現在位置: carview! > ニュース > 業界ニュース > 空冷ポルシェ911はなぜ暴騰しているのか?

ここから本文です

空冷ポルシェ911はなぜ暴騰しているのか?

掲載 更新 28
空冷ポルシェ911はなぜ暴騰しているのか?

空冷エンジンを搭載するポルシェが、近年、中古車市場で暴騰している。とくに911のタイプ930や964は好例である。では、なぜ暴騰しているのか?

2億円超で取引されるモデルも!

【連載】F1グランプリを読む──サー・スターリング・モス

ここ1~2年は沈静化したものの、2015~2017年頃の国際クラシックカー市場は、まさしく“暴騰”というべき市況だった。

象徴的だったのは、レーシングモデルを頂点に、日本円にして億単位の取引が当たり前になってしまったフェラーリ。あるいは、それまでモデルによっては300~400万円でも充分に購入可能だったはずの空冷ポルシェ「911」が、あっという間に1000万円オーバー級にランクアップしてしまった点だろう。

今回、かつて比較的身近なクラシック・スポーツカーであったはずの空冷ポルシェが、“高嶺の花”になってしまった理由について、筆者なりに考察したい。

ひとことで“空冷の911”と言っても、1963年から1996年まで実に33年間も生産されたので、歴代モデルは多岐に亘る。

まずは、もともとは「901」の車名とともに1963年にデビューした「Oシリーズ」から、1977年モデルの2.7リッター水平対向6気筒エンジン搭載の「Lシリーズ」に至る、いわゆる「ナロー」。次に、前後の大型バンパーを終盤のナローから受け継ぎ、排気量を3.0リッター/3.2リッターに拡大した「タイプ930」(1978~1989年)。さらに、エンジンを3.6リッターまで拡大し、エクステリアも格段にモダナイズされた「タイプ964」(1989~1993年)。そしてサスペンションやディメンションにも大幅に手がくわえられた、空冷エンジン搭載最終モデルの「タイプ993」(1994~1997年)に至るまで、4世代にわたって生産された。

いずれのモデルも、2010年代中盤のクラシック カーおよびヤングタイマー クラシックの国際マーケットにおいて、高騰したのだ。

とくにナロー世代の人気は凄まじいもので、一時はロードカー仕様の「ツーリング」でも1億円を越えた。レースのホモロゲーション用に少数が製作されたライトウェイト仕様の「カレラRS2.7」(1973年)にいたっては、その2倍、2億円超の価格で取引されていた。

タイプ930は、通常の「911SC」や「911カレラ」であっても1000万円前後で流通する事例が多い。

一方、空冷911でも比較的リーズナブルと言われたタイプ964は、やや人気の低かった4速AT「ティプトロニック」仕様や、この世代で初設定された4WDの「カレラ4」でも500~700万円。「カレラ2」のマニュアル仕様ならば800万円を超え、さらにハードコア版の「カレラ2RS」や「スピードスター」は、最盛期、5000万円前後の正札も見られた。

そして、空冷911のファイナルモデルとして、ヤングタイマー・クラシック市場で独自の人気を得ることになったタイプ993は、同等グレードのタイプ964に対してプラス100万円くらいの高価格を維持していた。

一時期に比べると、空冷ポルシェ911のオークション落札価格や、あるいは国内外のスペシャルショップにおける正札価格は落ちついてはきたものの、それでも、今世紀初頭までの相場からすれば数倍にも相当する価格で推移しているからすごい。

わかりやすいからこそ人気

ところで、2010年代後半に巻き起こったクラシックカー市況の大暴騰であるが、旧いクルマすべてが爆発的に高騰したわけではない。

暴騰したモデルは、冒頭で述べたフェラーリやポルシェにくわえて、ランボルギーニ「ミウラ」やアストンマーティン「DB5」、メルセデス・ベンツ「300SL」、あるいはジャガー「Eタイプ」など、いずれも世界の誰もが知る“わかりやすいスポーツカー”だった。

そもそもクラシック カーの暴騰は、グローバルな金融業界のバックアップを受けた大手オークショネアやスペシャルショップが、中国やロシアといった新興国のカーマニアたちを対象に、ビジネスを展開したことから、全世界に拡大したと言われる。ちなみに、金融業界によるクラシックカー マーケットへの資本投下を支えていたのは、それら新興国の投資家たちだったとも言われている。

