これだけミニバンが世に普及しても、重度のクルマ好き、いわゆる「カーマニア」や「エンスー」と呼ばれる人種にとって、スライドドア車なんて乗れない! と考えている。一方で、独身時代はヒンジドアを貫いてきた漢たちでも、幼い子どもやママたちを前にして、泣く泣くスライドドアに乗り換えるパターンが見られるのは確かだ。
そこで今回は、カーマニアを自称しながら過去に一度だけスライドドアを購入した経験のある清水草一氏に、「スライドドアながらクルマ好き的需要も満たすクルマ」を5台選出してもらった。はたしてスライドドア車にカーマニアを納得して購入させるだけの魅力的なポイントが見つかるのだろうか?
アルファードオーナー予備軍も必見!? 残クレを組んで得する人 損する人の分岐点とは
文/清水草一 写真/トヨタ、ダイハツ、本田技研工業、グループPSA
【画像ギャラリー】走りよし、使い勝手よし、個性よし!! 満足度の高いスライドドア車たち(写真12枚)
■現在は充実したラインナップから選べる!
軽自動車からフルサイズモデルまであらゆるクラスのモデルが揃っている日本はまさにスライドドア天国!
クルマ好き、運転好きにとって、スライドドア車など邪道中の邪道! という感覚は、多少なりともあるのではないだろうか。そんなのクルマじゃなくてバスだ! 単なる移動のための道具だ! という(バスマニアの皆様、申し訳ありません)。
そう考えるのは、昭和世代に限らない。20代、30代であっても、尖がったクルマ好きには、「男は黙ってヒンジドア」という思いがあるようだ。つまり、運転手が主役のクルマである。スライドドア車は、自分以外の家族が主役。主役の座を奪われる悲しみは、俳優だけのものではない。
そんな時、30代のクルマ好きから、こんな相談を受けた。
「ずっとMTのスポーツカーを乗り継いできましたが、子どもが生まれて、さすがに乗り換えを迫られ、今は4枚ドア車です。しかも、最近子供が一人増えました。3歳と1歳の我が子を前に、スライドドアの誘惑にかられています。カングーのディーゼルMTは本気で欲しかったですが、あっという間に売り切れ。スライドドアながらエンスー的需要も満たすクルマはないでしょうか?」
実は筆者も、そういう子育て期に一度だけスライドドア車(エスティマ・ルシーダ)を買ったことがある。しかしその運転感覚は、まさに「バス」だった。納車3日後には海に沈めたくなるほど退屈で、1年半で買い替えた。当時(90年代前半)はまだスライドドア車自体がそれほど多くなく、選択肢が限られていたのである。
しかし今は違う。スライドドア車は国内販売の主力だけに、あらゆるラインナップが揃っているし、なかには運転が楽しいクルマもある。そこで今回は、使い勝手やサイズなどは完全に無視し、「スライドドアだけど運転が楽しくて、クルマ好きに刺さるクルマ」という視点で、意外な(?)ベスト5を選んでみた。
■5位/まさか! のアルファード
2021年4月に一部改良され、ワンタッチスイッチ付デュアルパワースライドドア、アクセサリーコンセントを全車標準装備となったアルファード
「ええっ!?」っと思われたクルマ好きも多いだろう。アルファードは、いわゆるエンスー好みとは対極に位置する大型ミニバン。エンスー最大の敵と言っても過言ではないのだから。
現行型アルファードが登場した時は、そのデザインのインパクトに衝撃を受け、感服した私だったが、走りはまったく物足りなかった。オラオラ顔の割には、ハイブリッドでもガソリンでも絶対的なパワーが足りずにオラオラできないし、なによりボディ剛性が足りない。このクルマは、走りの楽しさなんかどうでもよく、ひたすら見た目の威圧感と室内のゴージャスさだけを追求している……と認識した。
しかもゴージャスなのは装備だけで、ボディ剛性不足により、乗り心地もあまりよくない。こんなクルマに乗っている日本のVIPたちはカワイソーだな(2列目でも)、とすら思っていた。
しかし今年、久しぶりにアルファード(ハイブリッド)に乗ってビックリ。印象が大幅に変わっていた。ボディはしっかりしているし、ハイブリッドのアクセルレスポンスも妙にいい。ちょっとコーナーを攻めてみても、驚くほど安定している。いつのまにこんなクルマになっていたんだ!? 結構走りが楽しいぞアルファード! だからって、エンスーは買わないと思いますが……。
■4位/かわいくてホンワカしたムーヴ キャンバス
ベースモデルもカラフルでかわいいボディカラーが揃うムーブ キャンバスは特別仕様車も数多く発売されている
これまた「ええっ!?」な選択だろう。軽トール/ハイトワゴンなら、N-BOXの評価が圧倒的に高いし、売れ行きもダントツだ。なぜクルマ好きに勧めるのがN-BOXじゃなく、ムーヴ キャンバスなのか?
