1977年の登場以来、これまでに6回のフルモデルチェンジを行ってきたBMW7シリーズ。旗艦モデルとして常に話題を提供してきたが、7世代目を迎えたニュー7シリーズは、デザインそしてパワートレーンの両方で大きな変革を持ち込もうとしている。(Motor Magazine2023年1月号より)
BEVのi7とMHEVの760iを試乗
試乗会が行われたのはカリフォルニア州南部にある常夏の保養地パームスプリングスで、当日の気温は40度近かった。用意された新型7シリーズ(開発コードG70)は2車種で、BEV(電気自動車)のi7 xDrive60とMHEV(マイルドハイブリッド)の760i xDriveである。
●【くるま問答】ガソリンの給油口は、なぜクルマによって右だったり左だったりするのか
前者は、フロントおよびリアにそれぞれ190kW(258ps)/230kW(313ps)の電気モーターを搭載し、システム最高出力400kW(544ps)とシステム最大トルク745Nmで4輪を駆動する。0→100km/h加速は4.7秒、最高速度は240km/hに達する。
760i xDriveeに搭載されているパワートレーンは4.4L V8ツインターボで48VのMHEVを組み込み、最高出力400kW(544ps)、最大トルク750Nmを発生する。ZF製8速ATとの組み合わせで、0→100km/h加速は4.2秒、最高速度は250km/hに制限されている。
まず両モデルに共通するデザインから話を進めよう。4アイズデザインと呼ばれるフロントは、ブラックアウトされたダミーグリルの中央に巨大なモノキドニーが置かれ、その左右上方に4灯式LEDデイライトが並んでいる。その下に同じく4灯式ヘッドライトが並んでいるが、ブラックレンズなので昼間は横長のスリットのようだ。
明るいボディカラーではまだマシだが、黒っぽいボディでは遠くから見るとフロントは大きなブラックホールのように見える。
インテリアはシンプルなカーブドディスプレイで、すっきりした印象を与えている。3215mmのホイールベースが可能にしたリアコンパートメントは広々としており、オプションの31.3インチのシアタースクリーンはアマゾンファイアTVをプラットフォームに持ち、さまざまなエンターテインメントを楽しむことができる。
重厚な加速感に感じる知性。ダイナミックなハンドリング
さて、肝心の走りだが、まずi7は、パワーペダルを踏み込んだ瞬間から745Nmのトルクが立ち上がる。しかし他のBEVのように唐突なダッシュではなく、重厚でV12エンジンを思わせる加速フィールでアメリカのハイウエイ法定速度75mph(約120km/h)に到達した。そこからはアダプティブクルーズコントロールをオンにして、レベル2+のクルーズを楽しむ。
やがてテストコースは郊外のマウンテンロードに入る。ここでは2.7トンの巨艦は物理の法則を破るかのように、重いボディが遅れることなくハンドルを切った方向へスパッと向きを変える。続いての驚きはブレーキ性能だ。
これまで試乗してきた他ブランドのフルサイズBEVは回生制動とキネティックブレーキのマッチングが悪く、さらに下り坂では明らかに重量オーバーで制動性能が追い付いていなかった。だがi7ではこうした現象が起こらず、安心してブレーキを駆使したヒルクライム&ダウンを行うことができた。
続いて試乗した内燃エンジン搭載の760i xDrive は、BEVのような強烈な立ち上がり加速性能は持ち合わせていないが、滑らかでトルクフルなV8ツインターボに加えて48VのMHEVによるアシストによって息の長いクラシックな加速フィールを楽しませてくれた。
またワインディングロードではロールも少なく、正確で路面フィールを正しく伝えてくれるハンドリングにより、全長5mを超えるボディを感じさせない敏捷な動きを見せてくれた。
両モデルとも、非常にアクティブなスポーツドライブを楽しませてくれたのは「CLAR」と呼ばれる共通プラットフォームを使用しているからだと思う。
コスト面を考えればBEV専用も意味があるが、BMWのように走りのDNAをしっかりと持っているブランドには、同じアーキテクチャーでのシャシセッティングの方がやりやすいのかも知れない。(文:木村好宏/写真:BMW AG、キムラ・オフィス)
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