ヨーロッパやアメリカ、あるいは1990年代のバブル景気を経て目の肥えた人が増えた日本など、いわゆる“成熟市場”では、既にクラシックカーに対する知識も豊富で、人気モデルばかりがもてはやされるようなトレンドではない。逆に、クラシックカーへのなじみが薄い人の多い新興国では、わかりやすいクラシックカー&ヤングタイマーの代表格が人気を集めた。したがって、名車中の名車として誰しもが認める空冷911が人気を博したのだ。

くわえて成熟した市場でも、目の肥えた上級エンスーにとって、空冷ポルシェ固有の奥深さは、まだまだ探求心や所有欲をそそるのも事実。しかも年々、状態の良い個体は減っている。タイプ993の最終モデルでも、生産終了から23年経つから無理ない。また、排ガス規制が厳しい今、空冷モデルが再生産される可能性がきわめて低いといった事情もあるはずだ。

今後グローバル市場において、空冷911の相場が大幅に下落する可能性があるとすれば、新型コロナウイルスによる経済状況の悪化など、外的要因に限られのでは? 思う。とはいえ、一時的な下落にとどまる可能性は高い。なぜなら、2010年代に巻き起こったクラシックカー バブルは、2008年に発生したリーマンショック後に起こったかただ。

したがって、空冷ポルシェ911のマーケット価格は、今後も浮き沈みこそあるかもしれないが、長い目で見れば“高値安定”になるだろう。一定のレベルで推移するのでは? と、予想したい。

Revive the Passion 2011 - No 026-028Sabine Braun文・武田公実

【キャンペーン】第2・4 金土日はお得に給油!車検月登録でガソリン・軽油5円/L引き!(要マイカー登録)

こんな記事も読まれています

F1マシンを脇に歌舞伎……来春鈴鹿のグリッドでも! 日本GPアンバサダーに就任した市川團十郎「息子と歌舞伎の扮装で踊る計画を」
F1マシンを脇に歌舞伎……来春鈴鹿のグリッドでも! 日本GPアンバサダーに就任した市川團十郎「息子と歌舞伎の扮装で踊る計画を」
motorsport.com 日本版
運営ブチギレ!? 一般車が「検問突破」何があった? 国際イベントでありえない"蛮行"発生! ラリージャパン3日目の出来事とは
運営ブチギレ!? 一般車が「検問突破」何があった? 国際イベントでありえない"蛮行"発生! ラリージャパン3日目の出来事とは
くるまのニュース
遂に“冷却機能”も装備! ハイグレード・ワイヤレス充電スマホホルダーの注目作が登場【特選カーアクセサリー名鑑】
遂に“冷却機能”も装備! ハイグレード・ワイヤレス充電スマホホルダーの注目作が登場【特選カーアクセサリー名鑑】
レスポンス
“やっちまった”タナク、僚友ヌービルにWRCタイトル明け渡す痛恨クラッシュは「マジで大惨事」
“やっちまった”タナク、僚友ヌービルにWRCタイトル明け渡す痛恨クラッシュは「マジで大惨事」
motorsport.com 日本版
スバル新型「すごいフォレスター」登場に反響あり! 水平対向エンジン×本格ハイブリッド搭載に「楽しみ!」の声も! 日本発売は一体いつ?
スバル新型「すごいフォレスター」登場に反響あり! 水平対向エンジン×本格ハイブリッド搭載に「楽しみ!」の声も! 日本発売は一体いつ?
くるまのニュース
「えっ、4つのリングのマークじゃない!?」 アウディが新ブランドを立ち上げ なぜ“4リングス”を使わない? 世界最大市場での戦略とは
「えっ、4つのリングのマークじゃない!?」 アウディが新ブランドを立ち上げ なぜ“4リングス”を使わない? 世界最大市場での戦略とは
VAGUE
「山賊もやし炒め定食」はパンチの効いた味濃いめ! 東関道「湾岸幕張PA」
「山賊もやし炒め定食」はパンチの効いた味濃いめ! 東関道「湾岸幕張PA」
バイクのニュース
7番グリッドスタートも、苦しい苦しいレースを強いられた角田裕毅。しかしペレスを抑え切り9位確保「FP1から良いマシンを手にできれば……」
7番グリッドスタートも、苦しい苦しいレースを強いられた角田裕毅。しかしペレスを抑え切り9位確保「FP1から良いマシンを手にできれば……」
motorsport.com 日本版
ホンダ『CRF1100L  Africa Twin』リコール…加速不良、転倒のおそれ
ホンダ『CRF1100L Africa Twin』リコール…加速不良、転倒のおそれ
レスポンス
SUPER GTの「LM corsa」をサポートする「TWSプリンセス」4人組のスタイルが良すぎ! 爽やかなコスチュームを纏う彼女たちは普段何してる?
SUPER GTの「LM corsa」をサポートする「TWSプリンセス」4人組のスタイルが良すぎ! 爽やかなコスチュームを纏う彼女たちは普段何してる?
Auto Messe Web
フェルスタッペン、苦しい1年を戦い抜いた4連覇は”誇り”「ある意味、とても特別で美しいシーズンだ」
フェルスタッペン、苦しい1年を戦い抜いた4連覇は”誇り”「ある意味、とても特別で美しいシーズンだ」
motorsport.com 日本版
MAXWIN、ヘルメット取付タイプのGPS搭載ドラレコ「MF-BDVR001G」発売
MAXWIN、ヘルメット取付タイプのGPS搭載ドラレコ「MF-BDVR001G」発売
レスポンス
空冷6気筒の水平対向! RRレイアウト! ポルシェになれなかったGMの「コルヴェア」とは
空冷6気筒の水平対向! RRレイアウト! ポルシェになれなかったGMの「コルヴェア」とは
WEB CARTOP
「パフォーマンスやスピードは昨年と比べ物にならない」トヨタWRC勝田貴元、2024年は自身の成長を実感した1年に
「パフォーマンスやスピードは昨年と比べ物にならない」トヨタWRC勝田貴元、2024年は自身の成長を実感した1年に
motorsport.com 日本版
水道代がかからないしエコだからって「井戸水」「雨水」洗車はNG! キレイにならないどころか塗装を傷める可能性もあった
水道代がかからないしエコだからって「井戸水」「雨水」洗車はNG! キレイにならないどころか塗装を傷める可能性もあった
WEB CARTOP
スライドドア採用! ホンダの「2ドア“MR”ハッチバック」がスゴイ! まさかのミッドシップでめちゃ楽しそうな「ステップ“バス”」とは
スライドドア採用! ホンダの「2ドア“MR”ハッチバック」がスゴイ! まさかのミッドシップでめちゃ楽しそうな「ステップ“バス”」とは
くるまのニュース
ホンダ『S660』用HKSインタークーラーキットがリニューアル、ブラックメッシュホース使用で軽量化
ホンダ『S660』用HKSインタークーラーキットがリニューアル、ブラックメッシュホース使用で軽量化
レスポンス
NY発ファッションブランドが本気のカスタマイズ!「エメ レオン ドレ」流ポルシェが「鮮烈」デビュー
NY発ファッションブランドが本気のカスタマイズ!「エメ レオン ドレ」流ポルシェが「鮮烈」デビュー
Webモーターマガジン

