現在位置: carview! > ニュース > 業界ニュース > 【ヒットの法則145】BMW 550iと650iカブリオレに見る新世代V8エンジンのダイナミズム

ここから本文です

【ヒットの法則145】BMW 550iと650iカブリオレに見る新世代V8エンジンのダイナミズム

掲載 更新
【ヒットの法則145】BMW 550iと650iカブリオレに見る新世代V8エンジンのダイナミズム

BMW5シリーズ/6シリーズは2005年秋にV8エンジンのラインアップを変更、従来の4.4L V8から新世代の4.8L V8へとスイッチして登場している。そのモデル名も550i、650iと変更されたが、ただ単に新しいエンジンに換装されただけではなかった。Motor Magazine誌では、新世代V8エンジンの投入を機に、直列6気筒だけではないBMWの本当の魅力、後輪駆動にこだわるBMWらしいダイナミズムを検証している。(以下の試乗記は、Motor Magazine 2006年2月号より)

同じ4.8L V型8気筒エンジンでも微妙に特性に違い
BMWをよく知る昔からのファンほど、直列6気筒エンジンと後輪駆動こそがBMWの真骨頂だと信じている。確かに直列6気筒のビューンと回ったときの気持ちよさは、他形式のエンジンでは味わえない。特にBMWの6気筒エンジンは昔からシルキーシックスと呼ばれるほどその仕上がりが格別によかったから、「直列6気筒ならBMW」、「BMWは直列6気筒」という図式になった感がある。

【くるま問答】アイドリングストップ機能はよいことばかりではない。OFFスイッチはいつ使う?

しかし、BMWはそもそもエンジン製造会社であるから、直列4気筒やV型8気筒であっても、さすがBMWだといわれる出来のよさとこだわりを持っている。この企画ではBMWのV型8気筒エンジンにクローズアップして、直列6気筒だけがBMWの魅力ではないという検証をしてみたいと思う。

そして、今回のもうひとつのテーマは後輪駆動だ。これもドライビングの愉しさを追求したときの究極の駆動システムとして、BMWとイコールで考えられている。

BMWは後輪駆動にすることでフロントアクスルを前進させてエンジンをフロントミッドに搭載し、またバッテリーをトランクに移すなどで前後重量バランスを50:50に近づけている。これはタイヤによい仕事をさせるための、後輪駆動ならではのパッケージングである。

つまりタイヤに均等に荷重を掛けることによって加速、減速、コーナリングというクルマの動きの3大要素が高いレベルで実現できるようになるのだ。そのことを理解した上で、BMWが作ると4WDでも駆けぬける歓びを感じることができ、高いレベルのハンドリング性能、アクティブセーフティも達成できることを最新のBMWで見てみよう。

2003年の春にデビューした開発コードナンバーE60の5シリーズ、同年の秋に発表されたE63と呼ばれる6シリーズクーペに続き、翌年にE64として6シリーズカブリオレが誕生している。

さらに翌2005年に4.8L V型8気筒エンジンを搭載した550iと650iがカタログモデルとして追加された。まずは、最新モデルである550iと650iカブリオレに焦点をあて、ロードインプレッションと解説をお伝えしよう。

多くの自動車メーカーが直列6気筒エンジンをあきらめて、V型6気筒に移っていくなか、BMWはブランドの全生産台数の半数以上を占めるほど、直列6気筒はBMWにとってなくてはならない存在となっている。

もちろんV型8気筒は一般にスムーズに回るが、大排気量でないと使いこなせない。同様に、直列6気筒にも最適なエンジンの大きさ、排気量がある。現在BMWの直列6気筒には2.5Lと3L、Mモデル用の3.2Lがあるが、2L以下は直列4気筒で、4L以上はV型と棲み分けている。そして「エンジンのBMW」は、直列6気筒だけではなく、直列4気筒や、ここで取り上げたV型8気筒でもBMWらしいダイナミズムと「駆けぬける歓び」を実現しているのだ。

ところで、5シリーズも6シリーズも当初はコンベンショナルな溝付きのイグニッションキーだったが、2005年の途中で溝付きキーが隠されたタイプの7シリーズと同じリモートコントロールキーに変わった。

では、なぜ7シリーズより後から世に出た5シリーズと6シリーズが最初からこの新型キーでなかったのか。その理由は開発コードナンバーを見ると理解できる。7シリーズは、E65(ショート)とE66(ロング)と呼ばれる。

この開発コードナンバーは、BMW本社のボードメンバーの会議により開発が承認された順番に付けられる。つまり7シリーズより先に5シリーズ(E60)と6シリーズ(E63、E64)の開発が始まっていた。そのため新型のキーは5シリーズと6シリーズの開発に間に合わなかったのである。

しかし7シリーズだけでなく、1シリーズ(E87)、3シリーズ(E90)も新型のリモートコントロールキーを採用してきたことによって、残された5シリーズも採用しないわけにはいかなくなった。それが2005年の途中で変更されたということだ。これは発売してからもどんどん改良し熟成していくBMWらしさの一面でもある。

