ランボルギーニ販売絶好調 前年比28%増
text:Kenji Momota(桃田健史)
【画像】今でもタダならぬオーラ ミウラ/カウンタック/アヴェンタドール/ウラカン【新旧比較】 全98枚
ランボルギーニ・ミウラ。60~70年代、いわゆる「スーパーカー」の中でも別格の風格がある。
現在、世界で流通する個体数はかなり少なく、AUTOCAR(2018年2月)掲載の記事では、海外オークションでの取引価格について一時、ミウラP400Sは1億5000万円級の値をつけたと報じた。
AUTOCAR英国編集部が今年(2020年)2月に掲載した、イタリアのアルプスで行ったミウラP400試乗記では、同車のオーナーが、程度の良いモノは3億円級ともコメントしている。
超高級クラシックカーとして、世界のメディアでミウラが登場することは多い一方で、次期ミウラに関する情報は最近ほとんど耳にしなくなった。
ランボルギーニのモデルラインナップは現在、V12搭載の「アヴェンタドール」(日本国内価格:4000万円代中盤から6000万円代前半)。V10搭載の「ウラカン」(2000万円代後半から3000万円代後半)。そして、2018年に発売されたランボルギーニ初のクロスオーバーSUV「ウルス」(2000万円代後半)という、大きく3本柱で構成されている。
ランボルギーニは2020年3月、2019年の世界販売実績を公開。それによると、総売上額は前年比28%増の18.1億ユーロ(約2121億円)と過去最高を更新した。
モデル別販売台数は、ウルスが4962台、ウラカンが2139台、アヴェンタドールが1104台と、ウルス効果が大きい。
こうした中で「ミウラ復活」はアリか?
がっかりだった「ミウラ・コンセプト」
ミウラ復活が現実味を帯びたことがある。
2006年1月の北米国際自動車ショー(通称デトロイトショー)のランボルギーニ記者会見。世界のメディアが熱い視線が集まる中、アンヴェールされたクーペモデル。
ミウラ・コンセプトだ。
筆者(桃田健史)はその現場にいたが、第一印象は「これは、ミウラではない」だった。日米欧のメディアとも現場で意見交換したが、多くがネガティブな意見だった。
ここでいうネガティブとは、「これをミウラと呼んでしまい、量産することは、ランボルギーニのブランド価値を大きく損ねる」という意味合いである。
それほどまでに、ミウラ・コンセプトはミウラではなかった。
なにせ、ボッテリしている。
初代ミウラが持つ、精悍さとエレガントさは微塵も感じられない。
また、妙に背が高い。
真正面から見ると、ドッシリ感がない。初代の雰囲気をなんとなく感じたのはリアパネルのデザインだけだった。
現場で、ランボルギーニのデザイナーらに話を聞く上では、彼らは「現代版ミウラ」に自信満々だった。エンジンも「初代のように横置きをイメージ」というが、技術的な裏付けはまったくなかった。
ミウラ生誕40周年記念品として、こうした張りぼてを公開したことは当時のランボルギーニ経営陣の大きな失敗だったと、改めて思う。
北米依存の弊害 リーマンショックで白紙
ミウラ・コンセプトが登場した2006年頃、アメリカではスポーツモデルの60年代回帰がトレンドになっていた。
フォード・マスタング、シボレー・カマロ、ダッジ・チャージャーなど、いわゆるマッスルカーが復活。
パフォーマンス系もフォードはSVT(スペシャル・ヴィークル・チーム)も事業規模を拡大。その一環として、60年代の「GT40」の現代版としてフォード「GT」を量産化した。
このフォードGTと、ミウラ・コンセプトが時期的にダブってしまったことで、ミウラ・コンセプトがメディアや一般ユーザーの目に「アメ車っぽく」映ってしまった、ともいえる。
正直なところ、デザインとしては、量産フォードGTの方が出来が良い印象だ。
見方を変えると、初代ミウラのデザインは、実に巧妙で、微妙なバランス感の中で成り立っている、といえる。衝突安全に対する車両設計が重視される中、ミウラ次世代化を実現することは難しい。
ミウラ・コンセプト登場の2年後、ミウラ復活の話は完全に途絶える。アメリカを震源とする金融危機、リーマンショックだ。
当時、中国はまだ経済発展途上にあり、ランボルギーニとしてもアメリカ頼みの可能性が消えたことで、ミウラ復活シナリオは白紙となる。
では、ミウラ復活について、初代ミウラのデザイナーはどのように受け止めているのか?
「復活」の文脈で語るクルマではない
ミウラ・コンセプトがデトロイトで公開される1年ほど前、筆者は初代ミウラをデザインした、マルチェロ・ガンディーニの自宅を訪問した。場所は、イタリア・トリノ郊外。
トリノには、カロッツェリアと呼ばれる自動車デザインや部品の設計を行う企業が数多く生まれた。
そのうちの1つ、ベルトーネでデザイナーを務めてた、ガンディーニ。
制作に携わったモデルは、ミウラやカウンタックの他、ランチア・ストラトスなど、スーパーカーが数多い。
そんなガンディーニに、ミウラやカウンタックを描いた頃のことを聞くと、あの部分で苦労したとか、こうした発想がデザインの基本にある、といった過去を懐かしむような雰囲気はなかった。
「ミウラにしても、カウンタックにしても、デザインを依頼されたその時点で、量産化可能な技術要因を十分に踏まえた上で、感性を研ぎ澄ませた。その結果である」と、あくまでも工業デザイナーとして現実を重視したという答えが、印象に残った。
ランボルギーニ・ミウラとは、60年代に登場した一代限りのモデル。次世代型とか、復活といった文脈で語るようなクルマではない。
ミウラを描いた、その人と語り合いながら、そう感じた。
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