BMW M3をも凌駕する加速力
マセラティ・グレカーレを発進させてみる。最高出力530psを発揮する3.0L V6ツインターボは、低回転域から豊かなトルクを発生。ターボラグも殆どない。極めてパワフルで、野蛮なスピードでの走行も朝飯前でこなせる。
【画像】登場! マセラティ・グレカーレ・トロフェオ 競合のハイパフォーマンスSUVと比較 全133枚
サウンドは、スポーツかコルサ・モードを選択すると、マセラティへ期待通りのドラマチックさが現れる。レッドラインは7000rpmを少し超えた辺り。荒々しい咆哮を放ちながら、痛快に吹け上がる。
マセラティによれば、0-100km/h加速は3.8秒。これは、最新のBMW M3をも凌駕する加速力となり、フルスロットルを与えた印象では、その数字に偽りはなさそうだ。
目が覚めるようなダッシュをアシストするのが、瞬間的に変速をこなす8速AT。コルサ・モードを選ぶと容赦もなくなり、シフトアップの度にヘッドレストへ後頭部をぶつけてしまう。
ブレーキのチューニングも素晴らしい。低速域では扱いやすく、高速域では漸進的で強力。狙った通りの制動力を引き出せる。
ステアリングホイールの反応は、正確でクイック。程よい重み付けで、不安感なくコーナーへ飛び込んでいける。
今回の試乗車はスタッドレスということで、フロントタイヤのグリップ力が不足気味だったが、リアタイヤも同様。積極的に電子制御のリミテッドスリップ・デフが機能し、軽くリアを流しながらの鋭い脱出も難しくないと感じた。
サマータイヤなら、グリップは一層高まるはず。かといって、自由に振り回せるシャシーの楽しさも、減じることはないだろう。これはマカンにも勝るように思う。
高めたいサスペンションの処理能力
反面、路面を問わない岩のような落ち着きや、秀逸な姿勢制御という点では届いていない。グレカーレ・トロフェオには、エアサスペンションとアダプティブダンパーが標準装備だが、コーナリング途中の凹凸などを完全には処理しきれないようだ。
条件によっては、若干の不安定さを感じさせることがあり、ふわりと浮き上がるような挙動を示していた。その瞬間、2027kgと軽くないSUVの車重も実感させられる。
コルサ・モードを選ぶとサスペンションが引き締まる一方で、ツギハギの多い都市部の路面のような、細かな乱れを車内へ伝えてしまう。試乗車の場合は、その振動へ釣られるように、美しい内装の一部からカタカタと音が出ていた。
アダプティブダンパーをソフト側へ戻せば、ベースに一定の硬さは残るものの、優しく路面をいなしてくれる。それでも、窪んだマンホールや橋桁の継ぎ目などは、少々苦手な様子。上質で平穏な移動空間を乱すように、振動が届いていた。
とはいえ、穏やかになったグレカーレの質感は、小さなロードノイズや風切り音と相まって、印象的な車内を一層心地良いものにしてくれる。マセラティらしく、グランドツアラーとしての能力は高いといえるだろう。
マセラティの将来を強く牽引するSUV
今回はスタッドレスでの試乗となった、マセラティ・グレカーレ。改めて後日、英国の道でサマータイヤを履いて確かめてみたい。
ポルシェ・マカンが備える、研ぎ澄まされたハードウエアが実現する突出した動的能力や、ソリッドな印象までには届いていないかもしれない。グレカーレ・トロフェオ以外に、ベストバランスが存在するのかもしれない。
しかし、グレカーレには独自の魅力が存在していると思う。1914年に創業したブランドの歴史へ共感するドライバーにとっては、強く心へ響くSUVだといえる。
ラグジュアリーな車内の広さはライバルに勝り、実用性に優れていることは明らか。ドライバーがその気になれば、MC20譲りの3.0L V6ツインターボにムチを入れ、胸がすくようなスピードでコーナリングをこなすこともできる。
自動車ファンにとって、DセグメントのSUVがブランドに求めるニューモデルではないかもしれない。しかし、販売を後押しできる頼もしいニューフェイスであることは間違いない。マセラティの将来を、力強く牽引してくれることだろう。
マセラティ・グレカーレ・トロフェオ(欧州仕様)のスペック
英国価格:9万ポンド(約1440万円/予想)
全長:4847mm
全幅:1982mm
全高:1667mm
最高速度:284km/h
0-100km/h加速:3.8秒
燃費:12.5km/L
CO2排出量:254g/km
車両重量:2027kg
パワートレイン:V型6気筒3000ccツイン・ターボチャージャー
使用燃料:ガソリン
最高出力:530ps/6500rpm
最大トルク:63.0kg-m/3000-5500rpm
ギアボックス:8速オートマティック
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