この記事をまとめると
■2023年9月6日にトヨタがSUV風なスタイリングの「新型センチュリー」を発表した
SUVスタイルの新型センチュリーは結婚式や葬儀でアリorナシ? クルマのドレスコードを考えてみた
■1968年に登場した初代センチュリーから歴代モデルは和のイメージを具現化していた
■新型センチュリーは日本らしさを表現した「和テイスト」で日本より海外市場のほうがウケいいかもしれない
自動車輸入の完全自由化に備えて誕生した初代センチュリー
2023年9月6日、トヨタは「新しいセンチュリー」として、通称センチュリーSUVをお披露目した。いままではセダンスタイルのみのラインアップだったセンチュリーにSUV風スタイルのモデルが誕生したのである。
センチュリーといえば、内閣総理大臣や皇族なども使用するショーファードリブン(運転手付きで後席に乗るクルマ)カーとなる。一般ユーザーへも販売されているが、誰でも欲しければ買えるというわけでもないようで、ある意味トヨタの上級ブランド「レクサス」より日本国内では格式の高いモデルとなっている。
手組みで作られたV型12気筒エンジンを積んだ2代目を個人輸入して乗っている海外のマニアも目立っており、国内専売が大原則のモデルの割には海外のクルマ好きの間では知名度も高くなっている。
そのセンチュリーの初代は1967年にトヨタグループ創設者である豊田佐吉氏の生誕100年のタイミングでデビューしている。1965年に日本は自動車輸入の完全自由化が行われた。輸入車が多く市場に流入することが予測されるなか、当時は世界的にも先進的で性能も良かったアメリカ車に照準を合わせ、トヨタでは当時の2代目クラウンをベースに、ホイールベースや全長を延長、トレッドの拡大、そして全幅を拡大し、2.6リッターV8を搭載したクラウン・エイトを1964年4月に発売している。
他メーカーでも2.8リッター直6を搭載した日産セドリック・スペシャル(1963年発売)や、2.5リッター直6を搭載したプリンス・グランド・グロリア(1964年発売)をラインアップし、自動車輸入自由化に備えた。
そして、その次のステップとして初代センチュリーが登場したものと考えられる。
初代センチュリーはクラウン・エイトの後継とも表現できるのだが、2代目クラウンが当時のアメリカ車の直線基調デザインを強く意識しているのに対し、徹底的に和にこだわったところが大きな違いで、現行型で3代目となるものの基本的なスタイルは大きな変更を受けずに令和のいまもラインアップされ続けている。
初代センチュリーは2代目クラウンを大きくしたクラウン・エイト比で、全長で260mm、ホイールベースで120mm延長、全幅を45mm拡大している。搭載エンジンもV8はそのままだが、排気量をクラウン・エイトより400ccアップして3リッターとした。
エクステリアは当時のニュースリリースにも「日本を代表する最高級大型乗用車にふさわしく、クラシックな荘重さをただよわせる独創的スタイル」としており、和のイメージを重視している。
ちなみにリリースでは、日本で初めてボディカラーに日本名をつけたとされている。
オリジナリティにこだわった「和テイスト」は新型でも健在
センチュリーがある意味「和のテイスト」、つまり日本のショーファードリブンカーを目指したのに対し、日産が1965年に発売した初代プレジデントは、センチュリーのライバルともいえるのだが、当時のアメリカ車のトレンドでもある直線基調のエクステリアを採用しており、センチュリーとは対照的なモデルとなっていた。
初代センチュリー、初代プレジデントともに開発への熱量が大きかったのか、息の長いモデルとなっていた。初代センチュリーは1997年まで規模の大きいマイナーチェンジを行いながら継続して販売された。初代プレジデントは解釈の問題もあるのだが、日産では初代は1973年までで、1973年から1990年までが2代目となっている。この2代目のパワートレインが初代のキャリーオーバーであったことなどから、初代の大規模マイナーチェンジモデルとしてカウントする見方もあり、そうなるとプレジデントも息の長いモデルといえる。
プレジデントは1990年に当時の「インフィニティQ45」をベースとした3代目がデビュー。その後、4代目もラインアップされたが2010年に絶版となっている。
初代センチュリーは、日本の伝統美を反映させた和テイストの強いモデルだったので、当時のアメリカなど海外のトレンドを追いかけず、オリジナリティにこだわったという点で、いまもなお初代コンセプトを守り続けてきている。
しかし、今回発表されたセンチュリーSUVは、海外へも積極的に輸出されるのではないかとの情報もある。筆者個人の主観でいえば、日本より海外市場のほうがウケは良いように見える。
その意味では、センチュリーと言うモデルも和と言うものには引き続きこだわるものの、日本人の美意識にこだわらない、世界的に愛される「和テイスト」というものを捉えるという、新たな変革期を迎えたといってもいいのかもしれない。
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