550iと650iカブリオレに搭載されたV型8気筒4.8Lエンジンは、X5 4.8isで使われていたものだ。バルブトロニックを採用したBMWの最新エンジンであるが、X5のものよりさらに進化させ、エンジンのコードナンバーがX5用のN62B48AからN62B48Bになっている。

さらに同じN62B48Bでも特性に違いがある。550i用と650i(クーペ)用は最高出力270kW/6300rpm、最大トルク490Nm/3400rpmであるが、650iカブリオレ用では270kW/6100rpm、450Nm/3400rpmと微妙ではあるが変えている。クルマごとに最適なチューニングを施すBMWらしいところであると言える。

カタログ数値より、走ったときの感覚を重視
ではなぜ650iカブリオレのピークトルクが低いのかというと、おそらくカブリオレの車両重量が関わっているのだろう。

550iより200kg以上重い650iカブリオレは、より低回転域で太いトルクを必要とする。重さを感じさせずにスイスイと発進し加速していくために、ピークトルクを削り、それより下の回転数のゾーンでトルクが盛り上がるようにしていると考えられる。

実際に650iカブリオレをドライブしたときにも、200kgの重量増を感じることはなかった。550iと同じようにアクセルペダルを踏んでいくとスーっと発進し、もっとアクセルペダルを踏み込むとグイっと力強く加速してくれた。

200kgの重量増とカタログデータのトルクダウンだけを見たら走らなくなるような気がする。しかし実際に走ったときのフィーリングを重視したチューニングをしていくと、これでつじつまが合うということだ。

もうひとつ550iと650iカブリオレではエンジンの排気音がまったく異なっていたことにも注目したい。650iカブリオレは完全なアメリカンV8サウンドで、エキゾーストパイプからボロボロッと聞こえる。特にソフトトップをオープンにして走るときは身体で感じられるほど、より低周波数が強調される。この音を聞いただけで、このクルマが北米市場とアメリカンV8サウンドを好む層をターゲットに開発されたことが明確にわかる。

しかしこのV8サウンドはエンジン回転数によって変化する。通常の走行で使っている2000-3000rpm程度(この回転域だけで充分に流れをリードして走れる)ではボロボロ音が強いが、それより回転を上げていき4000rpmくらいからボロボロ音が徐々に細かくボボボッとなって5000rpm以上ではヴィーンという連続音に変わる。

6300rpmからゼブラゾーン、6500rpmからレッドゾーンが始まるが、この高回転域ではアメリカンV8のイメージがまったくなくなるという二面性を持っている。

550iでは650iカブリオレにあったボロボロ音はほとんど聞こえない。2000rpmくらいからでもアクセルペダルを踏み込んでいくと、排気音も含めてエンジン全体でブーンという音を出している。650iカブリオレに比べ550iのエキゾーストノートは小さいといえる。

かといって550iの音がおもしろくないわけではない。ブーンというエンジン音が回転上昇とともにヴィーンに変わっていくから、慣れてくるとタコメーターを見なくても大体何回転かは予想がついてくる。また同じ回転数でもアクセルペダルの踏み込みによって吸気音が加わり、エンジン全体の音が変わるから、助手席に座っていてもその気になればドライバーのアクセルペダルの踏み込み具合を想像できる。

V型8気筒で4.8Lという大排気量であるが、高回転までしっかり回り、変な雑音や振動が出てこないところもBMWらしいところである。直列6気筒のような芯の出たコマのようにとはいかないが、音や振動、トルク感なども含めて他社のV8などとは較べものにならないほど洗練されている。

550iも650iカブリオレも、高速道路でもワインディングロードでも愉しい加速ができる。アクセルペダルを踏み込むほどにシートバックに押し付けられるGが増えるのだ。まるでM5とM6の完全AT版とでもいうような加速力だ。だからM5とM6はさらに上を目指したわけだ。そして4.8Lなのにエンジンパワーを示す車名の数字が「50」になっていることも、この加速を体験すると理解できる。(文:こもだきよし/Motor Magazine 2006年2月号より)



BMW 550i 主要諸元
●全長×全幅×全高:4855×1845×1470mm
●ホイールベース:2890mm
●車両重量:1810kg
●エンジン:V8DOHC
●排気量:4798cc
●最高出力:367ps/6300rpm
●最大トルク:490Nm/3400pm
●トランスミッション:6速AT
●駆動方式:FR
●車両価格:960万円

BMW 650iカブリオレ 主要諸元
●全長×全幅×全高:4830×1855×1360mm
●ホイールベース:2780mm
●車両重量:1960kg
●エンジン:V8DOHC
●排気量:4798cc
●最高出力:367ps/6100rpm
●最大トルク:450Nm/3400pm
●トランスミッション:6速AT
●駆動方式:FR
●車両価格:1160万円

[ アルバム : BMW 550iと650iカブリオレ はオリジナルサイトでご覧ください ]

