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「蘇える記憶」ニコイチで生まれ変わったダイハツ・リーザとともに。

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「蘇える記憶」ニコイチで生まれ変わったダイハツ・リーザとともに。

運営元:旧車王
著者 :TUNA

銀幕への憧れはカナダを経て結実!ホンダ・シビックフェリオ(2004)

■力強く駆けるボディにオレンジ色の光を宿して取材の日は朝からあいにくの雨だった。

降りしきる雨粒の向こうから力強く駆けてくるオレンジ色のポジションライトの光を見たとき、ふと筆者の脳裏に幼少期の記憶がフラッシュバックする。

「モナ・リザのように愛されるクルマを───」

そう願い、命名されたクルマがあると昔、雑誌で読んだ。

筆者の実家にあったダイハツの軽自動車の名前がそれだった。

そのクルマは90年代半ばですら既に街中では珍しく、同車のプラモデルを駄菓子屋で見つけたとき驚きの声を上げてしまったのをよく覚えている。

天気が悪い日の夕方、両親があのオレンジ色の光とともに保育所へと迎えに来てくれたことを思い出すと、懐かしい気持ちとともにクルマへと感じていた頼もしさの原風景がそこに広がるようだ。

今回紹介する「はまっちさん」が所有するのはダイハツ・リーザ。

グレードはOXYIIで年式は1988年式だ。

土砂降りの雨のなかを駆け抜ける小さなボディは、クルマのカッコよさ・たくましさそのものを体現している。

だが、これほどに力強く走るリーザも、実は長い間眠りについていた個体。

それどころか、はまっちさんのリーザ愛がなければ公道へと復帰することがなかったかもしれない。

いわば蘇った存在だ。

2台の部品取り車から再び公道へと「蘇り」を果たしたリーザと、愛にあふれるオーナーの物語を少しだけ覗かせてもらおう。

■「雑誌広告に惚れぼれ」Uターンして即契約!愛しの初代リーザダイハツ・リーザは1986年にデビュー。

まだボンネットバンタイプの軽自動車が主流だった時代、スタイリッシュな3ドアクーペスタイルとして発売された。

いつの時代も軽自動車には個性が輝くモデルが多く存在する。

リーザも軽のスペシャリティカーらしく、軽自動車初のフルトリム化や、オープンモデルの「スパイダー」を追加し、名実ともに実用車としてだけではないムードを漂わせる存在だった。

もちろん現代の視点からもそれは衰えることなく、唯一無二のスタイリングは今も輝いて見える。

はまっちさんがこのリーザを購入したのは2019年の8月。

現在は所有してから3年目だ。

はまっちさんはかつてリーザを所有していたことがある。

それは1989年に購入した、全国400台限定車のOXY。

色はガンメタリックだった。

「元々、別の軽自動車に乗っていたんです。そのクルマはオートマチックでとても遅く、少し物足りなかったんです。しかし、あるとき、雑誌の背表紙に載っていたリーザの広告を見つけて”こんなクルマがあるんだ!”と一目ぼれしてしまいました」それから1年ほどはオートマの軽を所有し続けたはまっちさん。

ある日、幹線道路沿いのモータースの横を通りかかり、店先に並ぶリーザの姿を目にしたという。

その存在感にいてもたってもいられず、来た道をUターンしてすぐさま店頭で契約の話へと弾んでしまうほどの強烈な出会いだったそうだ。

「購入してからは後付けでエアコンやフォグランプ、ブローオフバルブなども取り付けました。スキーキャリアを取り付けて雪山へ行ったりなど、8年ほど楽しみました」クルマにまつわる趣味を楽しんでいたはまっちさんだったが、子育てなどを期にやがて変化が訪れていった。

▲はまっちさんが目を奪われたのはこのスタイリング。特にリアスポイラーはお気に入りの決め手で、過去乗っていたリーザにも装着されていたため、見つけたときには運命を感じたそうだ。

