隣国アルゼンチンのスーパーTC2000(STC2000)と並び、南米大陸最大級の人気を誇るツーリングカー選手権、SCBストックカー・ブラジルの2020年シーズンがついに開幕。7月24~25日の週末にゴイアニアで開催された2ヒート戦では、新規参戦となるTOYOTA GAZOO Racing Brasilの新型『トヨタ・カローラ』が連勝デビューを飾り、レース1を新チーム移籍のリカルド・ゾンタ(RCM Motorsport)が、レース2をルーベンス・バリチェロ(Full Time Sports)が制し、ブラジルが誇る元F1ドライバー・コンビがトヨタの船出に華を添える結果を手にした。
3年連続シリーズチャンピオンを獲得中で、WEC世界耐久選手権ではファクトリー契約ドライバーも務めるダニエル・セラ(Eurofarma-RC)を筆頭に、多くの実力者が名を連ねるSCBシリーズは、長年続いてきたシボレー・クルーズのワンメイク状態に終止符を打ち、この2020年から新たなマニュファクチャラーが参入した。
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TOYOTA GAZOO Racing Brasil陣営にスイッチしたSCBトップチームのFull Time Sportは、F1最多出走記録を持つ元跳ね馬乗りで、2014年のSCB王者でもあるバリチェロを筆頭に、初代フォーミュラEチャンピオンのネルソン・ピケJr.や日系ブラジル人のラファエル鈴木、そしてバリチェロとの相互交流で隣国アルゼンチンからデビューを果たすSTC2000のトップドライバー、マティアス・ロッシの4台体制という豪華布陣を敷いた。
さらに、2台体制のRCM MotorsportはShell V-Powerから移籍のゾンタと、若手有望株のブルーノ・バプティスタを起用。おなじくIpiranga Racingは2019年に最多ポールポジションを獲得し、セラやバリチェロと最終戦までタイトル争いを繰り広げたチアゴ・カミーロに、イタリア武者修行時代にはF3王者も獲得したセザール・ラモスと、TGRの参戦初年度から計8台の豪華ラインアップが揃った。
本来、この開幕戦はシリーズ恒例の“ダブルレース”として、世界各国から豪華ゲストが参戦し、レギュラー勢と組んでのセミ耐久フォーマットが採用される予定だったが、いまだパンデミックの波が終息しない新型コロナウイルス感染症(COVID-19)の統計で、感染者数世界第2位というブラジル国内情勢も受けこれをキャンセル。
■レース1の予選で先手を取ったのはトヨタ陣営。カローラの速さを証明
ブルーノ・セナやアントニオ・フェリックス・ダ・コスタ、フィリップ・アルバカーキ、ホセ-マリア・ロペス、ローレンス・ヴァンスール、アウグスト・ファーフスやフェリペ・ナッセなど、すでにアナウンス済みだったドライバーたちの参加は夢と消え、週末は通常の2ヒート・フォーマットで争われることとなった。
そんな状況で幕を開けた無観客のレースウイーク、予選で先手を取ったのはトヨタ陣営で、ゾンタが幸先よく移籍初ポールポジションを決めると同時に、新型『トヨタ・カローラ』が最速を争うポテンシャルがあることを証明。フロントロウ2番手にリカルド・マウリシオ、セカンドロウ3番手にセラとEurofarma-RC勢を挟み、4番手には伏兵ラファエル鈴木が並ぶなど、シボレーvsトヨタがっぷり四つの構図となった。
迎えたレース1はポールシッターのゾンタが順当にホールショットを決め、ブラジル中部の高原地帯に位置するトラックで快適なリードを構築。中盤のピットストップで5番グリッド発進だったアラム・コデア(Blau Motorsport)がEurofarma-RCの2台を出し抜きシボレー対決を勢するも、首位ゾンタを捉えるには至らず。22周の決勝で1度もリードラップを譲らなかったゾンタが、トヨタ・カローラのデビュー戦で栄えあるポール・トゥ・ウインを飾っている。
「僕にとってこの勝利は本当に大きな意味を持つ。新しいチーム、新しいマシン、そして感情の面では多くの人々が困難な状況に直面し、まだ厳しい生活を経験していることを理解している。COVID-19のせいで多くの人が家族や愛する人を失った……そう、僕の父のように。この勝利は神を賛美することだ。感染症のせいで問題に直面する人、離れて見守る家族、すべての人々にこの勝利を捧げたい」とゾンタ。
■レース2の主役はバリチェロ。トヨタ・カローラが表彰台を独占
続くレース2はリバースグリッドの4番手から発進したバリチェロが主役を演じ、このヒートに向けレース1で燃料とタイヤをセーブして7位に終わっていた男は、レースペースに勝る序盤からコース上の勝負を制して首位浮上に成功。そのまま義務ピットを挟んでファステストラップを刻み戦略どおりの勝利を挙げ、新たな愛機カローラでゴイアニア最多勝となる5勝目を飾っている。
「この熱と肉体的な要求を伴うドライビングの喜びは何物にも代えがたい。再びドライブできる日が来るなんて最高の気分だよ。ファンがいないトラックではあるけれど戻ってこれたのは大きな喜びで、SCBやゴイアニア、そして完璧な準備を果たしたトヨタ、すべての人々におめでとうとありがとうを言いたい」と、喜びを語ったバリチェロ。
このレースでのさらなるハイライトは、バリチェロの背後で表彰台を分け合った2位ピケJr.と3位バプティスタのふたりで、ともにレース1で下位に沈んでいたふたりはタイヤ選択の自由度を優先するべくピットスタートを選び、戦略を最大限に活用。
中盤には車両火災の影響でセーフティカーが導入されたことも助けとなり、ピケJr.は開幕戦で早くもSCB自己最上位を獲得。3位のバプティスタは自身も数カ月前にCOVID-19に感染し、ICU(集中治療室)まで経験した闘病生活からのカムバックを祝う初表彰台となり、これでトヨタ・カローラがレース2表彰台独占の結果を得ている。
続くSCBストックカー・ブラジルの2020年シーズン第2戦は、8月22~23日の週末にインテルラゴスでの高額賞金戦“ミリオン・レース”の開催が予定されている。
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