みんなのコメント

28件
  • 964を乗っていた。当時、某千葉の工場で3.8RSRのエンジンを載せて。楽しいけど200キロ超えたら中々のスリルがあったぞw
  • 89年式の911ターボと964カップカーを乗ってました。どちらもサーキットをガンガン走ってました。911ターボは、鈴鹿サーキットの逆バンクで突然コントロールを失って、それでも必死にカウンター当てまくり何とかデグナーの砂利まで頑張ってコースアウトしてジャリに埋れて止めました。ドアは開かないので窓から出ました。フルスロットルでググッといい感じでコーナリングしてたらいきなりリアがブレイクです。964カップは、それに比べると全然限界が高く挙動も掴みやすいですが、常に予測してカウンターを当てて行かないと手遅れです。それでも、荷重移動をキッチリ出来るドライバーならば、最高に走りやすいし楽しいです。いい加減な荷重移動でハンドルをこじった走りしか出来ないと、アンダーしか出ません。だから、930、964はドライバーを成長させてくれる最高の相棒となります。今は R35ですが、もう一度乗りたいです。
※コメントは個人の見解であり、記事提供社と関係はありません。

この記事に出てきたクルマ

新車価格(税込)

1694.03642.0万円

新車見積りスタート

中古車本体価格

180.08000.0万円

中古車を検索
911の車買取相場を調べる

査定を依頼する

メーカー
モデル
年式
走行距離

おすすめのニュース

愛車管理はマイカーページで!

登録してお得なクーポンを獲得しよう

マイカー登録をする

おすすめのニュース

おすすめをもっと見る

この記事に出てきたクルマ

新車価格(税込)

1694.03642.0万円

新車見積りスタート

中古車本体価格

180.08000.0万円

中古車を検索

あなたにおすすめのサービス

メーカー
モデル
年式
走行距離

新車見積りサービス

店舗に行かずにお家でカンタン新車見積り。まずはネットで地域や希望車種を入力!

新車見積りサービス
都道府県
市区町村