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可憐なボディに直6エンジンのサソリ アバルト2200 スパイダー 不遇な上級モデル 前編

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可憐なボディに直6エンジンのサソリ アバルト2200 スパイダー 不遇な上級モデル 前編

直列6気筒エンジンを積んだ上級モデル

優勝パレードのように、ゆったりと走る。地元の人や家畜たちを驚かせずに済む。英国南部、四季の豊かなニューフォレストの自然公園を、イタリア生まれのスパイダーで流す。どちらも、惚れ惚れするほど美しい。

【画像】アバルト2200 スパイダーとフィアット2300Sクーペ 現代の124スパイダーと595も 全82枚

今日は肌寒かったものの、周囲はすっかり春めいていた。アバルトに乗る筆者は満面の笑みで、今の時間を味わう。まれに野生動物が不意に姿を表し、反射神経も求められるが。

クラシックなアバルトと聞いて、甲高いエグゾースト・ノートを放つ、コンパクトでアグレッシブなスポーツカーを想像するかもしれない。レーシングカー風の様相と、アフターファイヤーのパンパンッという破裂音を。

だが、2200 スパイダーはもう少し上品だ。その最大の理由が、ピーキーな2気筒や4気筒ではなく、ゆったりとした直列6気筒エンジンを積んでいるから。搭載位置もフロント側だ。

赤く塗られたコンバーチブル・ボディは至って端麗。地中海が似合う、どこか謎めいた雰囲気を漂わせている。

多くの人の記憶から消えてしまったであろう、アバルト2200 スパイダー。絶滅寸前のモデルだからこそ、もう一度振り返っておきたい。サソリがトレードマークのアバルト&C社が、エキゾチックな上級モデルに取り組んだ頃の作品だ。

モータースポーツとの関わりが濃く、小さなクルマを得意としたブランドとしては、飛躍といえる展開だった。とはいえ創業者のカルロ・アバルト氏は、いつも広い視点から大胆な行動を取ってきた。

クラス優勝も含めて7300勝の活躍

多くの分野で、短期間に成功を重ねたカルロ。ひと回り大きいクルマを手掛けることも、次のステップとして必要だと考えたのだろう。計画はしっかり練られ、準備も抜かりはなかった。

1908年11月、オーストリア・ウイーンで生まれたカルロは、第二次大戦の勃発前にはバイクである程度の名声を掴んでいた。終戦後にイタリアへ移り住むと経験を買われ、レーシングカー・メーカーのチシタリア社でグランプリカー計画の技術者に抜擢された。

しかし、フェルディナント・ポルシェ氏も関わったものの、参戦することなく中断。完成したシングルシーターのレーシングカーは、アルゼンチンでスピード・レコードを樹立している。

カルロは1949年に独立。エグゾーストなどのチューニング・パーツを製造し、独自に販売を始めた。他人からの助言を求めないような人物だったが、マーケティングの才能には長けていた。

競合メーカーはいくつかあったが、アバルトほど巧みに自動車ファンへ訴求したところはなかった。多くの自動車ジャーナリストをワークスドライバーに起用することで、肯定的な情報発信へとつなげたのだ。

活動の幅を広げたカルロは、1958年にアバルト&C社を設立。フィアットでレースに参戦し、勝利する度に同社から報酬を受け取るという契約を取り付けるに至った。

以来、1971年までにアバルトはクラス優勝も含めて、7300勝を挙げたとされる。トリノの巨大自動車メーカーは、少なくない金額をカルロへ贈ったことになる。

生産台数の多い自動車メーカーとして模索

設立から数年後には、アバルト&C社はイタリアのアフターマーケット市場で、圧倒的な地位を築いていた。彼が生み出した小さなスポーツモデルの多くには、車体製造を専門とする企業、カロッツエリアによる専用ボディが与えられた。

それだけに留まらず、カルロは生産台数の多い自動車メーカーとして模索も進めていた。その初期の成果といえるのが、1959年のトリノ・モーターショーで発表されたアバルト1600だ。

フィアット1500用のシャシーをベースに、フィアットの1.5Lツインカム4気筒エンジンを搭載。ボディのスタイリングを担当したのは、カーデザイナーのジョヴァンニ・ミケロッティ氏で、クーペとスパイダーという2種類が提案された。

ボディの生産を請け負ったのは、イタリア・トリノのカロッツエリア、アッレマーノ社。後に2+2仕様も追加されている。そして、同じ1959年に発表されたのが、今回ご紹介するアバルト2200だ。

イタリアは排気量に対する規制が厳しく、当時は2.0L以上に高額な税金が課せられていた。それでも、アルファ・ロメオはミドルクラスの1900で成功を収めると、2000を投入。ランチアも2.5Lのフラミニアを投入するなど、上流志向の流れは明らかだった。

アバルト&C社のパトロン的存在だったフィアットも、落ち着いた雰囲気のサルーンとして、直列6気筒エンジンの2100を発売した。それが、アバルト2200のベースになった。

ミケロッティのボディに137psの直列6気筒

アバルト2200のエンジンは、シリンダーの内径、ボアを77mmから79mmに拡大。排気量は2054ccから2162ccへ引き上げられ、ピストンの変更で、圧縮比も7.8:1から9.5:1へ上昇した。

さらにトリプル・ウェーバー・キャブレターと大容量のオイルサンプ、アバルトらしく専用のエグゾーストも組まれた。その結果、最高出力はフィアット2100の83psから137psへ、大幅な向上を果たした。アバルトの数字を信じるなら。

シャシー側は、ベースのサルーンから約200mmホイールベースを短縮。独自の4速MTと高いファイナルレシオを持つデフが組まれ、ダンパーも強化品へ置換された。ブレーキは、ダンロップ社製のディスクが前後に与えられている。

スタイリングを担当したのは、1600と同じく巨匠ミケロッティ。この時代らしい、エレガントな2+2のクーペボディが描き出された。

他方のスパイダーは、斜めに左右2灯づつレイアウトされたヘッドライトが不評を買った。その結果、クーペと同様に一般的な丸目2灯へ急遽変更されたという。

ボディ製造を担当したのも、やはりアッレマーノ社。近年ではあまり耳馴染みのないカロッツエリアだが、60年ほど前までは多くの作品を手掛けていた。

創業は1929年。セラフィノ・アッレマーノ氏が一般的な自動車修理業からスタートさせ、家族経営で1950年代に急成長を遂げた。得意としたのが、フィアット500や600をベースとしたアバルト仕様のボディだった。

ほかにもマセラティ5000GTや、ATS 2500 GTというスーパーカーのボディも仕上げている。しかし、1965年に倒産してしまう。

この続きは後編にて。

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