅調に売れているのはカローラツーリングになる。唯一無二の価値は、全長が4500mm以下のコンパクトなサイズで、ワゴンらしいスマートな外観と優れた走行性能を備えること。
コンパクトワゴンにはシャトルもあるが、荷室を重視したから全高も1500mmを上まわり、積載容量は大きいがスマートな印象は乏しい。カローラツーリングは、全幅が少しワイドで3ナンバーサイズになるものの、運転しやすいサイズとワゴンの価値を両立させて人気を得た。
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