圧倒的に広い座席間隔!
夜行バスの高級志向には2つの方向性があります。ひとつは1+1列配置で個室、あるいは半個室化に進む路線です。全但バス「ラクシア」、関東バス「ドリームスリーパー」、西鉄バス「はかた号」、海部観光「マイ・フローラ」、JRバス「ドリームルリエ プレシャスクラス」など。これらはプライベート空間が確保され、かつリクライニングも大きく倒れる快適な設備ですが、定員が少ないためか普及しません。
2つ目は1+2列配置で、極限まで快適性を追求した座席です。今回紹介するウィラーエクスプレス「リボーン」は、現行のウィラー夜行バスで最上級に位置づけられる設備です。
「リボーン」の座席は硬い“シェル”で覆われており、壁で仕切られて半個室の感覚を得られます。より新しい1+2列配置「ドーム」は頭の部分をフードで覆うようになっていますが、「リボーン」はフードがなく、すっきりとお洒落な車内です。
特徴は圧倒的に広い座席の前後間隔です。1+2列の「ドーム」が108cm、1+1+1列配置の「ラクシア」が116cm、「コモド」が93cmなのに対して、「リボーン」は158cmもあります。新幹線の最高級設備「グランクラス」ですら130cmですので、いかに解放的かが分かるでしょう。1+2列で定員は18人ですから6列しかなく、進行方向の面積は定員11 12人の1+1列個室バスと同等かそれ以上です。
筆者(安藤昌季:乗りものライター)は2024年8月末、大阪のなんばOCATから東京ディズニーリゾートを結ぶ「WX272便」に乗車しました。
予約した01A席は、2人掛けの窓側最前列です。着席して驚いたのが、座席の前に置かれたフットレスト兼テーブルがとても大きいこと。1+1列の個室バスを含めても「リボーン」の01A、01C席が、最も荷物を置ける座席だと感じました。ただ、01B席の前には荷物置き場やフットレストがないので、格差があります。この席は「最前列中央席」と分けられ、少し安く販売されることが多いようです。
外国人も思わず「ワォ」
座るとシェルで隣席は見えません。座席幅59cmは1+2列バスでは最も広い部類で、1+1列バスの平均70cmには及びませんが、不足はありません。どのみちシートベルトをすれば寝返りは打てませんから、バスの快適性はむしろ座席形状やリクライニング角度の方が大切だとも思います。
「リボーン」はリクライニング角度155度で、これも1+2列バスでは最高。例えば1+1列バスの「ドリームルリエ プレシャスクラス」が156度で同等です。座席形状も違和感がなく、寝心地ではほとんど差がありません。足も十分に伸ばせます。付帯設備はWi-Fi、コンセント、網ポケット、読書灯、ドリンクホルダー、毛布です。
なお、筆者は最前列なので気になりませんでしたが、後日車庫で取材した際には、通路の狭さに注意が必要と感じました。特に2人掛けの窓側では出入りが難しいので、大柄な方は1人掛けか通路側座席をオススメします。
出発時に「台風が接近しているので、目的地到着が遅れる可能性があります」と告知されました。乗車時間は9時間55分の予定ですが、「リボーン」の快適性であれば正直、2 3時間くらい遅延しても何ともないと感じました。
始発のなんばOCATは地下鉄・私鉄の難波駅よりもJR難波駅に近い立地のためか、21時35分の出発時で乗客は3人でした。
なお「WX272便」はほかの大阪側ターミナルには立ち寄らず、まっすぐに京都駅八条口G2のりばを目指します。定員18人のところ筆者を含めて4人しか乗っていないため、空いたままかと思いましたが、京都駅から14人が乗車して満席に。当日は木曜日で、1万5700円と新幹線普通車以上の料金でしたが、大人気のようです。
大半が外国人観光客で、車内では英語や中国語が飛び交い、海外のバスのようでした。子連れの白人一家が「リボーン」の豪華で美しいインテリアを見て「ワォ」と感嘆。
隣席に人がいると、足などは目に入ります。座席の快適性は最高レベルですが、さすがにプライベート感では1+1列個室バスが上です。
迂回で長時間乗車も全く苦にならず
23時50分、多賀サービスエリアで休憩。なお、普段は草津で停車するとのことです。リクライニングで座席を倒しましたが、電動にもかかわらず動作音がせず、しかも早く倒れました。新幹線の「グランクラス」より快適なのではないでしょうか。
寝心地もかなり良く、翌朝は疲れも残らず目覚めました。ひじ掛けが2段になっており、寝る姿勢によって使い分けられるのは面白いです。起きたら上、寝ている時は下のひじ掛けが使いやすく、よく考えられています。網ポケットはスマートフォンを入れるとガンと音が鳴ります。網ポケットの位置は隣席側設置ではなく、反対の方がよいと感じました。
時刻は6時50分。かなりの雨が降っていました。中央自動車道へ迂回したため、東京都八王子市の石川サービスエリアで休憩。トイレが車内にありませんが、緊急時にはスマートフォンのアプリから運転士に通報して、臨時停車を要請できるようです。
運転士から「3時間程度遅れています」との車内放送が行われましたが、乗客は外国人ばかりで、日本語の放送が通じているのかはわかりません。運転士が本社に状況を報告し、本社から遠隔で英語放送(あるいはモニターでの状況説明)するような仕組みがあるとよいのですが。
本来は7時30分に終点に着いているバスですが、9時でようやく首都高速の入口。トイレの臨時休憩が行われました。9時30分には、大手町到着が10時前後と放送がありました。
実際の大手町(グランキューブ)到着は9時53分で、正しい見積りでした。ここで5人が下車。東京駅はやや離れていますが、徒歩10分程度です。
終点の東京ディズニーランド・バスターミナル・ウェスト到着は3時間遅れの10時29分。運転士が乗客一人ひとりに頭を下げて、遅延をお詫びしている丁寧さが印象的でした。
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