供給が絶えて久しい1990年代までの「R12」ガス
1990年代までの旧車、ネオヒストリックの維持で頭が痛いのが、クーラーガスの問題だ。1960年代からオプションながらクーラーが用意されていたり、サンデンの「レザム」などの後付けクーラーもあって、憧れ的な装備だった。現存車でもそれらが付いている車両はあるが、1980年代、1990年代になるとクーラーやエアコンは当たり前になった。ちなみに「クーラー」と「エアコン」は違いがあり、冷気が出るだけなのがクーラーで、旧車はこちらが一般的となる。
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温暖化対策で変遷してきた冷媒ガス規格
比較的新しいモデルも含めて、付いている以上はクーラーを正常に作動させて、気持ちよくドライブしたいものだし、猛暑、酷暑続きの昨今であればなおさらだ。そこで問題になってくるのが、エアコンに使われるガス。冷媒として冷気を作るのに欠かせないのだが、1990年代まで使われていた規格は「R12」と呼ばれるものだ。その後、「R134a」に切り替わり現在も使われつつ、さらに環境に優しい「R1234yf」へとシフトしている。
この変更の理由は、よく見聞きしたことがあるだろう。フロンガスによるオゾン層破壊を防止するためであり、つまり地球温暖化対策のためだ。それについてはまったく異議はないのだが、問題なのはクーラーの冷媒ガスそれぞれに互換性がないこと。さらにR12に関しては生産や使用が厳しく制限されているため、入手が困難というのも問題だ。つまり、R12のクーラーを維持するのは大変ということになる。
さらにR12の特徴で、分子構造の関係でわずかずつではあるが、抜けてきてしまう。そして旧車では配管の精度も問題だ。つまり現行車のように、故障や事故でシステムが破損しなければ、ガスを入れ替えたり補充することはあまりないのとは違い、R12を使用しているとクーラーに定期的なメンテが必要になるのも問題なのだ。
デッドストックもあるが「レトロフィット」が現在の主流
まず対策としては、ネットオークションやフリマアプリなどでデッドストックが販売されているので、これを購入して使用する。もちろん価格はプレミアが付いていて少々高いが、とりあえずの問題は解消する。ただ、充填などは違法ではないけれども、確実な回収が定められているので入れ替える際は注意が必要であり、先に触れたように少しずつ抜けるので環境への悪影響もある。つまり問題を抱えての使用となるわけだ。
現在、対策としてメインとなっているのが、レトロフィットなどと呼ばれる方法で、R12のシステムに現在も使われているR134aを入れるというもの。先に互換性がないと紹介したが、問題となるのは配管のつなぎ目のOリングやゴムの配管などなので、それらをR134aに対応している物に交換したうえで、R134aを入れる。キットで供給されている場合もあって、ポピュラーな方法と言える。また、各部を交換しないでもそのまま使えるようにしたというガスもあって、こちらを使っている人も見かけることも多く、専門店でも扱っていたりする。
思い切って新品のクーラーキットを取り付ける手も
ただ、どちらも確実ではなく、結局ダメだったという声も聞くので完璧でないというか、リスクがあるのは事実だ。と、聞くと、ダマシダマシ使うしかなく、万が一ともなればクーラーレスかと思うかもしれないが、最後にもうひとつ方法がある。それが新規取り付けだ。現行車のシステムを流用するのは相当難しいが、その昔オプションや社外品であったような、助手席の足元に吊り下げるタイプの新品キットがあるので、これにしてしまう。
ハコスカなどのメジャーな車種は専用キットもあり、それ以外でも車種によって異なるコンプレッサー部分はブラケットやプーリーをワンオフで作ったりして対応できる。なにより、古いクーラーのシステムを不安を抱えながら使用しなくてもいいのは最大のメリットでもある。ただ、見た目がインパネ組み込みとなる純正とは違って、後付け感が強いというのはデメリットだが、夏の暑さを考えるとそのようなことも言っていられないだろう。
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