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HVすらNGで日本車どうなる?? 2040年新車100%「排ガスゼロ」宣言の裏事情と今後

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HVすらNGで日本車どうなる?? 2040年新車100%「排ガスゼロ」宣言の裏事情と今後

 2021年10月31日から11月13日まで、英国グラスゴーにて国連気候変動枠組条約第26回締約国会議(以下、COP26)が開催された。

 1995年から毎年開催され、温室効果ガスの排出削減、気候変動などの対策を協議する国際会議である。2020年は、新型コロナウイルス感染症拡大の影響で延期された。

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 COP26議長国である英国含む33の国や地域や大手自動車メーカーの一部が「先進国では2035年までに、グローバルでは2040年までに新車販売100%をZEV(ゼロエミッションヴィークル)とする」共同宣言に署名した。自動車産業を国の主な産業とする日本、アメリカ、ドイツやフランス、中国は参加を見送った。

 ゼロミッション共同宣言を解説しつつ、今後の自動車産業の背景を考察する。EVシフトが進むなか、日本の自動車メーカーは今後どう対応していくのか? 

文/桃田健史
アイキャッチ画像/©navee - stock.adobe.com
写真/TOYOTA、NISSAN、HONDA、SUBARU、MAZDA

[gallink]

COP26で発表された自動車産業を揺るがす宣言とは?

共同宣言に署名すると、エコカーの代名詞であるハイブリッド車も、2040年以降は新車販売をすることができなくなる

 「これを機に、日本を含めたグローバルで一気にEVシフトが加速するのだろうか? もし、そうなったら、日本のメーカーはどうするのか?」

 そんな不安を多くの人が抱くようなニュースが、2021年11月10日に飛び込んできた。英国グラスゴーで開催されていた、国連気候変動枠組条約第26回締約国会議(COP26)にて、33の国や地域、そして大手自動車メーカーの一部が「先進国では2035年までに、グローバルでは2040年までに新車販売100%をZEV(ゼロエミッションヴィークル)とする」共同宣言に署名したのだ。

 ここでいうZEVとは、具体的にはEVまたはFCV(燃料電池車)を示し、ハイブリッド車やプラグインハイブリッド車など内燃機関とモーターを組み合わせた動力を使うクルマは含めない。

 署名した国は、COP26開催国のイギリスを始め、カナダ、スウェーデンなどの20カ国以上なのだが、自動車製造産業が国の経済を支える影響が強い、アメリカ、ドイツ、フランス、中国、そして日本などは署名していない。

 ただし、アメリカの場合、合衆国として連邦政府は署名していなくても、カリフォルニア州、ニューヨーク州、ワシントン州など州政府のほか、ジョージア州アトランタ市やミシガン州アナーバー市、そしてテキサス州ダラス市など市政府が署名しており、アメリカにおける地方行政の独自性が強く出た結果となった。

 自動車メーカーでは、独メルセデス・ベンツ、米GMとフォード、中国のBYD、スウェーデンのボルボ、英国のジャガーランドローバーが署名している。

 こうした、ドイツ、アメリカ、中国のように、国とメーカーが別々の判断した結果を受けて、市場では今回の宣言の意義や実効性について疑問視する声が少なくない。

ゼロミッション共同宣言の背景に何がある?

ダイムラー/メルセデス・ベンツ、BMW、VWグループのジャーマン3の中で唯一、COP26の宣言に署名したメルセデス・ベンツ

 そもそも、なぜこのタイミングでこうした宣言が出てきたのだろうか? 

 背景にあるのは、欧州連合(EU)の執務機関である欧州委員会(EC)が2019年12月に公表した「欧州グリーンディール政策」だ。これは2050年までに、欧州でのカーボンニュートラルを実現するものだ。

 改めて、カーボンニュートラルとは、地球温暖化を防ぎ、地球環境を維持することを目的とし、社会全体で排出する温室効果ガスの二酸化炭素量を削減し、森林などが吸収する二酸化炭素量と理論上で相殺し、実質的に二酸化炭素排出量をゼロにするという考え方だ。

 そのうえで、ECは2021年7月に欧州グリーンディール政策の中間報告として、2035年までに欧州のなかでの販売する新車100%をZEVとする方針を示した。その8日後には、メルセデス・ベンツが「市場環境が整えば、2030年までにグローバルで全車ZEV化する」と発表している。

 ドイツといえば、長年に渡り世界の自動車産業界を技術面でリードしてきた国であり、ジャーマン3(ダイムラー/メルセデス・ベンツ、BMW、VWグループ)や、大手部品メーカーのボッシュとコンチネンタルによる連携が進んできた歴史がある。それが、今回のCOP26での宣言では、メルセデス・ベンツのみが署名するという異様な光景となった。

 では、これから先の世の中はどうなっていくのだろうか?