こんな記事も読まれています

アルファロメオ『ステルヴィオ』後継モデルは、大容量バッテリー搭載で航続700km実現か
アルファロメオ『ステルヴィオ』後継モデルは、大容量バッテリー搭載で航続700km実現か
レスポンス
つくづく「クルマはコミュニケーションツールだな」という話
つくづく「クルマはコミュニケーションツールだな」という話
旧車王
「格安観光地」に成り下がった日本! 観光公害の深刻化で「宿泊税」検討も、もはや混雑“ディズニーランド並み”の現実
「格安観光地」に成り下がった日本! 観光公害の深刻化で「宿泊税」検討も、もはや混雑“ディズニーランド並み”の現実
Merkmal
BMWの4ドアクーペEV『i4』、改良新型は表情変化
BMWの4ドアクーペEV『i4』、改良新型は表情変化
レスポンス
トヨタEVの新型車「bZ3C」/「bZ3X」 北京モーターショー2024で世界初公開 知能化/電動化/多様化
トヨタEVの新型車「bZ3C」/「bZ3X」 北京モーターショー2024で世界初公開 知能化/電動化/多様化
AUTOCAR JAPAN
マツダ 新型EV2車種を北京モーターショー2024で初公開 今年度中に市場投入も 「EZ-6」/「アラタ」
マツダ 新型EV2車種を北京モーターショー2024で初公開 今年度中に市場投入も 「EZ-6」/「アラタ」
AUTOCAR JAPAN
”日本とちょっと異なる動き” ホンダ「e:NP2」/「e:NS2」 北京モーターショー2024でEV発表
”日本とちょっと異なる動き” ホンダ「e:NP2」/「e:NS2」 北京モーターショー2024でEV発表
AUTOCAR JAPAN
邪道とされた4シーターモデルが人気爆発!! ロータスに異端児「エラン+2」って知っている?
邪道とされた4シーターモデルが人気爆発!! ロータスに異端児「エラン+2」って知っている?
ベストカーWeb
まわりを巻き込む可能性もあるからヤメてくれ! 元教習所教官が語る「よく見かける」危険運転3つ
まわりを巻き込む可能性もあるからヤメてくれ! 元教習所教官が語る「よく見かける」危険運転3つ
WEB CARTOP
日産、バイドゥと協業 生成AIを用いた新機能を共同開発
日産、バイドゥと協業 生成AIを用いた新機能を共同開発
日刊自動車新聞
MotoGP、来シーズンからロゴを刷新へ。11月に新バージョンをお披露目予定
MotoGP、来シーズンからロゴを刷新へ。11月に新バージョンをお披露目予定
motorsport.com 日本版
RAYS FAN MEETING2024は圧巻の800台エントリー! 新製品も続々と注目のホイールデザインを初展示
RAYS FAN MEETING2024は圧巻の800台エントリー! 新製品も続々と注目のホイールデザインを初展示
レスポンス
ランドローバー、レンジローバー2025モデルの概要を発表
ランドローバー、レンジローバー2025モデルの概要を発表
月刊自家用車WEB
F1コミッション、ポイントシステム変更についての決定を延期。今季スペインGPでの新リヤカメラ導入では合意
F1コミッション、ポイントシステム変更についての決定を延期。今季スペインGPでの新リヤカメラ導入では合意
AUTOSPORT web
ラリー仕様の初代アルピーヌA110を手懐けてみた 求められるは「勇敢さ」 歴史アーカイブ
ラリー仕様の初代アルピーヌA110を手懐けてみた 求められるは「勇敢さ」 歴史アーカイブ
AUTOCAR JAPAN
【MotoGP】ヤマハ、カル・クラッチローによる3回のワイルドカード参戦を発表。イタリア、イギリス、サンマリノを予定
【MotoGP】ヤマハ、カル・クラッチローによる3回のワイルドカード参戦を発表。イタリア、イギリス、サンマリノを予定
motorsport.com 日本版
ホンダ「新型ミニバン」! 斬新「対面シート」&窓なしテールの「次期型オデッセイ」!? “超開放空間”実現の「スペースハブ」実現性は?
ホンダ「新型ミニバン」! 斬新「対面シート」&窓なしテールの「次期型オデッセイ」!? “超開放空間”実現の「スペースハブ」実現性は?
くるまのニュース
ランボルギーニのSUV『ウルス』に800馬力のPHEV登場…北京モーターショー2024
ランボルギーニのSUV『ウルス』に800馬力のPHEV登場…北京モーターショー2024
レスポンス

みんなのコメント

この記事にはまだコメントがありません。
この記事に対するあなたの意見や感想を投稿しませんか?

この記事に出てきたクルマ

新車価格(税込)

798.0964.0万円

新車見積りスタート

中古車本体価格

30.0948.0万円

中古車を検索
5シリーズ セダンの車買取相場を調べる

査定を依頼する

メーカー
モデル
年式
走行距離

おすすめのニュース

愛車管理はマイカーページで!

登録してお得なクーポンを獲得しよう

マイカー登録をする

おすすめのニュース

おすすめをもっと見る

この記事に出てきたクルマ

新車価格(税込)

798.0964.0万円

新車見積りスタート

中古車本体価格

30.0948.0万円

中古車を検索

あなたにおすすめのサービス

メーカー
モデル
年式
走行距離(km)

新車見積りサービス

店舗に行かずにお家でカンタン新車見積り。まずはネットで地域や希望車種を入力!

新車見積りサービス
都道府県
市区町村