実はN-BOXについては、私は評価を保留している。確かに広報車両の乗り味は凄まじく良かったが、ディーラー試乗車は足まわりがフニャフニャで、ぜんぜんよくなかったのだ。同じく自動車メディア関係者で、ディーラー試乗で「全然違う!」とガッカリしたという人が他に一人。それだけでは断定できないものの、保留なのです。
だから、というわけではないですが、いっそスライドドア車に乗るならば、これくらいホンワカした選択も、エンスー的にアリなのではないだろうか? ムーヴ キャンバスの見た目は超ホンワカしているが、走りも実にホンワカしている。ただ、N-BOXなどのハイトワゴンより全高が10cmくらい低いので、重心はそんなに高くない。
見た目のかわいさも、エンスーにとってはハードルが高いだろう。しかしクルマ好きたるもの、変化を恐れてはイケナイ! せっかくなら、これくらいの落差を経験してみようじゃないか! 子どもが大きくなって、車内でおしめを替える必要がなくなったら、またキリッとしたクルマに乗り換えればいい。ムーヴ キャンバス、すっごく癒されるよ~。どうしてもムーヴキャンバスがダメなら、ワゴンRスマイルもいいと思います。
■3位/DCTのダイレクトな変速が味わえるフリードハイブリッド
扱いやすい5ナンバーサイズながら室内空間が広いフリードは大人気で、この夏、累計販売台数が100万台を突破したばかり!
フリードの走りは実にしっかりしている。コンパクトなのでミニバン的な重ったるさもほとんど感じず、軽快に走ってくれる。しかもハイブリッドモデルは、ATがDCT! DCTだけにダイレクト感は高いし、CVTじゃない段付きミッションというだけで、クルマ好きには超ウレシイ!
このホンダDCT、先代フィットで登場した当初はリコール連発だったが、今はもう大丈夫! 当時に比べるとDCTの変速タイミングが少しゆっくり目になってるけど、私はぜんぜん気になりません。しかも、このハイブリッド用DCT「i-DCD」は、間もなく絶滅する。先代フィットと先代ヴェゼルという仲間たちは、モデルチェンジですでに消えた。残るはフリードハイブリッドだけ。買うなら今のうちだ!
■2位/オシャレディーゼルのベルランゴ
欧州で人気のレジャーアクティビティビークルとして、2020年に日本導入がかなったシトロエン・ベルランゴ
日本仕様のベルランゴにMTはなくATだけ。そこに関しては、すでに売り切れたカングーディーゼルにかなわないが、ATでいいならベルランゴは実にスバラシイ!
一番スバラシイのは、フランス車らしい、路面をつかんで離さない接地感の高さだ! もちろん1.6Lディーゼルターボエンジンのトルクと燃費も魅力的。アバンギャルドなデザインもスバラシイ! シトロエンという段階ですでに完全にエンスー向けだし。
カングー亡き後(日本未導入のニューカングーは、デザインも全幅もゼッタイ許せません……)のエンスー向けスライドドア車は、ベルランゴがエースだぜ!
■1位/DNGAがスゴイ! タント
2020年12月の一部改良では、ボディカラーの追加などが行われたタント
1位がタント。これについては、私自身、忸怩たる思いがある。私だって「タントが1位かよ~!」と思っている。でも、あの価格と居住性であの操縦性は、凄いとしか言いようがない!
トヨタのTNGA(トヨタ・ニュー・グローバル・アーキテクチャー=トヨタの新しいプラットフォーム)採用モデルはどれもこれも走りがいいが、そのダイハツ版であるDNGAもスゲエ! まだタントとタフトだけだけど、SUVのタフトより、タントの操縦性が圧倒的にスゲエ!
あんなに背が高いのに、低重心感がハンパじゃない! 峠でコーナー攻めて楽しいんだから驚愕だ! 重心が低い分、足まわりをしなやかにできたので乗り心地もイイ! この凄さがわかるのはエンスーだけ!
でも、あの頭でっかちのカタチを見ると、やっぱり「……」となってしまいます。新型ムーヴキャンバスがDNGAでリボーンするのを待つべきか? その時はデザインを超キープコンセプトでお願いします! N-ONEみたいに形はほとんど1mmも変えずに、シャシーだけ変えて! そしたら真剣に私も欲しいなぁ。
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