新型コロナウイルスの感染拡大に揺れる国内モータースポーツ界。2020年はGT500クラスへのクラス1車両の導入、年間2戦の海外開催、熾烈さを増すGT300クラスなど数多くのトピックスがあったスーパーGTも、開幕から5戦が延期となってしまった。ただ7月の開幕を前に、ちょっぴり知識をつけておけば、来たる開幕がより楽しく迎えられるはずだ。そこで、不定期連載となるがスーパーGT参戦チームのチーム名とカーナンバーの由来をお届けしよう。第12回目は、GT300クラスのBMW Team Studie×CSLだ。
■BMW Team Studie×CSL
マシン:Studie BMW M6
ドライバー:荒聖治/山口智英
カーナンバー:7
監督:鈴木康昭
タイヤ:ヨコハマ
開幕までに知識を増やそう。カーナンバーとチーム名の由来を知る:Arnage Racing
2008年、突如として初音ミクをボディに描いた“痛車”を登場させ、ファンのみならず業界も驚かせたのが、Studie & GLAD with Asada RacingのスーパーGT参戦。もちろん初音ミクの痛車にも驚いたが、スーパーGTを取材する身からすればBMW Z4が送り込まれたのも驚きのひとつだった。JAF-GT規定で製作されたZ4は、当初は予選すら通らない状況だったが、1年半をかけてポイント圏内を争うまでに成長していった。
そんなBMW Z4をスーパーGTに投入したのがGLAD Japanと、BMW専門のチューニングショップとしてすでに知られる存在だった、鈴木康昭代表が率いるStudieだった。チームは2010年、かたちを変えGOOD SMILE RACING with COXをサポート、2011年からはGSR & Studie with TeamUKYOとして復活。この年、谷口信輝/番場琢組が走らせたBMW Z4 GT3はチャンピオンを獲得した。
その後もチャンピオンを争う強豪となったGSR & Studie with TeamUKYOだったが、2013年末、2014年に向けて鈴木代表はBMW Sports Trophy Team Studieとして、単独のチームを立ち上げることを発表した。長年「インポーターとタッグを組んだチームを作りたい」という夢をもっていた鈴木代表が作り上げたチームは、全幅の信頼を置く荒聖治と、BMWワークスドライバーのヨルグ・ミューラーがコンビを組み、Mストライプをまとうスタイリッシュなチームとなった。
チームはその後なかなか優勝には手が届かなかったものの、2016年からは『BMW Team Studie』として2017年までGT300クラスに参戦。2018年からはブランパンGTワールドチャレンジ・アジアにBMW M4 GT4で挑みチャンピオンを獲得。2020年から、ふたたび『BMW Team Studie×CSL』としてスーパーGTに戻ることになった。
■「Studie」の理由とは
さて、そんなBMW Team Studieのチーム名だが、『Studie』の語源について聞くと、実は鈴木代表は高校生の頃から起業を考え、そのときにすでに『スタディ(英語ではStudy)』という名を考えていたという。響きが良かったこと、人生はいつも勉強……ということなどから来ていた。
そして、BMW専門チューナーのStudie AGが興されるにあたって名付けられた理由は、世界各国のモーターショー等で、メーカーが出品したニューモデルの市販目前の車両が『スタディモデル』と呼称されていたことからだという。
『スタディモデル』とは『最終試作車』。その後販売される市販車は数百万円でも、モーターショーに展示された最終試作車は何億ものコストがかけられ、まばゆいばかりのスポットライトを浴び、世界の注目を集める輝かしいクルマだ。「お客さまのクルマを、スタディモデルのような注目を浴びる輝くクルマにしたい」という思いから、ドイツ語のスタディにあたる『Studie』からつけられた名だ。
2020年から復帰するBMW Team Studieだが、正式なチーム名は『BMW Team Studie×CSL』となっている。この『CSL』は、2019年までMcLaren Customer Racing Japanを走らせていたチームの会社名『カスタマーレーシング・サポート・リミテッド』とのジョイントプロジェクトのため入っているものだ。
■縁に恵まれたスーパーGT参戦
そんなBMW Team Studie×CSLのカーナンバーだが、2008年にStudie & GLAD with Asada Racingとして参戦したときは『808』を使っていた。この由来が鈴木康昭代表の“ミドルネーム”である『BOB(ボブ)』に由来しているのは、初音ミクGTプロジェクトの長年のファンには有名な話。
ではその『BOB』はどこから来ているのかというと、鈴木代表がボブ・マーリーが好きだった時期があり、『ボブ』と名付けた愛犬が鈴木代表の自宅にいた。そんななか90年代後半、インターネットでは掲示板が流行。Studie AGでも掲示板を活用していたが、その際にはハンドルネームが必要だった。「ハンドルネームどうしよう?」と考えていたときに、鈴木代表の前を歩いていたのがボブだったというわけだ。
この『BOB』というミドルネームはすっかりお馴染みとなり、掲示板で知り合ったユーザーは鈴木代表を「ボブさん」と呼ぶ。また2011年にZ4 GT3を使い始めた以降、ドイツのBMWモータースポーツとやり取りする際に大活躍したという。外国人にとって『ボブ』は発音がしやすいからだ。
そして、2014年にBMW Sports Trophy Team Studieが誕生してから使っているカーナンバーは『7』だ。使い続けている番号だが、これは2008年、最初にスーパーGTにStudieが参戦しようという理由に由来がある。
BMW専門チューナーだったStudie AGだが、鈴木代表は車種・メーカーこそ違えど、同様にマツダRX-7の専門チューナーだったRE雨宮がGT300でチャンピオンを獲ったことに、「チューナーがメーカーに立ち向かってチャンピオンを獲ったのはすごい」と心を動かされGT300参戦を決断した。「そういうことをやりたかったのが動機なので、憧れのナンバーだった」という『7』が、2014年にたまたま空いていたのだ(前年はBonds Racingが使用)。使わない手はなかった。
「7が使えたこともそうでうすし、(RE雨宮のメンテナンスを行っていた)RS FINEとも組むことができましたし、RE雨宮に乗っていた谷口信輝選手ともご縁がありました。また、今シーズンもまた7番がたまたま使えることになった。いろいろなご縁に恵まれていると思います」と鈴木代表。
さまざまな縁に恵まれ、GT300でもお馴染みの存在となっているBMW Team Studie×CSL。チームが全幅の信頼を寄せる荒聖治、そしてルーキーテストを一発でパスした山口智英の組み合わせで復活したStudie BMW M6は、今季面白い存在になるかもしれない。
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