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67歳、レーサーから画家へ 著名人もオーダー 自宅探訪

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67歳、レーサーから画家へ 著名人もオーダー 自宅探訪

もくじ

ー いま筆を持つということ
ー 才能が開花したとき
ー トムリンソンの哲学
ー 番外編 3名の画家たち

みたことある「あのアート」 どのように作られる? 芸術家を訪問

いま筆を持つということ

デジタルカメラやスマートフォンでの写真撮影、そして「インスタ」の時代に筆で絵を描くことにはどんな意味があるのだろう?

マーティン・トムリンソンのモータースポーツに関する絵画と、その作品が訴え掛けてくる答えを見てみると、フォトショップによる加工など存在せず、ただ技術と才能だけが埋め込まれていることがわかる。

まずはマイク・ホーソーンが彼のフェラーリ・スクアーロ555でピット・インしている作品を見てみよう。視線は絵の右上からのものだ。エンジンの熱まで感じることができるんじゃないだろうか?

「もし家が火事になっても、この1枚は助け出します」とトムリンソンは言う。「でも、実際には全部燃やしてしまって、保険を請求するかも知れませんけどね(笑)」

ときおり垣間見せる自尊心も、ふわりとユーモアで包み込む。恐らく彼のプライドはレースに参戦していた1970年代初頭に培われたものだろう。

そう、彼はもともと、レースをしていた。

シングルシーターのフォーミュラ・フォードをフォード・ゼファーで牽引し、そして再び家に帰ってくるまでの間に自信の程が試されたのだ。(「ワークスのクルマを手に入れたんですが、そこでお金もつきてしまいました」)

才能が開花したとき

レースに参加する前、彼はハーロー・アート・カレッジでファイン・アートを学んでいたのだが、そこで自分の絵画の才能に気付くことになる。

「指導教員が言うことは全く役に立ちませんでした。彼らは題材についても何も教えてはくれませんでしたから」と彼。

「その代わり、情熱があればやり遂げることができるということを学びました。ですから、絵は自分自身で学んだようなものです」日々の生計を立てながら家族を養うため、トムリンソンは一旦アートのキャリアを諦め、グラフィック・デザインの仕事に注力することにした。

しかし、絵を描くことは止めず、レースの世界でもブランズ・ハッチで解説の仕事をおこなうことで、ジュゼッペ・ファリーナとアルベルト・アスカリ以外のF1チャンピオンたちを生で見てきたのだ。

そして、ゆっくりと、しかし着実に彼のふたつの情熱である絵画とレースはひとつになっていった。

モータースポーツ界のレジェンドであるキャロル・シェルビーとジョン・サーティースのふたりも彼に絵を注文している。さらに、スターリング・モス、フィル・ヒルにユハ・カンクネンとロイ・サルバドーリと言った伝説のドライバーたちも自分たちが描かれた絵にサインを残している。

現在67歳のトムリンソンは、3年前からグラフィック・デザインの仕事よりも、モータースポーツに関する絵画制作を優先させている。描き上げた作品は100作以上だと言う。

彼の顧客リストにはモス、元F1ドライバーのマーク・ブランデルに、マクラーレン・テクノロジー・グループ取締役のザック・ブラウンや、テレビのビジネス・コンテスト番組である「Dragon’s Den」に以前出演して有名になったテオ・パピティスなどがいる。

トムリンソンの哲学

「絵を頼まれると、背景が有名なレースやサーキットの場合には、クルマ以外にも多くのリサーチが必要になります。わたしに絵を頼む方は、皆さんディテールにこだわりますから」とトムリンソンは言う。

リサーチを終えるとトムリンソンは鉛筆で構図を描き、全体のチェックをおこなう。

「これでようやく本格的に描き始める準備が整ったことになります。絵具には水彩絵の具の一種のガッシュを使います。直接紙に絵の具をのせていくんですが、非常に乾燥が早いので、筆さばきを速くすることで、スピード感を表現するのに適しているんです」

描き始めから1枚の絵が完成するまでは約2週間かかる。構図にもよるが、トムリンソンの作品の価格はスケッチの250ポンド(386万円)から、水彩画で1000ポンド(15万円)だ。

「絵を描くというのは大変な仕事です。イーゼルの前で朝の7時30分から夜6時ころまで過ごします。でも、とても楽しいものですよ」と彼は笑う。

「パートナーからは気難しいと言われます。彼女はわたしに花の絵を描いて欲しいようですが、彼女の希望に応えられそうにありません」

番外編 3名の画家たち

トムリンソンだけが愛車やお気に入りの1台を永遠の存在にしてくれる画家ではない。3人のさらに有名な才能をご紹介しよう。

ニール・ポッドベリー

「わたしは写実主義の画家です。対象をあるがままに写真のように描き出したいのです」

ティム・レイゼル

「ポスター風の作品が有名ですが、印象的なシーンをシンプルかつ正確に表現したいと考えています」

ニコラス・ワッツ

「プロの画家として25年間描き続けてきました。偉大なるアルフレッド・デ・ラ・マリアに影響されて自動車を描くようになったんです。構図が全てですね」

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