ここまでやる必要があるのか……
text:Kenji Momota(桃田健史)
【画像】アクセルとブレーキ踏み間違い抑制システム 先行導入の2種【詳細】 全52枚
「普通に走っている時、急にアクセルを踏んでもクルマが加速しない」
こう聞いて、その目的や、機能について、あなたはどのようなイメージを持つだろうか?
トヨタは今年(2020年)7月1日、新たな「急アクセル時加速抑制」システムを発売した。
新車向けでは「プラスサポート」という名称。7月1日発売の「プリウス」と「プリウスPHV」から搭載し、今後、対応車種を随時増やしていく。
対応には、プラスサポート専用スマートキー(1万3200円)が必要だ。
後付けの「踏み間違い防止装置」では「システムII」として発売する。対応車種は、プリウス(2015年12月~2020年6月生産のインテリジェントクリアランスソナー非装着車)から導入する。
価格は取り付け費など諸経費を含まず、税込み3万5000円。
その後、「SAI」(2009年10月~2018年2月)向けに2020年11月、「クラウン」(2008年2月~2012年12月)、「マークX」(2009年10月~2016年11月)には2021年1月に発売予定だ。
これら、プラスサポートと踏み間違い防止装置システムIIについて、筆者(桃田健史)は今年2月3日、トヨタ本社から技術的な説明を受けていた。
その際、「かなり思い切ったことをやるな」と感じたのと同時に「ついに、ここまでやらなければならないのか……」という複雑な気持ちにもなった。
なぜか?
まず停車時/低速 エンジン回転を抑制
近年、全国各地で高齢ドライバーによる「アクセルとブレーキを踏み間違い」で起こる事故が目立つ。
例えば、コンビニやスーパーなどの駐車場で、輪留めを乗り越えて店舗に激突する事例。運転者は「ブレーキを踏もうと思ったら、なぜか間違えてアクセルを踏んでしまった」と、事故後の現場検証で話すことが多い。
「アクセルとブレーキの踏み間違い」は、高齢ドライバーのみならず幅広い世代で実際に起こっています」(メーカー関係者)
「各メーカーは独自調査を行っており若い世代は間違いに気付いたら、アクセルから足を離してブレーキに踏みかえますが、高齢ドライバーは反射神経の衰えや、筋力の低下によって、そうした咄嗟の対応ができない」という。
こうした状況に対応するため、メーカー各社がまず採用したのが、ソナー(赤外線センサー)やカメラなどを使って、停車時または低速走行時(トヨタは0-15km/h)で前方や後方の障害物を検知し、急にアクセルを踏んでもエンジン回転数を一定の時間、抑制する装置だ。
トヨタの場合、2019年12月時点で新車のうち装着率は約83%に及ぶ。
さらに、既存車向けの後付け装置については、トヨタが2018年12月から製品化し、その後にダイハツなど各メーカーの採用が始まった。
そして今度、トヨタは走行中のアクセル抑制に着手したのだ。
ビックデータ判断 思い切った決断
新たに始まった、トヨタのプラスサポートと踏み間違い防止装置システムIIの目的は、「前方に障害物が無い場合の暴走を抑止する」ことだ。
急激にアクセルを踏むのが不自然な状況で、エンジン回転数が上がらないよう制御を入れる。そうした不自然な状況を、どうやって判断するというのか?
使うのは、ビックデータだ。
トヨタは2018年6月、「クラウン」と「カローラスポーツ」を皮切りに、データ・コミュニケーション・モジュール(DCM)というデータ送受信機の運用を始めた。
車両の走行情報を約1分間に1度の割合でクラウドに送信するシステムだ。データの中には、アクセル開度、ブレーキやウインカー操作状況、ハンドルの切り角、さらに道路の勾配などが含まれている。
これらデータから、「アクセル踏み間違い推定アルゴリズム」をトヨタ独自に開発した。
けっして、個人の運転状況を特定して、通常の走行との差を検出するのではない。あくまでも多くのデータから、不自然なアクセル操作を統計的に割り出す仕組みだ。
例えば、坂道やウインカーを出しての車線変更時などでは、アクセルを抑制しない。
さらに、この機能を使うには、前述のように専用のリモートキーが必要だ。同じクルマを、家族の中で使い分けることができる。
他メーカーはどうするのか?
今年2月時点で、トヨタは「アクセル踏み間違い推定アルゴリズムを、他のメーカーとも共有していきたい」と説明している。
むろん、データ自体は各メーカーにとっての貴重な資産であり、かつ運転者のプライバシーにも関わることもあり、すべての共有することは難しいだろう。
だが、制御の考え方を共有することで、事故のリスクが軽減されるにつながる。
皆の目標は、事故のない世界。または、事故が少ない世界なのだから。
完全自動運転になれば、それは実現できるのかもしれない。
とはいえ、市中で様々な技術レベルのクルマが混在する時期がまだ当分の間続くことは確実だ。また、高速道路の一部を自動運転専用ラインにする案や、都会で深夜に自動運転での配送を行う案など様々ある。
そうした中で、「アクセルとブレーキの踏み間違い防止」システムは、高齢ドライバーへの技術的な支援として、また広い世代での起こり得る突発的な体調不良時の対策として、とても現実的な解決手段だと思う。
今後、各社のビックデータの収集と解析が進むことで、システム作動の精度が上がることを期待したい。
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