■新型ヤリスはどれほど進化した?
トヨタ「ヴィッツ」の後継モデルとして2020年の2月中旬に発売を予定している新型モデルが「ヤリス」です。ヤリスは従来モデルよりも走りに力を入れたモデルだといいますが、どれほどの実力があるのでしょうか。
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今回、サーキットで試乗出来たのは、最終段階のプロトタイプ。まず外観デザインを見て感じたのは、躍動感のあるスタイルです。
ほぼ同じタイミングで新型が公開されたライバルのホンダ「フィット」が丸みを帯びた優しい雰囲気なのに対して、ヤリスは鍛え上げた筋肉のような力強さを感じます。
試乗は、最初に1.5リッターガソリンエンジンを組み合わせたハイブリッドモデル。エンジンはもちろん、構成部品単位でみるとハイブリッドシステムも新設計されています。
走り出してすぐ、駐車場内のようなごく低い速度でまず感じたのが、アクセルの反応の良さです。「ツキ」といわれるアクセルオフから軽くアクセルを踏んだ時のクルマの反応がよく、わずかな速度コントロールもしやすいことに驚きました。
従来型のハイブリッド車は、アクセルを踏んだときの反応が鈍く、微妙な速度調整がしづらかったのとはずいぶん対照的です。
もう少し速度を上げていくと、アクセルを踏み込んだときのモーターアシストが強まっていることが伝わってきました。
モーターでググッと押し出されるのがよくわかります。開発者は「モーターのトルクアシストは従来に比べて約30%アップ。中間加速のシステム出力は約16%アップしている」といいます。
従来よりもモーターの活用が増えたことを、実際に走って感じることができました。また、100km/hを超える速度でアクセルをオフしてみると、従来とは異なりエンジンが停止することも確認できました。
高速走行中にも状況に応じてエンジンを止めることで、従来のハイブリッド車が苦手とされてきた高速燃費の向上に効くはずです。
開発責任者の末沢泰謙氏(すえざわやすのり)は、「トータルで20%の燃費アップ(欧州WLTCモード)が目標。高速燃費の向上も新型の狙いのひとつ」とはいいますが、「20%」という数字はとんでもない目標です。
そして、このタイミングで説明するのですから、実現の目処はついたということでしょう。そんな高い目標をサラッといってしまうところが、ヤリスの凄さのひとつと感じました。
最高速度が100km/h 以上に達する一方で30km/h程度まで車速が落ちる場所もある曲がりくねったテストコースを走って強く感じたのは、心地よく走れるということです。
従来のハイブリッド車は、アクセル操作に対する反応や加速フィールが不自然で、燃費は優れていましたが、加速が心地いいとはいえませんでした。
しかし新型ヤリスは、アクセルを踏み込むとまずはエンジン回転が急激に高まってその後車速が伸びるという感覚的に不自然な様子をなくし、同様にアクセル操作してもエンジン回転上昇と車速上昇がリンクして違和感がなくなりました。
その結果、サーキットのような場所でも運転を楽しめるパワートレインへと進化していたのです。これは大きな変化です。
■ガソリン車はどう? ヴィッツからヤリスに名前が変わった理由とは?
一方、ハイブリッドシステムを搭載しない1.5リッターエンジン車は、モーターアシストがないので絶対的な速さではハイブリッド車に及びません。
しかし「ダイレクトシフトCVT」と呼ぶ新開発のトランスミッションはダイレクト感が強まり、CVTの「空走感」が驚くほど感じられなくなったことを実感しました。パワートレイン全体がシャープになった感覚です。
さて、ハンドリングはどのような進化を遂げているのでしょうか。結論からいうと、進化幅の大きさに驚きました。
素晴らしかったのは、クルマの挙動の安定感です。ブレーキをかけてから旋回、そして立ち上がりまでの動きにギクシャク感がなくスムーズ。
ロールのコントロールが巧みで、乱暴にハンドルを切ってみてもグラッと嫌なロールがすることもなければ、ハンドリングが極端に乱れることもありません。
いわゆる「懐の深い走り」でライントレース性が抜群に良いので、高速コーナリングでも不安がないし、限界走行領域でも楽しく走ることができました。
ここまでハンドリングがレベルアップした背景には、サスペンションのチューニングだけではなく新設計されたプラットフォームやボディが大きく効いています。
「ひとクラス上の走り」を合言葉に、それを実現するためにボディは環状構造やブレースを多く採用し、クラストップレベルの高剛性ボディを開発。そのうえでしなやかに動くサスペンションを組み合わせることで、挙動がブレない安定した走りを身に付けたというわけです。
前出の末沢氏は、「トヨタを代表するコンパクトカーとして、世界に通用する走りを目指しました。ヤリスといえばWRC(世界ラリー選手権)でも活躍するクルマので、市販車でもレベルの高い走りを皆さんにお届けしたいと思っています」といいます。
ところで、このヤリスは従来「ヴィッツ」と呼ばれていたモデル。海外向けモデルは従来から「ヤリス」という名称で、日本だけが「ヴィッツ」だったのですが、新型は日本でも「ヤリス」と呼ばれるようになったのです。
車名変更の理由は気になるところですが、末沢氏は、次のように説明しています。
「理由は3つあり、ひとつは性能がジャンプアップしたからです。『パブリカ』から『スターレット』、そして『ヴィッツ』になったように、トヨタのコンパクトカーは大きな進化をするときに名前を変えてきました。
ふたつめは、WRCでの活躍です。2020年は日本ラウンドの開催も正式に決まり、その活躍を日本の人たちにも感じて欲しいと思っています。
そして最後は、販売が全チャネル扱いになること。これまではネッツ店の専売車種でしたが、全店舗で扱うことになりました。そこで、新しいコンパクトカーだと感じてもらうためです」
※ ※ ※
新型ヤリスの発売は2020年2月中旬の予定。テストコースでここまで好印象なのですから、公道での日常領域の試乗が楽しみです。
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