 まず、国や地域については、各行政府がすでに公表している、またはこれから新規策定して公表する環境関連の施策のなかに2035年、または2040年を目途としたロードマップを描くことになるだろう。

 メーカー個社としては、メルセデス・ベンツの2030年全車ZEV化宣言など、EVシフトに向けた目標年を改めて強調し、そうしたロードマップに従った研究開発と販売計画が具体化していくことになる。

 また、アメリカの場合、連邦政府と州などの地方政府の方針がすれ違うという、1990年にカリフォルニア州がZEV法を施行してからの歴史を、再び繰り返すことになるのだろうか? 

 米トランプ前政権(共和党)では、連邦政府とカリフォルニア州によるZEVのダブルスタンダードを解消し、連邦政府が主導権を握るとして、そのまえのオバマ前政権(民主党)の政策を根底から覆すような動きがあった。そして再び、バイデン政権(民主党)となったことで、今回のCOP26での宣言署名のように、国と州のZEVダブルスタンダードが維持されたままになる可能性もある。

 要するに、国連の場でグローバルでの宣言を目指した今回の一件は結局、国や地域でバラバラの体制がしばらく続くという状況を表沙汰にしたにすぎない。

さあ、どうする日本の自動車業界

 だからといって、日本は自動車工業会がこれまで主張してきた「ハイブリッド車や、水素、合成燃料など多様な方法を、国や地域のインフラの状況に合わせて段階的に電動化を進める」といった正攻法だけでは、これから先は生き残っていけない。

 COP26での世界リーダーズ・サミットで岸田文雄首相は「日本は、世界の必需品である自動車のカーボンニュートラルの実現に向けて、あらゆる技術の選択肢を追及する」とコメントした。それに合わせて、「2兆円のグリーンイノベーション基金を活用し、EV普及のカギを握る次世代電池、モーター、そして水素や合成燃料の開発を進める」と具体的な数値も示した。

 まず、日本政府がこうした基本方針を示したうえで、外交という交渉の舞台で、日本の自動車メーカーと国が連携し、これから先の極めて厳しい戦いに挑まなければならない。

 日本自動車工業会は2021年11月18日、定例記者会見のなかで豊田章男会長の3期連続会長就任と、ホンダ、日産、スズキそれぞれの社長を副会長に加えた新体制を発表した。

 豊田会長は、COP26で2040年ZEV化宣言で国やメーカーの意向が大きく分かれたことについて「世界120カ国以上が2050年(カーボンニュートラル)に向けて大変前向きな議論をしたことを歓迎する」としたうえで、「(先進国による)2035年ZEVコミットメントが(グローバルでの)一部(の国や地域)にとどまったことは、日本政府の現実的な選択肢だ」という見解を示した。

 また、ヤマハ社長で自工会の日高祥博副会長は「国や地域で、様々な政治が動いている。個社では(四輪も二輪も)欧州からの流れに太刀打ちできない。(メーカー間の)協調領域を踏まえて『日の丸で戦っていこう』」と決意の弁を述べた。

 日本の産業界は、地政学(国際政治)の観点での勝負意識が甘いと言われて久しい。COP26を機に本格化したEV化バトルに対し、日本メーカー各社はこれから賢く戦っていく必要がある。

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みんなのコメント

36件
  • SDGSとか言って進めているけど
    やっていけるのはお金持ちだけで
    庶民はギブアップするよ
    身の回りの高騰を考えればわかる
  • 外圧だな。環境の違いがあるのに無理がありすぎる、災害大国、日本にはガソリン車がベスト。独自でいいじゃん。愚策と愚行は身を滅ぼす。
※コメントは個人の見解であり、記事提供社と関係はありません。

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