英国生まれの隠し球として日本デビューしたシビックタイプRユーロ
3代目シビックタイプR(FD2型)が日本で発売されている最中に、欧州では英国製のFN2型シビックタイプRユーロがデビューした。FD2型シビックタイプRは、無限RRなどのコンプリートカーが発売されるほどの人気モデルであったが、4ドアセダンながら走りはまさにスパルタンという言葉がふさわしく、タイプR=サーキットベストたる所以であった。
「F1やめます」「エンジンもやめます」! そんなホンダが「新型シビックタイプR」を開発する理由とは?
ところがこのころから、日本では買えない日本メーカーのクルマが話題となる。実際にとある自動車雑誌が英国製シビック(タイプRではない)を並行輸入したほか、販売店でも並行輸入して実際に販売するなど、欧州向けのFN2型シビックタイプRユーロが大いに話題になったのである。
そこで重い腰を上げたワケではないのだろうが、2009年11月、日本でも英国生まれのシビックタイプRユーロを発売。欧州では2007年デビューだが(欧州名はシビックタイプR)、日本のシビックタイプRユーロは2010台限定と比較的多かったものの、ホンダの関係者でも購入できないという都市伝説にもなるほどで、翌年には1500台限定で追加販売された。
ユーロRシリーズを彷彿とさせるジェントルな走りの質感が高評価
現在、閉鎖されてしまったホンダの英国工場で生産されたシビックタイプRユーロは、ホンダが先進国向けに作り上げた秀逸なシビックのボディであり、先進性を感じさせるデザインと3ドアハッチバックであったことが特徴であった(タイプRユーロ以外にも標準仕様の5ドアモデルもあった)。それは剛性面で優れているだけでなく、適切な鋼板を適切な厚みを持たせて剛性感を生み出しており、サスペンションアームなどの取り付け剛性とゴム類の硬質さもあって、かつてのアコードユーロRを連想させる走りを彷彿とさせた。
FD2には劣るも201ps/19.7kg-mのエンジンスペックを誇る
搭載するエンジンは、K20A型2L自然吸気直列4気筒エンジンを採用。2010年に販売終了となったFD2型シビックタイプRとエンジンは同じでありながら、FD2型搭載仕様が最高出力225ps/8000rpm、最大トルク21.9kg-m/6100rpmであったのに対し、このシビックタイプRユーロでは同201ps/7800rpm、同19.7kg-m/5600rpmと数値的には少し劣っていた。
しかしNSX譲りのヘッドポート処理や専用吸気マニホールド、DBW(ドライブ・バイ・ワイヤ:電気式アクセル)の設定の良さもあって、走りの気持ち良さは同等以上。さらにVTECのセッティングも異なり、シビックタイプRユーロには2次バランサーを装着してノイズと振動を軽減したことで上質さも備わっていた。組み合わされるトランスミッションはFD2と同様の6速MT。車両重量はFD2型が1270kgに対して、FN2型は1320kgと少し重たいにも関わらず、多くのファンから支持されたのである。
しなやかさを備えた剛性感は欧州販売モデルらしい味付け
その理由は、高張力鋼板を多用した5ドアシビックをベースにした、軽量かつ高剛性のボディとドアまわりなどのシール構造、フィットでお馴染みのセンタータンクレイアウトの採用。こうした優れたベース車両に対して専用サスペンション+専用軽量ホイール+専用18インチタイヤ(ブリヂストン製ポテンザRE050A)、ヘリカルLSD、VSA(ビークル・スタビリティ・アシスト)といった安全装備が一体となり、ファンを魅了したのだろう。
かつてアコードやトルネオでユーロRを試乗したことがあれば、しっかりしていてもしなやかで快適というタイプRユーロのフィーリングをイメージできるかもしれない。メディアではよく、乗り心地と走行性能は両立しない言われてきたが(今となっては時代錯誤な評論だが)、それを覆したのがシビックタイプRユーロであり、限定モデルながら人気は博したのはこうした理由もあったのだと思う。
中古車は100万円台から狙えるので手に入れるなら今がチャンス
歴代シビックタイプRのなかで異端児であるシビックタイプRユーロは、速いだけではなくてドライバーが操る運転の楽しさが色濃く、ドライビングを心底楽しめるモデルであった。個性的なデザインは賛否分かれるところだろうが、限定発売するも翌年に追加販売したことを考えると魅力に溢れていたことは間違いない。発売当時の新車価格は税込で298万円(2009年仕様)と300万円(2010年仕様)。ちなみに中古車価格はピンキリであり、ボディカラーで価格に差が出ているというよりも、すでに12年が経過したモデルでもあり、走行距離やコンディションによって価格が決まっている様子だ。
新型シビックタイプRは間もなく発売されるが、ノーマルモデルでも意外にも若いオーナーからMT仕様が支持されているという。現行シビックの販売台数の3分の1程度はMT車というから、絶対的な速さはいらないけれど、気持ちよくMTで走りたいという層がまだまだ健在というのはうれしい限り。
中古市場ではすでに10年以上前のモデルとなってしまったが、新車価格の100~150万円落ちで買えるのは、今後の価格高騰を考えると今が狙い目と言える。実力があるのに価格は比較的安い。クルマの素性の良さも含めて今のうちに唾を付けておきたいクルマの筆頭がシビックタイプRユーロだ。
□シビック・タイプRユーロ/FN2型主要諸元○全長×全幅×全高:4270×1785×1445mm○ホイールベース:2635mm○車両重量:1320kg○乗車定員:4名○最小回転半径:5.6m○エンジン種類:K20A型 直列4気筒DOHC○総排気量:1998cc○最高出力:148kW(201ps)/7800rpm○最大トルク:193Nm(19.7kg-m)/5600rpm○トランスミッション:6速MT○サスペンション 前/後:ストラット式/トーションビーム式○ブレーキ 前/後:ベンチレーテッドディスク/ディスク○タイヤサイズ :225/40R15
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みんなのコメント
意外と後部座席と荷室は広いし、丁寧に乗ればリッター14km走るし、乗り心地も運転者の主観としては悪くはない(良いとは言ってない)
ディスプレイのデジタル表示がマトモに作動しない以外は文句ない