■王者「ワゴンR」人気低迷の理由とは
近年の軽自動車市場では、ホンダ「N-BOX」が好調です。2018年度(2018年4月から2019年3月)における販売台数は23万9706台となり、軽四輪車新車販売台数において4年連続となる第1位になっています。
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最近では、「軽自動車=N-BOX」というイメージが定着化しつつありますが、N-BOXの登場以前に軽自動車市場を席巻していたのがスズキの「ワゴンR」。なぜ長年王者として君臨していた「ワゴンR」の人気は低迷したのでしょうか。
スズキの「ワゴンR」は、長年にわたり軽自動車市場を席巻していたモデルです。初代「ワゴンR」は1993年に登場し、いまの軽ハイトワゴンブームの元祖的存在といわれています。
初代「ワゴンR」の全高1680mmは、当時の軽自動車に比べると背が高いモデルのため室内空間が広く設計されていました。後席の足元を見ても大人が着座するには充分なスペースが確保されているなど、人気が高いモデルです。
その後、2代目(1998年)、3代目(2003年)、4代目(2008年)までは販売面も順調でした。毎月の新車販売台数を発表している全国軽自動車協会連合会によると、記録が残っている2006年から2011年までの6年連続で首位を獲得するなど、絶対的王者として「ワゴンR」は軽自動車市場に君臨しています。
しかし、2012年に登場した5代目モデルは、前年12月にホンダ「N-BOX」が登場したことなどにより、2012年度の新車販売台数ランキング3位と王座の座を奪われてしまいます。
その後も、ほかの軽自動車が全面一新や一部改良を施すことで人気を得ていき、「ワゴンR」の販売順位は下がっていくのです。2017年に現行モデルの6代目にモデルチェンジをおこない、年間販売台数5位に位置しますが当時の勢いはありません。
その理由には、ユーザーニーズの変化が存在します。最近の軽自動車におけるトレンドは、『ハイトワゴン』と『スライドドア』のふたつです。
定義はないものの、全高1700mm以上のクルマを『ハイトワゴン』と呼び、従来の軽自動車よりも高い居住性を誇ります。また、近年のミニバンでも標準採用される「スライドドア」も人気アイテムのひとつといえ、2018年度の軽自動車販売台数TOP3は、ホンダ「N-BOX」、スズキ「スペーシア」、ダイハツ「タント」と、ふたつの要素を兼ね備えています。
一方で、現行「ワゴンR」の全高は1650mmなうえ、スライドドアを備えていません。これらの販売動向について、スズキの販売店スタッフは次のように話します。
「軽自動車市場は相変わらずの人気です。国内全体の新車販売台数を見ても全体の約4割が軽自動車といわれています。そのなかで、「ワゴンR」はいまのトレンドから外れているかもしれませんが根強いファンや固定客層は存在します。
そのため、いま流行りの軽自動車をご要望されるお客様にはスペーシアシリーズをおすすめしています。全高も高くスライドドアを備えているうえに、趣向に合わせた3モデルをラインナップしているため、人気のモデルです」
※ ※ ※
ユーザーのニーズは時代とともに変化します。そのために、売れるクルマにシフトするのもビジネスとしては当然です。「ワゴンR」はかつての勢いはないものの、新車販売台数においてはTOP10を維持し続けています。
王者ではなくても、売れているクルマには変わりがないようです。
■現・王者「N-BOX」人気はいつまで続く?
普通車(登録車)を含む新車販売台数において、2年連続となる第1位を獲得したホンダ「N-BOX」。トレンドを上手く捉えているモデルですが、人気はいつまで続くのでしょうか。
ホンダの人気軽自動車「N-BOX」は、軽乗用車最大級の室内空間や全タイプに標準装備とした先進の安全運転支援システム「ホンダ センシング」、優れた走行性能・燃費性能といった部分が好評です。
また、標準モデル「N-BOX」とカスタム仕様「N-BOX custom」というふたつのモデルをベースとし、それぞれ「ベンチシート」、「スーパースライドシート」、「スロープ」という室内レイアウトが異なった仕様をニーズに合わせて展開しています。
「N-BOX」が売れる理由について、ホンダは次のように話します。
「お客様の声として、先代から室内の広さを好評頂いています。また、『N-BOXからN-BOX』へ乗り換えされる方も多く、2017年にフルモデルチェンジした現行モデルは走行性能が向上したことや、利便性、安全性など総合的に普通車と変わらないのが、人気の秘訣といえます」
※ ※ ※
一度、「売れているクルマ」のイメージが付けば販売面ではある程度安定して販売することができます。実際の販売現場ではユーザーから「N-BOX」についてどのような声が出ているのでしょうか。
「軽自動車のN-BOXは、日本で一番売れています。従来であれば『売れているから良し』なのですが、実際は良いことばかりではありません。なぜなら、『N-BOX』以外のモデルが売りづらくなっているのです。
たとえば、ホンダを代表するコンパクトカーのフィットを見に来られたお客様が検討の結果、N-BOXに購入されるといったことや、今までオデッセイに乗っていたご家族が乗り換えの際にN-BOXを選ぶなど、販売店として押したい普通車が売れなくなります。
ただし、他社の普通車からN-BOXに乗り換えるということもあるため、『喜びたいけど喜べない』という複雑な感じです」
このように、いまやホンダの屋台骨となっている「N-BOX」ですが、軽自動車の利益率は、あまり高いものではありません。しかし、ホンダにとって「N-BOX」は売れ筋モデルのため、販売をやめるわけにはいきません。
さらに、国内自動車メーカーの軽自動車・普通車の開発者たちは「打倒! N-BOX」とさまざまな改善や改良を施していきます。
前出のスズキは、軽自動車に力を入れている自動車メーカーです。そのため、「ワゴンR」という大黒柱が低迷しても「スペーシア」や「ハスラー」といったモデルで国内ビジネスを維持できます。
しかし、ホンダの主力モデルは普通車です。本来の力配分でいえば、「普通車 > 軽自動車」となりますが、現状の「N-BOX」人気を見る限りは、『N-BOXの人気は維持し続けないといけない』のです。
ホンダの国内ビジネスにとって重要な「N-BOX」。世間のトレンドが変わる前に新たな施策を考えなければいけません。
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