新年早々行われた、ホンダの新型「ステップワゴン(STEP WGN)」のオンラインジャパンプレミア。全面的に刷新された新型ステップワゴンは、「エアー(AIR)」と「スパーダ(SPADA)」の2つのタイプが用意され、スパーダにはさらに、上級グレードの「プレミアムライン(PREMIUM LINE)」を設定、発売は2022年5月ごろになる見込みだという。
今回の発表で、内外装デザインと、e:HEVの搭載といった大まかな情報は明らかにされたが、ガソリンエンジン車の有無や詳細なメカニズム、車両価格など、具体的な内容についてはわかっていない。
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ミドルサイズミニバンといえば、トヨタ新型ノア/ヴォクシーが1月13日に初公開となり、日産の新型セレナも、2022年内の登場が濃厚と、続々とモデルチェンジを迎えている。
そんな熾烈なミドルクラスミニバン競争の先陣を切った新生ステップワゴン、現時点までに明らかとなった情報をもとに、新生ステップワゴンの期待と不安について考察しよう。
文:吉川賢一
写真:HONDA、TOYOTA、NISSAN
[gallink]
新型で名門復活なるか!?
手ごろなサイズと価格で、根強い人気のあるミドルクラスミニバン。2021年の王者は、トヨタのヴォクシーだったが、このジャンルに火をつけたのは、1996年5月に登場した初代ステップワゴンだ。
初代ステップワゴンは、発売翌年の1997年には年間登録台数10万9000台を記録、その後も年間9万台を維持するという人気ぶりで、2代目へとモデルチェンジした2001年も11万台以上を記録、セレナやノア/ヴォクシーを寄せ付けない強さを誇っていた。
だがここ10年ほどは、セレナやノア/ヴォクシーの後塵を拝することになってしまっている。王道の「ハコ型ミニバン」に拘り続けたライバルに対し、低床ミニバンコンセプトで差別化を図るなど(※4代目は全高1770ミリまで下げたが、現行5代目では1840ミリまで高めた)、新たなチャレンジを行ってはいるが、苦戦が続いている状況だ。
ホンダの名門ミニバン「オデッセイ」が2021年いっぱいで販売終了となる中、もうひとつの名門ミニバンである「ステップワゴン」は名誉挽回なるか。ホンダとしても、「ステップワゴンだけは守らなければ」という強い思いで、今回の新型ステップワゴンを開発したに違いない。
2021年12月の最新データでは、ヴォクシーが70,085台で一位を達成。2位セレナ(58,954台)、3位ノア(44,211台)、4位にステップワゴン(39,247台)で終えた
シンプルを極めた外装と、使い勝手を極めた内装
新型ステップワゴンの最大のトピックは、シンプル化したエクステリアと、使い勝手を重視したインテリアだ。直線基調で高いベルトラインのボディシェイプや四角いヘッドライト、縦型のテールライトといった細部のデザインは、初代や2代目をモチーフにしていることが分かる。
また、ウインドウラインよりも下側に厚みを出したことで、より四角く、大きなボディのミニバンのように見せている。先代ステップワゴンで初導入した「わくわくゲート」は廃止となり、一般的な縦開きタイプのテールゲートとなった。低い位置から開くので、巨大なテールゲートとなるが、パワーテールゲートは標準で設定される見込みだ。
「エアー」に対して、「スパーダ」はフロントグリルやバンパーのデザインを変え、ボディ下端全周にダーククロムメッキモールを装着するなど、従来型の「スパーダ」がもっていた、ワイルド&クールなスタイルを継承している。
直線基調で高いベルトラインのボディシェイプや四角いヘッドライト、縦型のテールライトといった細部のデザインは、まさに初代や2代目をモチーフにしている
インテリアも進化した。新型ステップワゴンでは、Aピラーの根元を後退させたことで、この手のミニバンに多い、フロントウィンドウの遠さがやや解消されている。また、水平につくり込んだダッシュボードと、クウォーターウィンドウ、サイドウィンドウのラインを揃えたことで、運転席からの見晴らしが一気に改善、ミニバンの運転が苦手な方にとっては、強い味方となるはずだ。
新型フィットのように、Aピラーの幅まで細めることはなかったが、「視界の良さ」は抜群によくなった。新型シビックと同じく、ハニカム形状のエアコングリルを使った点はインテリアとのマッチングが微妙だが、最新世代のインテリアセンスでまとめてきたということだろう。
水平につく込んだダッシュボードと、クウォーターウィンドウ、サイドウィンドウのラインを揃えたことで、運転席からの見晴らしが一気に改善、ミニバンの運転が苦手な方にとっては、強い味方となるはず
他にも、2列目シートは、前後のロングスライドと、左右にもスライドできる構造としたことで、使い勝手が向上。3列目シートは、先代にあった床下収納の機能をそのままに、クッションの厚みを増すことで着座位置を高め、さらには前方のシート形状やヘッドレスト形状を改良したことで、前方視界の良さと、座り心地を改善。細かな改良が積み重ねられている。
「ギラギラフェイス」を避けたことは正解なのか!?
従来型のステップワゴンでは、エクステリアデザイン(特にフロントマスク)で損をしていた感が否めなかった。ノーズを上げてグリルを大きく見せるオデッセイのような方向性もヒットしたとはいえず、新型シビックのような平たいフロントフェイスも似合うとも思えず。
顔面模索が従来型ステップワゴン最大のテーマであったが、今回の新型ステップワゴンのフェイスはシンプルに「原点回帰」したことで、シンプルで清潔感のあるデザインになったとは、いえるだろう。
だが、ミニバンユーザーが求める「ギラギラフェイス」を新型でも避けてきたことは、ブランド構築ためなどの「つくり手事情」を優先している印象。これがユーザーに受け入れられるかは、かなり厳しいように思う。少なくとも「スパーダ」は、ライバル車が行っているような、攻撃的なフェイスにしてもよかったのではないだろうか。
ただ、かつて、家族が運転する初代ステップワゴンでドライブしていた10~20代の子供達は、今や30~40代の購買層ど真ん中世代へとなった。そうした層に対して、「原点回帰で懐かしくなったフェイス」で購買意欲をどれほど刺激できるかは非常に興味がある。新型ノア/ヴォクシーの価格が先代よりもかなり上がったことを考えれば、価格次第で、新型ステップワゴンが大逆転する可能性もあるだろう。今後明らかになる情報が楽しみだ。
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