スズキは2023年10月3日、「JAPAN MOBILITY SHOW2023」の出展が概要を発表した。
このニュースを受けて、自動車産業界の様々なところから「ついにスズキが(EVで)本気になった!」という驚きの声が聞こえてくる。その内容とは?
EVラインアップ強化の中、様々な電動小型モビリティ登場
出展車を見ると、四輪車では、EV世界戦略車第一弾「eVX」を筆頭に、軽ワゴンEV「eWX」、商用軽バンEV「e EVERY CONCEPT」が出る。
さらに注目は、様々な電動小型モビリティにある。
例えば、次世代四脚モビリティ「MOQBA(モクバ)」は、ベースのシャーシとアタッチメントを組み合わせて、ボディバリエーションを「椅子モード」、「立ち乗りモード」そして「担架モード」へと変身させる、電動パーソナル/マルチユースモビリティだ。
高齢者向け、観光向け、さらに災害時での対応などで実用化が大いに期待される参考出品である。
イメージとしては、米シリコンバレーのスタートアップが考案するような次世代ロボット型のモビリティとも言えるだろう。
特定原付の四輪版が登場
次いで、「SUZU-RIDE」と「SUZU-CARGO」については、いますぐ量産されても不思議ではない印象がある。
キモは、車両区分が「特定小型原動機自転車(特定原付)」であること。
特定原付については、2023年7月1日に改正道路交通法が施行されてから、いわゆる電動キックボードに世間の注目が集まった。
車両規定としては、特定原付は2輪、3輪、または4輪が可能であり、今回スズキの提案は四輪の特定原付となる。
そのため、16歳以上では免許不要で、最高速度は時速20km以下。一定の技術条件を満たせば時速6km以下で一部の歩道を通行することも可能となる。
さらに、電動小型配送ロボット「LM-A」も出展する。2023年4月1日の改正道路交通法の施行により、「遠隔操作型小型車」の実用化への道が開かれた。
このように、スズキは直近での法改正を鑑みて、実用における利便性を十分に考慮した様々な電動小型モビリティを世に送り出そうとしているのだ。
スズキはこれまで、小型電動モビリティとしては、電動車いす「セニアカー」を企画製造・販売してきた。今後も、セニアカー事業は継続する。
電動車いすでは、医療関連製品という立ち位置があり、スズキとしてはその枠を超えたモノづくりや市場展開について”あえて控えてきた”印象がある。実際、筆者はスズキ本社を介してセニアカー関連の取材をしてきており、そうした実感がある。
今回の様々な小型電動モビリティ登場は、明らかに「次世代に向けた方向転換」というイメージだ。
2030年に向けた成長戦略を社会実装へ
では、なぜこのタイミングでスズキは小型電動モビリティを含めて、様々なEVに開眼したような、企業としての動きを見せているのか?
背景にあるのは、2023年1月26日に記者会見を開き発表した、「2030年度に向けた成長戦略」だ。
近年、スズキがこうした、中期経営計画ではない将来ビジョンを作成して公表することはなかった。
だた、スズキに限らず、自動車産業界が今、地球環境対策や戦争に起因するエネルギー・経済安全保障問題など、喫緊の重要課題に直面しており、さらに日本を含む先進国では高齢化への対応も求められているところだ。
その上で、スズキとしては経営陣を新体制として、「シン・スズキ」とも言うべき大変革を進めようとしている。
こうした「スズキが大きく変わろう」という意思を、新たに誕生するJAPAN MOBILITY SHOWの舞台をフル活用することになる。
その現場でスズキの自信作である各モデル・実車に触れて、開発陣の思いをしっかりと聞いてみたい。
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