■別れと出会い、もう一度リーザに乗りたい!を叶えるために家族が増えて、子育てが中心の生活へとシフトしていったはまっちさん。

それまで8年連れ添ったリーザだったが、より広く、より利便性の高いマツダ・デミオ(DW系)へと車両を入れ替えた。

だが...。

「リーザを手離すときは泣く泣くでした。本意ではなかったものの、生活が忙しくなるなかでクルマへの熱も我慢し続けていました。やがて子どもが手離れして、生活にも余裕が出てきた数年前、ふと“またMTに乗りたい...!“という気持ちが湧き上がって来たんです」

当時、すでにデミオからアクアに乗り換えていたはまっちさん。

「軽自動車ならもう一台維持することも現実的なのでは?」という考えと「どうしてもリーザをもう一度所有したい!」という気持ちが高まっていき、リーザ探しへと奔走することになった。

「一度、インターネットオークションにとても奇麗なリーザが出品されていて、気持ちはさらに昂ったんです。しかし、その個体はタッチの差で落札することができませんでした。長らく、良い個体との出会いが果たせず、ついにはリーザのオーナーズクラブに加入するようになっていました」リーザが手に入れられないことを理由に、オーナーズクラブへ加入するほどの熱の入り込み方には恐れ入る。

しかし、そんなはまっちさんの行動力にリーザオーナーの方々も応えてくれ、リーザ探しに協力してもらえることになった。

▲購入したグレードはOXYII、元々のエンジンはキャブのターボ。元色はダークグレーだったものを、かつてのオーナーが赤く塗りなおしたものだという

まず始めに紹介してもらったのはシルバーのTR-ZZ TFI。

1989年デビューのエアロつきのスポーティーなモデルだ。

しかしエンジンは無事なものの、足回りとフロント部分が事故で破損状態。

とてもそのまま走行できる状態ではなかったが、まず実車を見に行くことになったという。

ところが、置き場へ行くと隣に赤のOXYIIが置かれていた。

既に多くの部品が取られてエンジンの調子が悪いドナー車だったが、ボディの状態は良好。

なんとその場で2台購入し、一台のリーザとして蘇らせる計画が始まったのだ。

■とうとう見つけたリーザ。しかし立ちはだかる壁は低くないバブルの時代を経て販売され、追加仕様が増えていったリーザ。

時代に合わせて進化を遂げた存在だったが、それゆえに専用設計の部品が多く、レストアを行うには壁が立ちはだかった。

「シルバーのTR-ZZはEFI、OXYIIはキャブ。エンジンは同じなので何とかなると楽観的でしたが、実際はインタークーラーの位置などが異なり、かなり加工が必要でした。ただ、整備工場の方々やパートナーの知恵と工夫でなんとか形にすることができました」一言では語り尽くせないくらいの工程と時間を要したことは想像に難くない。

そして2台のリーザも再びこうして公道を走り、イベントの会場にまで並べる日が来ることを想像していなかっただろう。

はまっちさんは蘇ったリーザとともに、行動範囲も広がっていくようになる。

▲エンジンはTR-ZZ用のEB型 直3 SOHC 550cc EFIターボ。車体はOXYIIとニコイチして蘇った

「以前は“若者のクルマ離れ”なんて言葉を、同世代の方々が嘆いているのを耳にすることもありました。しかし、リーザに乗って実際に旧車のイベントやオフ会に出かけて行くと、自分の子どもよりも若い世代が深い知識を持って情熱的に語っているのを見ると”クルマ離れ”なんてないということを知ることができました」▲かつて平成元年に購入したリーザと改めて令和元年に購入したリーザ。当時のカタログを眺めながらエピソードに花が咲く。イベントでも注目されることが多くなった最近だが、はまっちさんにとってリーザはまだ完成していないという。

「オールペンもしてあげたいし、痛んでいる部品の多くは出てこないので製作することになるでしょう。でも、長年封印していた部分をアップデートしていくような気持ちで作り上げていけたらと思っています。今後もいろいろな場所に連れていきながら、人々の笑顔を増やしてくれるような車にできたら嬉しいですね!」現在進行形で紡がれ続けるリーザとはまっちさんの物語。

オーナーの強い気持ちに応えるように、出会うべくして出会った相棒かのように見えてくる。

「蘇える記憶」が、未来へと繋がる道へと再びリーザを導いた。

これからどんな物語にであうのか、今から楽しみだ。

[ライター・撮影/TUNA]

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